New Food Industry 2009年6月号

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New Food Industry 2009年 6月号

タンパクフリーローヤルゼリーの開発とその生物作用

牛尾 慎平、藤井 光清、福田 恵温

ローヤルゼリー(RJ)は王乳とも呼ばれ,若い働き蜂の下顎腺,咽頭腺からの分泌物である。薄い黄色を帯びた粘性を有する性状で,タンパク質10~15%,糖質10~16%,脂質3~7%,ビタミン類,アミノ酸等から構成される1)。RJは古代ローマ時代から多種に渡る機能を示す食品として用いられてきた素材であるが,ここにきて機能性食品の素材として定着した感がある。
 その一方でRJを摂取することにより,アレルギー反応の一種であるアナフィラキシー反応が引き起こされるという臨床報告も出されている。アナフィラキシー反応は,蕁麻疹,呼吸困難を伴う気管支の痙攣といった症状を呈する即時型のアレルギー反応である。体内に取り込まれた原因物質と,その物質を認識するIgE抗体とが肥満細胞上で結合し,IgE抗体と原因物質とが架橋されることにより肥満細胞が活性化,化学物質が放出されることにより惹起される反応である。

「アガロオリゴ糖」の抗炎症作用~メカニズムとその応用~

大野木 宏、榎 竜嗣、出口 寿々、速水 祥子、工藤 庸子、水谷 滋利、加藤 郁之進

寒天は紅藻類のテングサやオゴノリから得られる食品素材であり,その独特の食感が好まれ古くは 350年ほど前から,ところてん(心太)などの加工食品として用いられている。また寒天は食物繊維を豊富に含み,ノンカロリーであることから整腸・ダイエット素材としても近年愛用されている。われわれは,寒天にはこのような高分子多糖としての有用性以外にも健康維持機能があるのではないかと考え,寒天由来のアガロオリゴ糖に関してその機能性の研究を進めてきた。
 寒天の主成分(約 70%)はアガロースであり,図 1に示すようにD - ガラクトース(Gal)と3, 6 - L - アンハイドロガラクトース(AhGal)が交互に直線的に結合した多糖構造を有する。このアガロースを弱酸性下で加熱すると,3, 6 - アンハイドロガラクトースとガラクトースとの間のα 1 - 3結合が選択的に切断される結果,ガラクトースと3, 6 - アンハイドロガラクトースがβ 1 - 4結合した 2糖(アガロビオース)を最小単位とする 4糖(アガロテトラオース), 6糖(アガロヘキサオース), 8糖(アガロオクタオース)が生成する。

女性のための機能性食品素材 −スターフルーツ葉エキス−

川嶋 善仁、大戸 信明

ヒトの肌は年齢とともに変化し,肌の老化は老いの程度を推測する指標となっている。特に露光部の肌は年齢を推察する際の重要な因子となっている。非露光部の肌の老化が自然老化と言われるのに対して,顔面など露光部の肌の老化は太陽光,特に紫外線によって引き起こされるので,光老化と言われている。光老化の兆候は深いシワ,シミ,乾燥である1)。
 また,近年の高齢者人口の増加に伴い,肥満や糖尿病に代表される生活習慣病と同様,現代社会において重要視されている疾患として骨粗鬆症があげられる。骨粗鬆症は年々増加の一途をたどっており,骨粗鬆症が原因で腰椎や大腿骨を骨折し寝たきりの状態が長期化すると,痴呆を引き起こす危険性も有していることから,予防や早期の治療が重要な課題となっている。特に,原発性骨粗鬆症に分類される閉経後骨粗鬆症は,50歳以上の更年期を過ぎた女性に高頻度に発症し,骨粗鬆症患者数の90%以上を占めることから,予防法や治療法の開発が,最も望まれている難治性疾患の一つである。

新規植物性乳酸菌健康食品基材の開発

中山 雅晴、前沢 留美子、腰原 菜水、中村 泰輝

ヨーグルトに代表される乳酸菌関連食品は,近年,プロバイオティクスとしての知名度も高くなり,市場での人気も高い。乳酸菌の機能性に関する研究も長年にわたり幅広く行われ,生菌の投与による腸内環境改善効果1, 2),乳酸菌加熱死菌体による免疫賦活効果3, 4, 5),牛乳蛋白分解物による抗高血圧効果6, 7),γ-アミノ酪酸(GABA)産生菌による同効果 8)等が報告されている。これらの報告からも推察される様に,乳酸菌の有する機能性の全てが生菌の摂取によってのみ得られるものであると言う訳では無く,死菌体,或いは乳酸菌培養液上清の摂取によってもたらされるものも多い。また,乳酸菌生菌体の安全性に関して述べれば,成人健常人による通念的な摂取量に於いては殆ど問題無いと考えられるが,糖尿病患者の肝膿瘍から乳酸菌が分離された例もあり9),重篤な疾病を有する者や免疫系が未だ不完全な乳児等を対象とした場合には,摂取量乃至は摂取それ自体に関して,それなりの配慮が必要であると思われる10)。

