New Food Industry 2010年1月号

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New Food Industry 2010年 1月号

新春巻頭言 たかがデンプン,されど・・・

福田 恵温

私たちは日々デンプンをエネルギー源として摂取している。お米,パン,うどんなどの主成分はデンプンである。主食だけではない,イモ,カボチャ,豆なども主成分がデンプンであり,最も多量に摂取している食物成分である。しかもグルコースのみから構成された極めて単純な構造をしている。あまりにも身近にありふれて存在しているため,「たかがデンプン」と考えてしまいがちであるが,このデンプンがいろんなものに生まれ変わるのである。
 林原はデンプンを原料とした様々な製品を送り出してきた。ここではデンプンにまつわる話題を二つ紹介したい。

「機能性食品素材・栗渋皮」の加工食品への利用

樋口 誠一、仲島日出男

近年,メタボリックシンドロームをはじめとする生活習慣病の予防には,特定保健用食品などに代表される機能性食品が有効であるとの認識が,消費者の間に高まっている。そのため,埼玉県内の食品製造業者にとっても製品への機能性の付加は最大の関心事であり,消費者にアピールしやすい地元産の機能性素材を求める声は多い。
 そこで埼玉県内の植物資源について調査したところ,栗の葉や渋皮,ビワ葉など樹木由来の素材について,ポリフェノール含量が高く,その抗酸化活性も非常に高いことが確認された。本県は栗の収穫量全国第5位であり,栗は県の特産品である。そこで我々は栗の渋皮に注目し,その機能性成分であるポリフェノールを有効活用した素材開発を行うこととした。
 栗渋皮に含まれるポリフェノールは,その名のとおり渋味を呈するなどの性質から,タンニン様の高分子ポリフェノールであると考えられる。

テンペが持つ新規生理活性物質「線維素溶解,ビタミンK2,チロシナーゼ阻害,ポリアミン,血小板凝集阻害など」

須見 洋行、今井 雅敏、丸山 眞杉

テンペは,東アジアに広く分布する無塩大豆発酵食品群の一つで,インドネシアで古くから常食されている伝統食品1, 2)。納豆のすばらしさについては既に報告してきたが3〜7),よく対比されるのであるが,今注目されているのがこの国際食品テンペである8〜10)。ニオイや粘りがなく,消化性が良く,食べやすいと同時に栄養学的にも優れ,高タンパク,低脂肪,ビタミン,ミネラルなどが豊富な自然食品で,各種生活習慣病の予防,そして健康増進に役立つ。最近,次々と明らかにされつつあるテンペの機能成分について紹介しよう。

高ミルクで学ぶ食品の機能

大谷 元

ミルクは哺乳類の新生動物が最初に摂取する食物であり,動物の種類によりその成長に適した成分組成と泌乳量のミルクが母動物から与えられる。表1にヒトと私たちのよく知る動物のミルクの成分組成を示した1)。表1から各動物のミルクの成分組成がその動物の発育にとって如何に適したものであるかが考察できる。
 すなわち,クジラやシロクマなどの水中や寒い地域で棲息する動物のミルクはヒトやイヌ,ブタ,ウシなどの家畜のミルクと比べて脂肪濃度が非常に高く,乳糖濃度が低い。これは水中や寒い地域での生活はエネルギーの消費量が多く,エネルギーを効率よく生産する食物を摂取する必要がある。そのために寒い地域や水中で生活する動物のミルクには糖質やたんぱく質よりも重量当たりのエネルギー生産量がそれらの2倍である脂肪含量が多くなっている。また,クジラのように水中で授乳する動物は脂肪の濃度が高いと水中で拡散し難いという利点もある。一方,哺乳類の体は細胞を構成単位として,それに骨,歯,毛など加わってできている。細胞の固形物のおよそ半分はたんぱく質,骨と歯の主要成分はカルシウムとリンなどの無機質とたんぱく質,毛の主要成分はたんぱく質である。

