New Food Industry 2007年10月号

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New Food Industry 2007年10月号

バラ花びらポリフェノールの機能と生理活性

野原 哲矢

バラ科植物には,ナシ,リンゴ,サクランボ,イチゴなども属しており,非常に範囲が広い。また花としてのバラも,ヨーロッパから中東・アジアを原産とするバラ科バラ属の植物のことを指すことが多く,非常に品種が多い。一般的に日本でバラという場合,バラ科バラ属の八重咲きの花を指すことが多いが,Rosa rugosa (ハマナス)など,一重咲きのものも少なくなく,大きさ,色も様々である。原種と呼ばれるバラは,Rosa gallica(ガリカ),Rosa centiforia(ケンテフォーリア),Rosa damascena(ダマスカス)などを指し,主に観賞バラ・園芸バラの元となる種の起源として利用されてきた。ヨーロッパでは,古くからバラの花びらを紅茶に浮かべ,その味と香りを楽しむ習慣がある(ローズティー)。

金芽米の継続摂取による健康面へのプラス効果

奥田 和子

今日,さまざまな健康志向食品が出回っている。その人体への効能についての情報は生産・販売者側からもたらされる。しかし消費者が実生活でどの程度その効果を把握,実感,評価しているかについてはほとんど不明である。
 そこで,金芽米を継続的に食べ続けた場合,健康面でどのような自覚症状をもつのか検討した。金芽米を取り上げたのは,食が多様化するなかで米は依然として主食としての地位を保ち続けていること,近年その米が,雑穀,胚芽米,玄米など多様化し米売り場の店頭が健康志向で賑わっていることなどによる。そんななか金芽米の消費量が増大しているが,その効用について実証的な検証はまだ十分に行われているとはいえない。

南米産ハーブ「チャンカピエドラ」の尿路結石形成に対する抑制効果とその有用性

鮫島 まゆ、前田 正嗣、鍔田 仁人、小野 裕之、高垣 欣也、渡邉 隆司

チャンカピエドラは,熱帯地域に自生するトウダイグサ科Phyllanthus属の植物で高さ約30〜40cmの一年草である。Phyllanthus属には600種に及ぶ低木植物が分類されており,南米アマゾンなど多雨多湿地域ではPhyllanthus niruri が自生している(図1)。一方でインドやブラジルの乾燥地域などではPhyllanthus amarus およびPhyllanthus sellowianus が分布している。
 チャンカピエドラとはスペイン語で「チャンカ=砕く」「ピエドラ=石」を意味する。その語源の通り,アマゾンの先住民が胆石や腎臓結石,尿路結石の治療に永く用いてきた伝承ハーブで,南米では一般的に結石予防ハーブとして使用されている。

チーズの起源と歴史

大谷 元

チーズは古くから栄養価の高い食品といわれているが,最近の食品の評価基準である感覚機能や生体調節機能においても優れた食品である。通常,私たちが購入できるチーズの数は限られているが,西欧型チーズの著名なものだけでもその種類は1000以上に及ぶといわれている。
 「チーズは乳製品の一つであり,人々が日々飲用する量を上回る量の乳を生産することができる地域であれは,どこでもチーズを造っている。また,殆どのチーズは牛乳を原料にしているが,これは単に乳牛が他の動物よりも多量の乳を生産するという理由からだけである。事実,チーズはラクダ,ロバ,ウマ,スイギュウ,トナカイなどの乳から造っている地域がある。」これは,Dr. Sandersの著書の一節である。現象的には彼の述べているとおりである。しかし,食習慣や食生活は国民性(民族性)や風土による影響を大きく受ける。とりわけ,チーズはその代表的なものであり,そのために種類が多様化したと思われる。

チーズの分類と名称

村山 重信

チーズの分類は,世界保健機構(WHO)と国連食糧農業機構(FAO)の合同委員会によるチーズの定義が前提となる。チーズとは,フレッシュ又は熟成した,固形又は半固形の製品であり,下記のいずれかに基づき製造されるものである。
(a)レンネット又はその他適当な凝固剤の作用により,乳,脱脂乳,部分脱脂乳,クリーム,ホエークリーム,バターミルク又はこれらのどんな混合物であっても,それらを凝固させ,この凝固物より,分離するホエーを部分的に流出せしめることによる。 
(b)乳及び/又は乳から得られる原料を用い,凝固を引き起こす加工技術により(a)に規定されている製品と同じ化学的,物理的,官能的な特性を有する製造をすることによる。
 日本でのチーズの定義は,厚生労働省の『食品衛生法』の中の「乳および乳製品の成分規格等に関する省令」略して「乳等省令」にチーズの基本的な条件が明記されている。

チーズの知的財産権

工藤 力

ここ数年,知的財産,知的財産権という言葉が頻繁に使用されているが,これは次の事情による。平成14年7月3日に知的財産戦略会議が総理大臣に答申した「知的財産戦略大綱」に基づく知的財産基本法が,平成14年の第155回臨時国会で成立し,平成14年法律第122号として平成14年12月4日に公布され,平成15年3月1日から施行された。この「知的財産戦略大綱」により答申された概略は,次のとおりである。
 従来,我が国の高度経済成長の原動力となったのは,勤勉な国民性と重工業を中心とした「大量生産型ものづくり」であり,その土台は,欧米の技術を導入して改良し,強固なチームワークにより生産技術を向上させる日本型生産システムであった。しかし,最近では安い労働コストと生産技術の向上を背景にしたアジア諸国の追い上げ,グローバルな社会の情報化の進展等により,過去の成功を支えた経済モデルから脱却し,新しい成長モデルを構築することが求められていた。

