New Food Industry 2009年 2月号

茶の香りの多様性 -緑茶,青茶,紅茶等の製法による違い-

木下 朋美、楊 子 銀、渡辺 修治

茶はチャ(camellia sinensis)の生葉を原料として製造される。その製造方法の違いにより,緑茶,青茶(烏龍茶),紅茶に大別される(図1)。
 茶には,カテキンやカフェイン,テアニンなどの様々な成分が含まれている1)。これらの成分が食品としての二次機能や三次機能を生み出している。また,茶の香りは,嗜好品としての茶の価値を決定付ける重要な成分の1つである。さらに近年では,茶香気の機能性として,リラックス効果があることも報告されている2)。こうした茶の様々な香気は,製造方法の違いや,原料の違いにより生じる3)。

HK-LP (Heat-Killed Lactobacillus plantarum)の免疫機能増強効果

山本 佳弘

免疫系は,病原菌やウイルス,寄生虫等からの感染防御,腫瘍細胞の排除や老廃物の処理などの重要な役割を担っており,神経系,内分泌系とクロストークしながら生体防御の要として働いている。近年,ビタミン,ミネラル,脂肪酸,アミノ酸,核酸,オリゴ糖,発酵乳,などの食品・食品成分が免疫機能調節作用を示すことが明らかになってきている。その中でも,プロバイオティクスと呼ばれる乳酸菌やビフィズス菌類の免疫機能調節作用に関しては多くの研究がなされている。例えば,Rautava Sらは,Lactobacillus GGとBifidobacterium lactis Bb-12を幼児に摂取させた場合,牛乳特異的イムノグロブリン(Ig)Aの産生細胞数が増加することを報告している1)。また,Takeda Kらは,Lactobacillus casei Shirotaを含む発酵乳の摂取がNK活性を上昇させることを報告している2)。

発芽ケールTMの美白作用

前田 正嗣、足立 奈美、鍔田 仁人、小野 裕之、髙垣 欣也

アブラナ科の植物であるケール(Brassica oleracea L. var. acephala DC.)は,地中海沿岸が原産であり,キャベツの原種といわれる。食物繊維,ビタミン類,ミネラル類などを豊富に含んでいることから,「野菜の王様」と呼ばれ,青汁素材としても広く知られている野菜である。このアブラナ科野菜は,「デザイナーフーズ」のひとつに列せられていることからも,その有用性が期待される。デザイナーフーズとは,デザイナーフーズ計画により挙げられたガン予防に効果のある食品のことを言う。このデザイナーフーズ計画とは,1990年にアメリカ国立ガン研究所を中心として始まったプログラムで,主な目的は,食品成分がガン予防にどのような機能を果たすかについての科学的解明にある。アメリカでのガンに対する概念は,それまで「治療」が中心であったが,「予防」ができるという考え方に注目が集まった。

羅漢果が有する抗アレルギー作用

亀井 千晃

羅漢果 Lo Han Kuo は,中国華南地方の広西壮族自治区北部の桂林地方,すなわち永福,臨桂および竜勝地方の高冷地で栽培されているウリ科に属する多年生宿根植物の果実である。学名はSiraitia grosvenori Swingleと称し,直径4−5cmの卵形または球形で深緑色で,表面は光沢を帯びている(図1)。
 中国では光果木随と呼ばれている。羅漢果は,伝統的に中国で咽頭炎や扁桃腺炎などによる疼痛の緩和,痰,鎮咳および解熱の目的に使用されてきた1)。また,肝障害や急性胃炎および高血圧にも有効であると言い伝えられている2)。従って,民間薬として長い歴史を持っており,あらゆる疾病の予防と治療に効果を発揮することから,不老長寿の薬(長寿の神果)とまで言われるようになっている。

食品感性の定量化システムの構築

阪田 治、佐竹 隆顕

近年,食生活環境の多様化はめざましく,様々なニーズに合った食品の開発が求められている。消費者のニーズに合った食品を提供するためには,開発した食品の品質が定量的に評価されていることが望ましい。しかし,食品開発の現場において,食品の安全性および栄養価に関する研究,さらに最近では食品の持つ機能に着目した研究等は盛んに行われているものの,食品開発に消費者の感性を反映させる方法は,実用的にはパネルテスト程度の方法しか存在していないのが現状である。

北海道江別市近郊に在住する大学生における牛乳の利用状況

菊地 和美、松下 悟、安川 澄子、石井 智美

前報1)では,江別市近郊に在住する大学生における冷蔵庫の使用状況について,冷蔵庫内の機能の有無や温度管理,食品在庫状況の課題を報告した。食物を食べることは,生きるための空腹の充足や栄養素の補助手段だけではなく,心身ともに健康を保持する基本的な役割から,五感を通して精神的な充足・つくる楽しみを経験して,人の交流を円滑に進めるという文化的な役割2)を担っている。近年,生活環境の変化が著しく,個人,家庭,学校などの社会的要素や食習慣などの文化的要素からなる食に関する情報も多様化しており,健全で経済的な食生活を営むためには調理技術は基本要件の一つと考えられるが,栄養状態は世帯間,あるいは性別・世代別などによって著しい格差が存在している3)とも言われている。

鶏卵の官能検査

堀口 恵子

鶏卵は,「物価の優等生」ともいわれ,世界中の人々に親しまれている食品である。日本国民は,一年間に一人平均330個も食べている。その調理方法は,厚焼き卵と目玉焼きとゆで卵で55%1)を占めていた。好きな料理名は,1位が卵焼きで2位がオムレツ1)であり,老若男女を問わず誰にでも好かれている。このようにポピュラーな卵に養鶏家が,付加価値をつけ収益を増加させる努力がなされている。例えば,海草やヨードを添加したミネラル強化卵やビタミン強化卵などがある。しかし,卵のおいしさ,味,匂いについての研究は,まだ初期段階である。その理由として図12)に示したように味,匂いの好みには,多くの要因があり,その要因の分析が困難なことである。

“薬膳”の知恵(32)

荒 勝俊

西洋医学では血液データやハイテク機器による画像診断(CTスキャン,レントゲン,超音波画像など)によって素早く病巣を発見し,科学的・理論的に治療方針を決定する(ミクロな診療)。言い換えれば,病気が同じであれば理論的に用いる治療薬も同じになる。しかし,中医学の特徴は個々人の体質・体調を調べて治療にあたる(マクロの診療)ということがあり,用いる薬(生薬)は必ずしも同じにはならない。これは,中医学において人体は一つの有機的統一体と考え,局所における変化は全身に影響を及ぼし,内臓の変化は五官,四肢,体表などに変化を及ぼすと考えるからである。こうした観点から,中医学における証の診断は,舌を観察し,脈を診断し,声を聞き,症状を尋ねる事で,体の各方面に現れた変化を情報として取り出す事で行われる。

築地市場魚貝辞典

山田 和彦