New Food Industry 2007年5月号

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New Food Industry 2007年 5月号

ホルメシスの概念:薬物の持つ2面性

坂上 宏

ビタミンC(sodium ascorbate),没食子酸(gallic acid),緑茶主成分のカテキン(epigallocatechin gallate)などの抗酸化剤は,酸化作用(酸化電位の上昇,メチオニンの酸化,過酸化水素の産生)により細胞傷害作用を示す 1-3)。このような2面性は,抗酸化剤以外の物質についても観察されるのだろうか。毒性物質の影響に関する用量依存性のモデルとして,線形閾値なしモデル,閾値モデル,およびホルメシスモデルの3種がある(図1)。
 線形モデルでは,毒性が用量依存的に現れる。閾値モデルでは,あるレベルまでは毒性が出ないが,ある閾値(threshold)以上になってはじめて毒性が現れる。ホルメシス(hormesis)モデルでは,あるレベルまでは,逆に有益な影響が現れる(図1)4)。これまで,ホルメシスの概念は,専門の学会,薬理学あるいは毒物学の教科書などで排除されてきた。

抗アレルギー作用をもつ「べにふうき」緑茶の開発

山本(前田)万里

アレルギーは,生体に侵入した異物を攻撃する抗体などが過剰に産生され,正常組織も巻き込んで起こる過剰な免疫反応である。アレルギーにはいくつかのタイプがあるが,IgE抗体による過剰反応ではある特定のアレルゲン(アレルギーの原因となる物質で,花粉,タンパク質,ダニ,ハウスダスト等)に反応する IgE抗体が過剰に産生され,アレルギーで中心的に働くマスト細胞の表面に付着し,そこへ再びアレルゲンが到達し抗体に架橋すると,マスト細胞は刺激(活性化)を受け,ヒスタミン,ロイコトリエンなどの炎症物質を出して,花粉症,鼻炎,喘息,アトピー性皮膚炎,蕁麻疹などを起こす(図1)。

ヤーコン葉の乾燥工程およびヤーコン麺の製造工程におけるポリフェノール化合物の変動

竹中 真紀子

ヤーコン(Smallanthus sonchifolius)の葉の高温空気を媒体とした乾燥処理において,80−100℃の高温域ではヤーコンの主要なポリフェノール化合物の多くが失われたが,40−60℃の低温域ではそれらの高い保持率が認められた。ヤーコン葉を用いたヤーコン麺の製造においては,ヤーコン葉乾燥物を予め熱処理して酵素を失活させてから他の材料と混合することにより,最終製品(ヤーコン麺)にポリフェノール化合物がより高く保持された。ヤーコンはアンデス地方原産のキク科植物で,フラクトオリゴ糖やポリフェノール化合物を豊富に含む1)ことから注目され,日本各地で栽培されている。ヤーコンは主に塊根を食用とするが,塊根は貯蔵性が悪いことなどから一般店舗を通した流通は少ない。

骨粗鬆症予防機能性食品素材としての食品中のポリフェノール

禹 済泰、安 哉龍、長谷川 森一、永井 和夫

高齢社会において寝たきりの原因となる骨粗鬆症は、医療費負担の高い疾患である。骨粗鬆症を予防すべきであるという認識が高まっている中、お茶や野菜を摂取することで骨粗鬆症が予防できる可能性が報告されている。筆者らは、お茶や野菜に多く含まれているさまざまなポリフェノールの破骨細胞の分化及び機能に対する作用を検討した。ここに筆者らが得られた結果と、ポリフェノールの骨代謝に関する最近の知見をまとめて紹介する。

酵素処理ルチンとその利用について

貴戸 武利

ポリフェノールとは,同一ベンゼン環上に二個以上の水酸基を持つ化合物の総称である。
「フランス人は赤ワインを通じてポリフェノールを摂取するために,飽和脂肪酸摂取量が多いにも関わらず冠状動脈疾患の罹患率が低い」1)という,いわゆるフレンチパラドックスという現象が報告されて以来,ポリフェノールの生理機能性が注目されるようになった。今日では,ポリフェノールという言葉は我々にとってさらに身近なものになってきている。
 ポリフェノール,中でもカテキンやルチン,ケルセチンをはじめとするフラボノイド類は野菜や果物に多く含まれており,我々は日常の食事を通じて一般的に摂取している。これらフラボノイド類には抗酸化作用をはじめとして生理機能性を有するものが多く,我々の身体の健康維持に貢献していると考えられる。

