New Food Industry 2010年10月号

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New Food Industry 2010年 10月号

「アサマペポカボチャ」:頻尿・尿失禁の改善および予防のための機能性食品素材

斉藤 絵里、小出 醇

高齢社会を迎えた我が国においても欧米社会同様高齢者の排尿障害の頻度が増加しており男女を問わず潜在的に社会問題化していると考えられる。疾病原因は必ずしも明確ではなく,疾病とみなすよりは加齢に伴う老化現象とみなされる場合が多い。しかし,頻尿,尿失禁は生命に関わる症状を呈するものではないとは言え,患者のQOLを著しく低下させ,精神的,肉体的苦痛をもたらす。
 排尿障害には蓄尿機能障害と尿排出機能障害とがある。蓄尿機能障害には頻尿と尿失禁(主に切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁)が含まれる。また尿排出機能障害には排尿困難,残尿、尿閉等が含まれる。いずれの発症機序も神経因性と非神経因性に分類されるが,最終的には膀胱平滑筋の過剰収縮または不完全収縮を示す病態である。

本稿では,排尿機能の生理,ペポカボチャ種子の生物学的作用,排尿障害治療薬としてのペポカボチャ種子利用の背景とその現状等に触れた後,弊社開発の「アサマペポカボチャ」の蓄尿機能障害に対する薬理活性およびその想定される作用機序について紹介したい。

大麦・燕麦βグルカンの構造と免疫賦活活性

綿岡 勲、浦川 宏、梶原 莞

最近βグルカンの名前をよく耳にするようになった。サプルメントとしていろいろなβグルカンが販売されているが,その効果の程はわからない。βグルカンと一概に言っても,キノコ類から抽出される主鎖がβ-(1,3)-glucanで構成されるβグルカンのように抗腫瘍活性剤として医薬として公式に認められているものから,地衣類や穀物のβグルカンのように主鎖がβ-(1,3)-glucanとβ-(1,4)-glucanの共重合体であるβグルカンのように健康食品的な取り扱いをされるものまで範囲が広い(表1参照)。キノコ類βグルカンの抗腫瘍活性1,2)はその3重らせん構造とその円筒状構造から突き出たオリゴ糖側鎖が関与していると考えられている。つまり抗がん,抗菌,抗血栓等の免疫賦活活性は3重らせんで構成される円筒状構造の表面からその外側へ突き出た親水性オリゴ糖側鎖が生体応答モディファイアー(Biological Response Modifier; BRM)として機能することが重要で,側鎖のタイプには依らないがその分布状況は活性効率に影響するという結論が一般的に受け入れられてきた。それに反して大麦・燕麦のβグルカンは3重らせん構造を取らずまた側鎖もないので抗腫瘍活性もないとされている。

γ -アミノ酪酸を富化させた抗メタボリック二条大麦素材の開発

阿久津 智美、大山 高裕、渡邊 恒夫、山﨑 公位

栃木県は日本一の大麦産地である。農林水産統計1)によると平成21年度全国大麦収穫量(二条大麦,六条大麦,裸麦の合計)179,200 tのうち22%が栃木県産で,最も割合が高かった。大麦の中でも裸麦を除く二条大麦(二条皮麦)と六条大麦(六条皮麦)が栃木県では生産されているが,主力は二条大麦で,収穫量33,300 tと国産二条大麦の29%を占める(図1)。
 二条大麦と六条大麦はその形態(穂の条性)の違いにより分類されている。穂の各節に3ずつ並んで小穂がつき,それらが互生するため6条に並ぶもの(上から見ると6列)を六条大麦,各節の3小穂のうち両側が退化して中央部のみ稔るもの(上から見ると2列)を二条大麦としている。一般的に粒は二条大麦のほうが大きく,二条大麦はビール・焼酎・麦茶・味噌等の原料や押し麦等の主食用として,六条大麦は主食用,麦茶用などに用いられている。

炊飯時の組織構造変化を利用した改質米飯作製の可能性

小川 幸春

食品素材は調理・加工操作を受けることでその組織構造の一部が変形・崩壊し,同時に物性や成分組成も変化する。例えばコメの場合,炊飯操作によって硬い米粒が軟らかな米飯粒となるが,その間にはデンプンの糊化などとともに,炊飯液の沸騰による細胞組織の断裂やそれに伴う含有成分の溶出,炊飯液の蒸発に伴う溶出成分の還流,などといった組織構造に係わる変化が生じている。本報では,米粒内部の成分分布構造および炊飯の経過に伴う米粒組織の構造変化など,主に顕微構造的な観察の結果に基づいた新しい炊飯方法の可能性について述べる。

コタラヒムブツの多様な保健作用

芳野 恭士

サラシア属植物はデチンムル科のつる性の植物であり,東南アジアやブラジル等の熱帯地域に広く分布し,多くの種類が知られている。インド,スリランカの伝統医学を伝えるアーユルベーダで紹介されているハーブの一つで,古くから天然薬物としてその根あるいは幹が,主に糖尿病の初期治療に使用されてきた1, 2)。Salacia reticulataは,インドやスリランカに自生するサラシア属植物であるが,スリランカではシンハラ語でコタラヒムブツと呼ばれている(図1)。サラシア属植物には,糖尿病の予防作用以外にも抗菌作用等3),様々な保健作用のあることが報告されている。しかし,その保健作用の報告のほとんどは根あるいは幹に関するものであり,産地であるスリランカにおいてもその根あるいは幹を利用することが多いため,コタラヒムブツは希少植物となりつつある。コタラヒムブツの過剰採取を防ぐためには,これまであまり用いられてこなかった葉を利用することが,有効な手段であると考えられた。