日本の伝統的発酵技術で得られた機能性食品 ~多穀麹とプロファイバーの紹介~

渡辺 敏郎

近年,わが国の高齢者の割合は年々増え続け,総務省の国勢調査報告および国立社会保障・人口問題研究所の調査によると,2015年の日本は,65歳以上の人口が3,300万人を超え,高齢者割合は26%に達すると推測されている1)。高齢になると唾液や胃液,消化酵素の分泌が低下することで,栄養素も成人期に比べて十分な消化吸収ができないため,消化のよい食物を選択することが重要となる。しかしながら,この数十年で日本人の食生活は欧米化が進み,一見,食生活は豊かになったようにみえるが,栄養バランスは大きく偏ってきている。かつて,日本人の摂取エネルギーに占める脂肪の割合はわずか5%であったものが,現在ではその5倍以上に達している。昔の食卓のように,ご飯に味噌汁,焼魚,野菜の煮物といった食事が減り,肉類を食べる機会が増え,炒める,揚げるなど油を使う調理法が増えている。それと共に,わが国の肥満人口は急激に増加し,なかでも腹腔内脂肪蓄積を基盤に耐糖能異常,脂質代謝異常,血圧上昇などが一個人に集積するメタボリックシンドロームは,動脈硬化性疾患の進展リスクを高めることから特に問題となっている。

ヤマブシタケの脳機能賦活作用とPLM-フラクション

安西 英雄

ヤマブシタケ(Hericium erinaceum)は食用および薬用に用いられるキノコである。人工栽培法の確立とともにわが国でも一般に普及しつつあるが,近年ヤマブシタケの神経細胞や脳機能に対する作用がとりわけ注目を集めている。本稿ではヤマブシタケに関するこれまでの薬理研究を概観し,その脳機能賦活作用に着目して抽出・開発されたPLM-フラクションについて,研究の現状を紹介する。
 ヤマブシタケはヒダナシタケ目サンゴハリタケ科に属し,日本や中国など北半球温帯地方に広く分布する食用・薬用キノコである。ナラ,カシ,ブナ,クルミなど広葉樹の立ち木および腐木に発生する。形状に特徴があり(図1),山伏の衣装の丸い胸飾り(結袈裟の梵天)に似ているところからヤマブシタケと言われる。またジョウゴタケ,ウサギタケ,ハリセンボンなどとも呼ばれるという1)。中国では猴頭菇(サルの頭のキノコ),米国ではLion's Mane(ライオンのたてがみ)などと呼ばれる。

フォーミュラ食を用いたダイエット支援プログラムの効果

蒲原 聖可

肥満の改善に対しては,食事療法としてのフォーミュラ食による一定の減量効果が示されている1〜3)。また,肥満関連遺伝子変異の検索により,体質に応じた肥満治療の可能性が示唆されている1, 2, 4)。さらに最近,インターネットを活用した非対面式介入法による減量サポートの効果が報告されるようになった5)。今回,フォーミュラ食および低エネルギー食品を用いた食事療法を中心に,肥満関連遺伝子変異検査,運動療法を併用し,インターネットを活用したダイエット支援プログラムを開発し,その効果を検証した。

−国産米粉の活用事例− ライスヌードルの開発

李 永玉、佐竹 隆顕

近年,食の多様化に伴い世界の様々な国より多種多様な食品・食材が輸入される一方で,日本の食料自給率(カロリーベース)は約40%程度まで減少している。米は唯一自給可能な食材であるが消費量は漸減傾向にあり,農林水産省では平成元年から米を普通の食事用(一般米飯用途)としてのみ考えるのではなく,新たな観点でとらえ様々な可能性を持った米を造ろうとする研究(スーパーライス計画)が行われ,様々な形質を持つ「新形質米」が開発された。 新形質米は世界中の様々な特性を持つ一般米飯用途からすると異端な品種を親として造られ,一般米飯用途に求められてきた良質・良食味の形質とは異なる独特の特性が新規用途につながり脚光を浴び始めている。 その中で高アミロース米はアミロースの含量が27~33%であり,特徴としては「粘りがなく、冷えると硬くぱさつく」点でピラフやカレーライス、チャーハン、パエリアなどの調理への利用や,ぱさつき感から食品加工上の作業性に優れ加工品への用途も期待されている。