機能性オリゴ糖

浦島 匡

哺乳動物の乳は,糖質画分の80%以上をラクトース(Gal(β1-4)Glc)が占めるが,一方で少量ながらミルクオリゴ糖と言われる多種類のラクトース単位を還元末端側に有するオリゴ糖群も含んでいる1, 2)。ウシの場合,分娩直後の初乳は1 g/L以上のミルクオリゴ糖を含むが3),常乳には痕跡量程度しか含まれない4)。一方ヒトの場合,初乳で22 〜24 g/L, 常乳で12 〜13 g/Lのミルクオリゴ糖を含んでいる5, 6)。図1には,ウシ初乳でこれまでに発見されている12種類の酸性オリゴ糖と10種類の中性オリゴ糖を示した2, 7, 8)。ミルクオリゴ糖の種類は種によって大きく異なる。人乳にはこれまでに93種類のミルクオリゴ糖が発見されており,130種類以上が存在することが知られている5, 6)。

薬膳の知恵 (17)

荒 勝俊

中医学では,人体も自然の一部として捉え,自然と調和してバランスを保つことが健康を維持する上で重要と解いている。人体の機能が失調したり,自然界の変化が人の恒常性維持機能の限度を超えたりすると病気になる。人と天地が対応しているとする陰陽学説の観点から考えれば,人体の内と外,表と裏,上と下といった相対的な陰陽の協調関係が保たれているとき,正常な生理活動が維持されている。即ち,陰と陽の協調関係が乱れると疾病の原因が生み出され,病気を発生させる。そこで,疾病の診断にはまず,中医学の診断方法である『四診』という方法を用いて疾病の陰陽を見分ける事が必要である。

伝える心・伝えられたもの —偲ぶ與兵衛の鮓—

宮尾 茂雄

梅雨にぬれたアジサイの花が紫,藍色,水色とグラデーションも華やかに街を彩るこの季節,一方では身体を動かすたけで汗ばむ湿気に食欲は低下気味,何かさっぱりしたものが欲しくなる。そんな通勤途中,大トロ,赤貝,サヨリ,穴子,ウニ等色鮮やかな握り鮨と「今も変わらぬ江戸前の味」と大きくかかれた看板の前に足が止まった。
 雑誌やテレビ放送の世界はグルメブーム,テレビをつければ何処々の何々が美味しいと名店名品を紹介している。なかでも江戸前握り鮨,大トロは賞賛の的である。「握り鮨」が誕生したのは文政年間(1818〜1830年)といわれているが,江戸の町では今と同じようなすしが賞味されていたのだろうか。冷蔵庫,冷凍庫などの保冷設備がない時代に生のすし種を扱うことができたのだろうか。そんなことを考えている時に「偲ぶ與兵衛の鮓」1,2)(写真1)に出会った。

エッセイ 楊枝の歴史と文化 -手作業による楊枝作り-

稲葉 修

ここで生産工程について書くと,先ず黒文字は皮をつけたまま荒割りし,皮が残るように更に細く割る。次に「セン」と呼ばれる鎌を利用した道具で厚みを一定にする。厚みの決まった材料を「つまようじ」の幅に設定された二枚の刃物の間を通すのである。これで「つまようじ」の厚みと幅の整った長い四角な棒状になる。このヒゴを押し切りを使って一定の長さに揃える。最後に小刀で先を削る。尚,黒文字の原木は直径1.5〜2.0cmである。
 これに対し卯木は太い(5cm)ため黒文字より生産効率は勝っている。まず1m位に切った原木の切り口に約2mm間隔で割れ目を入れる。この割れ目に刃物を入れ割っていく。縦の繊維が良く通っているので全部板状に割れる。この板を細割りし,約2mm角のヒゴ状を作る。このヒゴを鉄板に「つまようじ」の太さの丸穴を開けたヒゴヌキと呼ばれる道具に差し込み,ヤットコで挟んで引っ張る。丸いヒゴができる。この道具を使うようになって「つまようじ」が丸くなったのである。このヒゴを丸鋸で「つまようじ」の寸法に切る。仕上げは先を尖らすことであるが徐々に道具から初期の機械に移っていくのである。

中国食品通信

馬 桂 華

福建省の輸出入税関検査検疫局の統計によると今年の上半期(1〜6月)における中国の鰻蒲焼の主産地である福建省福清市の鰻蒲焼の輸出量は7073.57 トンで,輸出額は,合計で8318.85万ドルに達した。昨年1年間の実績と比較すると輸出量で67.09%,輸出額で47.79%の増加となっており,輸出量は2006年の1年間の総量を半年で超えたことになる。
 このような実績は,福建省輸出入検査検疫局が主に以下のような6項目の措置を実施したことによるものである。
 (1)鰻蒲焼を製造している企業は,日本以外の国際市場を開拓してきた。その結果,ロシア,インドネシアなどにも輸出するようになった。これに加え,現在では,米国と韓国が輸出先となっており,それぞれ,鰻蒲焼の輸出先の2番と4番になるまでに成長させた。
 (2)積極的に管理モデルを追及した結果,鰻養殖工場が集中している地区に農業合作社の組織を作ることにより,鰻協会に対して,集中的に薬品類の供給制度を拡大し,普及させることができた。

築地市場の魚たち(4)

山田和彦

食品を扱う市場で,最も注意が払われるのは衛生に関する事柄であろう。築地市場でも,各業種の専門の方が,長年の経験に基づき注意を払っているほか,東京都の市場衛生検査所が全体に目を配り,事故発生の防止に努めている。有害なものを持ち込まない,作らない,持ち出さない,が原則である。特に高温期は,水産物の食中毒が問題となることが多い。衛生面で注意すべき事柄は多方面に及ぶが,ここでは魚貝類に直接起因する問題について取り上げようと思う。微生物による腐敗や高温多湿による変質などは,他の専門書を参照していただきたい。