沖縄産カンショ茎葉の高度機能性成分

平良 淳誠

カンショは昔から広く栽培され,その塊根部は食用,デンプン原料,菓子素材として利用されている。沖縄県では茎葉部を伝統食素材として一部利用しているが,ほとんどが飼料用や畑に肥料として廃棄されているのが現状である。最近では,カンショ茎葉は繰り返し収穫が可能であるという利点から,その利用に向けてカンショ茎葉部に含まれるポリフェノールについての研究が進み,クロロゲン酸,ジカフェオイルキナ酸誘導体,トリカフェオイルキナ酸等のカフェ酸誘導体の成分が明らかにされている1)。一般にポリフェノール類は抗酸化活性により糖尿病や高血圧などの生活習慣病の予防剤として注目され,食品素材として積極的に利用されている。
 多種類のポリフェノールを含むカンショ茎葉についても,肝害抑制,抗変異原性および抗癌作用の生理活性が試験管レベルや細胞を用いた試験で調べられ,有用な食品素材になることが明らかにされつつある2-3)。

未利用資源を活用した機能性を有する混合発酵茶の開発

田中 一成、田丸 靜香、宮田 裕次、玉屋 圭、田中 隆、松井 利郎

近年の産学官連携の取り組みの中で,地域の特産物を利用した新たな製品の開発が全国的に活発に展開されている。長崎県は,日本の最西端に位置することから大都市圏から遠く離れている地理的ハンディキャップがある一方で,温暖な気候,多数の島嶼と豊かな海洋に囲まれていることで多様な農林水産物に恵まれ,それらを利用した多くの特産品が加工製造されている。しかし,農林水産物の中には,その一部だけが利用されているものや必ずしも有効に利用されていないものも見られる。
 そこで著者らは,長崎県内の未利用資源を活用し,それに新たな価値を付与した製品を創製することで,長崎の農林水産業振興に寄与し,県内産業の活性化を図ることを目的として研究を行ってきた。

わが国の食中毒はどこで多く発生するのか

高橋 正弘、池田 恵

食中毒事件の発生を行政庁が探知,発見した場合,保健所長は,原因究明の調査を食品衛生法に基づき実施する。調査結果は,保健所長から都道府県知事などを経由して厚生労働大臣に逐次報告される。
 報告すべき事項には,原因食品,病因物質に加え,「中毒の原因となり,又はその疑いのある営業施設その他の施設」,すなわち,原因施設(どこ)などが規定されている。
 食中毒事件の調査の目的は,「責任の追及」というよりも「被害の拡大防止と再発防止」および「被害者の救済」である。そして,これら調査結果は,食中毒発生防止に係る行政上の適正な運営方針の策定などへの活用が期待できる。現に,厚生労働省では,調査結果を年ごとに集計し「食中毒発生状況」1)や「食中毒事件録」として公表している。
 さて,食品安全の分野では,リスク分析が食品を媒介とする疾病をさらに低減化し,食品安全システムを強化する鍵であると位置付けられ,国際的に提唱されている2)。リスク分析では,食品安全上の問題をランキングし,リスク管理の優先順位を設定することが重要な課題であるとされている2)。食品のリスクランキングは,確率論的モデルによるアプローチ2)や食中毒発生件数および患者数による疫学的アプローチ3)が試みられている。当然,食品関係営業施設についてもリスク管理上の優先順位を設定することが必要になる。

新潟県と食品メーカーの低塩・減塩活動について

田形 睆作

高血圧予防に関する「低塩・高カリウム」の意義は本誌4月号に『おいしい低塩・高カリウム食品と高血圧予防』1),6月号に『50歳以上の朝食における低塩・高カリウムの必要性』2),9月号に『外食産業と配食ビジネスにおける低塩・高カリウムの重要性』3)を記述した。本号では日本国民の高血圧予防のために低塩・減塩活動を推進しておられる新潟県と食品メーカーを紹介する。
(焼津水産化学工業株式会社)

“薬膳”の知恵(51)

荒 勝俊

中医学では,各臓器の気・血・津液が万遍無くスムーズに流れ,常時気・血・津液が体に満たされている状態を未病と呼んでいる。しかし,生活環境・精神状態・食生活・房事・労働などのストレスが必要以上に大きかったり,極端に変化すると,気・血・津液の流れが損なわれ,体内での機能バランスが崩れる事で病気を引き起こすと考えられている。中医学では,身体のこうした状態の変化を問診・脈の打ち具合,舌の色合いなどを診ることで,身体のどの部分で機能バランスの失調が起きているのかを知る事ができる。そこで,身体の機能バランスを改善させる事でその人が本来もっている臓器の機能を回復させ,身体の内部を整え,新陳代謝を改善し,栄養を供給する事で,健康な身体を獲得できると考えられている。

築地市場の魚たち

山田 和彦

毎度おなじみの晴海通りを,東銀座から築地へ向かう。歌舞伎座の取り壊し工事も進み,また懐かしい風景が失われていく。この10数年の間に,晴海通りの拡張工事もあって,築地界隈の景色もかなり変わってきた。築地場外市場は,今も高い建物が少なく,遠目に見ると昔と変わらないように見える。でも,中に入ってみると,24時間営業の寿司屋などが増え,昔ながらの市場という雰囲気が変わりつつある。乾物屋や包丁専門店などが頑張っているのを見ると,うれしくなってしまう。風が涼しく感じられる頃,場外市場の八百屋をのぞくと,たくさんのキノコを目にする。シイタケやエノキダケ,エリンギなど年中出回っているキノコもあるが,築地の場外市場には,マツタケをはじめ,見たこともないさまざまな種類のキノコを見かける。そして,ついついこの見たこともないキノコを買って賞味してしまう。秋になったことを実感する時である。今回は秋の魚,マサバを紹介する。