室内噴霧消毒におけるバイオイオナース®の有用性 —厨房内消毒への基礎的検討—

窪田 倭、松澤 晧三郎、和田 雅年、森 勳、山地 信幸

一般に厨房はその機能上環境内に有機物の残存が多く,湿度も高いことから細菌類の生存率が高く,空中菌および付着菌として常在しており,取り扱う調理器具・機器,作業員の手指,衣服などとともに二次汚染の原因となる。その結果細菌性食中毒の誘因となるので,調理器具・機器,作業者に至るまで細菌の汚染を防ぐと同時に,厨房内環境も除菌の対象としなければならない。しかしながら,作業員の手指の消毒は当然なことながら床面,調理器具などの洗浄除菌が頻繁に施行されているが,空中菌や付着菌,特に洗浄困難な大型機器と床面,壁面間の付着菌の除菌は日常的に施行されにくいのが現状である。
 空中菌や洗浄困難な部位の付着菌には室内噴霧消毒が有効であるが,吸入毒性や金属腐食性などの問題があり使用される消毒剤は限られている。

グリスリンとPCOS(多のう胞性卵巣症候群)

安西 英雄、富永 国比古

グリスリンはマイタケから得られるグリコプロテインである。グリスリンは血糖降下作用を示し,インスリン抵抗性を改善することが示唆されている。一方 PCOS(Polycystic Ovary Syndrome:多のう胞性卵巣症候群)は排卵障害を呈する代表的な疾患であるが,その発症にはインスリン抵抗性が関与しているとされている。このたび PCOS患者にグリスリンを投与し,同疾患に繁用される漢方処方である芍薬甘草湯と臨床効果を比較した。グリスリン投与群は芍薬甘草湯群よりも有意に高い排卵率を示し,グリスリンはPCOS治療において重要な役割を果たす可能性が示唆された。

ワインの熟成と成分の変化について −最近の醸造方法と機能性−

佐藤 充克

ワインは熟成すると,アントシアニンを含むポリフェノールの重合が進み,色調も紫色から赤,そしてレンガ色になり,味も角が取れてスムースでマイルドになることが知られている。
 ここでは,前回の報告1)と若干重複するところもあるが,ワインの熟成とアントシアニンの挙動,最近行われるようになったミクロオキシゲネーション(Micro-oxygenation)と言われるワイン醸造方法と,そのワインの色調と味に及ぼす効果,さらに生成される重合体について,生理活性も含め解説したい。

ポリアミンによるアンチエイジング(その2)

早田 邦康

ポリアミンによるアンチエイジング(その1)では,ポリアミンによる炎症抑制作用を紹介した1〜3)。近年の研究で抗酸化物質によるアンチエイジング効果に多くの疑問が指摘されている事をうけ,近年では酸化物質産生の原因である炎症を抑制する抗炎症がアンチエイジングのキーワードになってきている。ここでは,動物実験の結果を中心に紹介し,ポリアミンのアンチエイジング効果を解説する。

バイオ資源としては限界要素が多い海産物

兎束 保之

石油,石炭などの化石燃料の燃焼から発生する二酸化炭素量は,約56%が大気中に残留し,約44%が海洋水や陸上植物によって吸収される。海洋に溶け込んだ二酸化炭素は植物性プランクトンの光合成によって有機化される。植物性プランクトンの一部は動物性プランクトンに捕食され,その動物性プランクトンの一部は魚類によって捕食される。魚類の糞は残っていたプランクトン類の死骸と共に大型粒子(マリンスノー)を形成して沈降し,深層水に運ばれ,海底に堆積する。
 うっかりすると,化石燃料を使えば魚類の増殖を促進するように解釈されかねない。ところが海洋中の魚類の増殖量にはさまざまな要素が関係している。特に人類による捕獲と自然環境の改変,そして海流の強さと海水温度とが大きな影響を与えている。