烏骨鶏卵の特性 -食品科学からのアプローチー

豊﨑 俊幸

御存知のように,烏骨鶏卵は,中国では“薬用鶏”として古くから食用とされている。また,東洋医学では古くから漢方薬として珍重され,現在でも多くの人々が利用しているのが現状である。日本でも近年,健康ブームがエスカレートし,様々な食品が市販される中で烏骨鶏卵も注目され,烏骨鶏卵を利用した様々な調理・加工食品が市場を賑わしているのが現状である。いっぽう,アメリカ,ヨーロッパ諸国では,烏骨鶏卵はほとんど食卓に登場せず,摂食されている卵のほとんどは鶏卵である。このように欧米やヨーロッパ諸国では烏骨鶏卵を摂食する機会がほとんどないことから,烏骨鶏卵の研究もほとんど行われていないのが現状である。したがって,烏骨鶏卵は未知なる卵であることは言うまでもない。
 著者は烏骨鶏卵に関しての研究を10年前からスタートし,この間,栄養特性,調理方法さらには食文化などの興味ある知見を報告してきた1-5)。詳細については文献を一読していただきたい。本誌ではここ数年スポンジケーキ あるいは揚げドーナツを研究試料として,主に食品科学的立場から物理化学的手法を利用して様々な角度から検討してきた。その結果,若干であるが興味ある知見が得られたので,それらの研究結果を紹介する。

中国食品を巡るリスクコミュニケーションの構築を目指して
中国製冷凍ギョーザ中毒事件を通じての食の安全と消費者の安心・信頼の検証

三好 恵真子

2004年,日中間の年間貿易額は,これまで主軸であった日米間のそれを超えたことが発表され,最大の貿易パートナーとしての中国の存在と,今後の日中関係の重要性を示す象徴的な出来事となった。しかしながら,対日輸出野菜残留農薬事件など,食の安全性を巡る問題に見られるように,日中両国の経済関係の進展にくらべ,政治・外交,文化,草の根交流といった分野では数多くの課題が残されている。
 特に2008年1月末に起こった中国製冷凍ギョーザ中毒事件注1)の場合,2009年1月現在,厚生労働省が発表した国内の被害者数が1242人1)(保健所の調査では,2500人以上)とその被害の規模が大きかったことに加え,原因究明に向けた日中両国政府の協力関係の脆弱さが露呈し,さらに政府・企業などの不手際も発生したことなども重なり,中国食品を巡る日本の消費者の不信・不安感が予想を超えて助長された面は否めない。

21世紀の環境,資源,エネルギー等の諸問題をどのようにとらえるか

兎束 保之

バイオ(Bio-)とは生命,生物を意味し,本来は他の単語と複合してつかわれる。たとえば,生物を対象にした科学はバイオサイエンス(Bioscience)である。生物生産物を加工する,あるいは生物が示すさまざまな機能を,加工技術として利用する工学をバイオテクノロジー(Biotechnology)と呼んでいる。日本では,生物系全体の科学や工学を一括して,“バイオ”と略称することが多い。
1980年代から,生命の設計図といわれる遺伝子(gene)を計画的に変化させる遺伝子組み換え技術を中心として,生物学上の技術が急速に発展した。遺伝子とは,本来(例えばメンデルが遺伝の法則を発見した時代から20世紀の前半まで)は生物の形質(形や性質)を支配する仮想的な要素であった。その仮想的要素が生物学と化学の進歩によって,物質的本体がポリデオキシリボヌクレオチド(polydeoxyribonucleotide=DNA)であると,1950年代に判明した。DNAを対象にしたその後の技術的進歩により,自然界の生物では示さなかった新しい機能を持つ生物を,人工的に作れるようになった。一例を示めそう。自然界では多細胞生物であるヒト(=人類)が持っている遺伝子の一部(インシュリンを合成する遺伝子)を,人間が取り扱いやすい単細胞生物(例えば大腸菌)に導入し,インシュリンを大量取得して医療に貢献している。

DHC米こんにゃくの食後過血糖抑制の検証

関 浩道

厚生労働省の「2007年国民健康・栄養調査」によると糖尿病が強く疑われる人およびその予備軍の人が合計2210万人と推計されている。糖尿病とその予備軍は,患者数の増加が著しく,対策が急がれている。1型糖尿病と異なり2型糖尿病およびその予備軍は,主に過食,運動不足,ストレスなどに起因すると考えられる。その羅患率は,世界的にも増加しつつあるといわれている。しかし摂取エネルギーのコントロールやGI値(Glycemic Index)の低い食品を摂るなど,食習慣の改善により予防や発症の遅延が可能である。それは,生活習慣の是正を第一に,食後高血糖の状態をいかにコントロールできるかが,糖尿病予防のカギと考えられる。そこで,今回我々は,弊社製品から,血糖コントロールに良いといわれる機能性食品素材を使用しているものを選び,検討する事にした。

連載 薬膳の知恵 (22)

荒 勝俊

気・血・津液はこれまでに述べてきた様に,ともに生命活動の基本的な物質であり,これらは水穀の精気から作られ,絶えず体内をめぐっている。こうした気・血・津液は互いに化成しあい,協調しあっているが,不足あるいは過剰になればその運行に障害が起こり,最終的に臓器に影響を与える事になる。今回紹介する気血津液弁証法は,中医学における気・血・津液の関係の理論から病変を分析し症候を弁証する方法として重要な位置を占めている。本弁証法は,大きく“気病弁証”,“血病弁証”,“津液弁証”の三つに大別され,今回はその中で“津液弁証”に関して述べる。

築地市場の魚たち

山田 和彦