New Food Industry 2007年 2月号

アンチエイジングの本命=高ポリアミン食

早田 邦康

医食同源という言葉で表される様に,日頃からバランスのとれた食生活をする事で病気を予防できることを我々は経験から学んできた。充分な食物も得る事のできなかった時代には,体内の代謝に必要不可欠な特定のビタミンやミネラルなどが欠乏した食物を継続して摂取することによって健康を害する事を経験してきた。しかしながら,私たちの体は物質をある程度は貯蔵しておく事ができる。よって,現在のような豊富な良好な食料事情の下では,よほど頑固に偏食をしない限りは,ある種のビタミンやミネラルや栄養分が不足することは極めて希な事態と考えてよいだろう。

納豆を利用した血糖値をあげにくい組み合わせ食品に関する研究

奥村 仙示、谷口 章子、武田 英二

近年,糖尿病の予防・管理には,食後高血糖の是正が重要であることが示されている。食後の血糖上昇は,食事量,栄養成分,消化能,吸収能,インスリン分泌能,インスリン感受性等により規定される。血糖値上昇抑制効果があるものとして,特定保健用食品では,難消化性デキストリンやグァバ葉ポリフェノール等挙げられるが,これらは単一食品の機能であるため,数種類の食品を組み合わせて食事をする実生活には具体的に提案しにくい。また,薬剤ではα—グルコシダーゼ阻害剤やフェニルアラニン誘導体などが挙げられるが,副作用の危険性があり,使用には十分な注意が必要である。

ラクティー(R)(還元乳糖)

浜田 雄介

糖アルコールは,一定の甘味度を持ち,非う蝕性,低エネルギー性などの機能性を持つことから,チョコレートやチューイングガムのシュガーレス化や低カロリー化の目的で広く利用されている。本稿で紹介するラクティー(R)も,ラクトース(乳糖)を還元した二糖の糖アルコールであり,一般的に糖アルコールが持つ機能性を持っている。加えて,ラクティー(R)は,糖アルコールとして唯一,ビフィズス菌の増殖作用が認められており,他の糖アルコールとは違ったユニークな食品の開発も可能である。また,血糖値への影響が極めて低いことから,糖尿病患者やダイエット向け低GI食品における甘味素材や賦形剤にも最適である。

望酸化カルシウムを主成分とする焼成ホタテ貝殻粉末の細菌芽胞に対する抗菌特性

澤井 淳

我が国の平成16年度における貝類の水揚げ量は,約86.3万tである。その約6割をホタテが占めている1)。貝の可食部,いわゆる“身”の重量は約2割で,残りが貝殻となる。アサリやシジミと異なり,ホタテの大部分は生産地で身と貝殻に分けられ,「むき身」として流通する。その結果,出てくるホタテの貝殻は年間約40万tにも及ぶ。現在,ホタテ貝殻の一部は食品添加物などに再利用されているが,大部分は産業廃棄物として処理されている。産地では放置された貝殻からの悪臭,および内臓に含まれている重金属(特にカドミウム)による土壌汚染,さらには地下水汚染が大きな公害問題となっている2, 3)。

鮮魚介類および水産食品の期限表示について

吉田 啓子

鮮魚介類および水産食品は鮮度低下が速く,腐敗,変敗しやすい食品であるとともに,毎年,食中毒の原因食品としても上位を占めている。特に,消費者が購入後に加熱することなく摂食する場合も多く,卸売りから店舗へ運搬され,さらに店舗から消費者に至るまでの取り扱い,保存状態が大きく影響すると考えられる。しかし,期限表示は経験に基づいて設定している場合が多く,不安や疑問が残る現状である。

高温超臨界二酸化炭素によるバイオマス資源の変換技術

大平 辰朗

近年の農林水産業における生産活動等では,廃棄木材や廃棄農産物等のバイオマス資源が大量に排出されており,それらの適正処理とリサイクルを進める資源循環システムを構築することが重要な課題となっている。このような背景の中,バイオマス資源のエネルギーあるいは化学資源への変換法について,熱化学的処理法,生物化学的処理法等の優れた技術が提案されている。これらの技術の中で,高温高圧流体による変換技術,特に水を利用する水熱あるいは超臨界水技術については,短時間での効率的な分解力等が注目され,難分解性の様々な試料について利用の可能性が検討されている1)。

FDA食品行政の話(5)残留農薬〜 農薬登録,残留許容量設定,市場監視 〜

石居 昭夫

農作物や動物飼料などから食品に移行する農薬,いわゆる残留農薬の安全性問題は,これまでときにふれ消費者の注目を浴びてきました。最近でも輸入される中国産の食品に法定基準以上の量が検出されたため,輸入が禁止される事件がときどき起きているようです。米国では,食品中に残存する農薬の規制は1954 年,「農薬改正法」が「連邦食品医薬品化粧品法」(FDCA)に取り入れられたときから始まりました。この改正法は穀物,野菜,果物,加工食品,動物飼料などに残留することが法的に許される農薬の最大限度量を意味する残留許容量(Residue Tolerance)と呼ばれる基準値を設定して,それに違反する食品を市場から排除する権限をFDAに与えました。ただ,食肉,家禽肉,あるいは卵に対する残留量の規制は農務省(USDA)の責任とされました。

薬膳の知恵 (9)

荒 勝俊

“薬膳”には,「食材によって病気になる前に体のバランスの崩れを正す」といった予防薬(食養)の働きと,「食材が持つ薬効で疾病の治療を行う」といった治療薬(食療)の両面を併せ持つ。我々の肉体は臓腑,経絡など多くの組織や器官から構成される有機的に統一された整体である。体内の臓器は体表部の五官や手足の筋肉や骨などとお互いに緊密に関係しており,疾病の性質や発病のメカニズムをしっかりと捕らえる事(弁証)ができれば,それに対応した薬膳処方(論治)を組む事ができる。特に,臓と臓や腑との相互依存や相互制約,生理上,病理上の関係などを熟知する事で,薬膳素材の選定において重要な答えを導き出してくれるのである。今回は五臓間の関係に関してその機能を述べる。

中国食品通信 ◆トウモロコシの国際貿易は引き続き拡大

馬 桂 華

20年来,トウモロコシ貿易が拡大を続けている。2004年には,生鮮トウモロコシ,急速冷凍トウモロコシおよび缶詰の輸出額は8.20億ドルに達した。生鮮トウモロコシの輸入量が多い国は,カナダ,アメリカ,イギリス,フランス,オランダなどで,輸出量が多い国は,アメリカ,フランス,スペイン,イスラエル,オランダなどである。急速冷凍トウモロコシの輸入国はイギリス,日本,ベルギー,中国で,輸出国はアメリカ,ハンガリー,ニュージーランド,ベルギー,カナダである。トウモロコシ缶詰の輸入量が多い国は,ロシア,ドイツ,イギリス,日本,韓国で,輸出量が多い国は,アメリカ,ハンガリー,フランス,タイ,カナダである。