【特別寄稿】60才からのコラーゲン研究物語会社定年後の一つの生き方

和田 正汎、青柳 康夫、長谷川 忠男

私は平成9年に定年を迎えた。その少し前から、かって同じ会社ではたらいた人から、定年になりましたという挨拶状を頂くようになった。その文面に「しばらくは、悠々自適の生活をおくります」という一文が、しばしば書かれていることに気づいた。また写真展の案内や自分の本なども送られてくるようになったので、これは、きっと一区切りつけようということではないか、と思うようになった。昭和一桁から二桁のはじめの世代は、自分の思いをストレートに出すことをとかく躊躇してしまうようで、この場合も定年を健康で迎えることができたことを喜び、家族を含め周囲の人々に対し感謝の気持ちを素直に表わせばよいものをと思えてくる。今日の社会保険制度や経済状況などは当時に比べ大きく変化しているけれども、なにかのときに一区切りつけるという習わしは、これからも大切に受け継いでほしいものである。

FDA食品行政の話(7):細菌を食べるウイルス〜 新食品添加物,バクテリオファージ 〜

石居 昭夫

2006年8月18日,FDAは,食品を通じて病原菌のリステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)に感染することを防ぐため,バクテリオファージ(Bacteriophage)と呼ばれるウイルスを食品添加物として承認し,「連邦公報」(Federal Register:FR)で公示しました。リステリア・モノサイトゲネスは,人間および動物共通の感染症(リステリア症)の原因菌で,これが人に感染すれば,敗血症や髄膜炎を起こし,また妊婦では胎児に垂直感染して流死産を起こすこともあるといわれます。バクテリオファージは,環境に広く存在し,通常,人は食品や水からこのウイルスの高量に曝されていますが,有害な影響はありません1)。バクテリオファージは細菌だけに感染して,人間や動物哺乳類,それに植物の細胞には感染しないという特長をもっています2)。

中国食品通信 ◆コンニャク加工品の輸出が順調に推移

馬 桂 華

中国園芸学会コンニャク協会は,コンニャク加工品の日本向けの輸出が順調に推移していることを報告している。近年,コンニャク加工品は年々10%の速度で増加しており,2007年には,コンニャク加工品の輸出はさらに増加する見込みである。
 中国国内では,コンニャク製造機械,乾燥機の出荷台数が増加しており,コンニャク加工品製造企業の数も次第に多くなっている。天津開発区天豊裕食品有限公司は,独自に研究開発したコンニャク加工機械を用い,既に20種類以上のコンニャク関連製品を製造している。これらの加工品は日本,韓国などに向けて輸出されており,このようななかで,天豊裕食品有限公司の王克夫総経理は,コンニャク加工品が国内外の市場で拡大しているが,これは,コンニャクを原料として開発した低カロリーの“小熱面”(低カロリー麺)の市場の反応がとても良いからであると語っている。

伝える心・伝えられたもの:—七草粥—

宮尾 茂雄

正月七日(2007年),京都市伏見区に在る御香宮(ごこうのみや)神社で七草粥をいただき,今年一年の無病息災を祈願した。(写真1)
 御香宮神社は,始めは「御諸神社」と称されていたようであるが,平安時代(862年)に境内から香りの良い水が湧き出したことから,清和天皇より,「御香宮」の名を賜ったとされている。名の由来となった水は,「石井の御香水」と呼ばれ,伏見七名水の一つとなっている。御香宮神社では,江戸時代から正月七日に七草を神前に供える「七種(七草)神事」が営まれており,約20年前から,氏子さんが奉納された七草を使い参拝者に接待するようになったという(京都新聞:平成19年1月8日)。

薬膳の知恵 (12)

荒 勝俊

経絡・経穴学説とは中医学の基礎をなす理論の一つで,“経絡”と“経穴”の働きに関する学説である。“経絡”とは,身体の表裏を網の目の様に走っている気血の通り道である。働きとしては,体内の五臓六腑と感覚器,皮膚,筋肉など全ての器官をつなぎ,全身に気血を運ぶ事で臓器の状態に関する情報を伝えている。全身の気血の流れが滞りない状態を中医学では健康と想定しており,いったん表皮や臓器に病邪(外邪)が侵入すると気血の運行が乱れたり滞ったりした状態を形成する。こうした乱れをじょうずに把握してその状態を改善するのに“薬膳”は有効な手段となる。また,“経穴”は経絡上に点在する特異点で,これを刺激する事で経絡を通じて各臓腑の機能を調節する事ができ,鍼灸において重要な学説である。