New Food Industry 2017年11月号

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New Food Industry 2017年 11月号

乳酸菌スターターを用いたザワークラウトの開発
Lactic acid bacteria as starter culture for sauerkraut production.

玉川 英幸,小川 則義

 昨今の漬物業界,とりわけ中小の漬物製造企業を取り巻く環境は厳しい状況にある。食の欧米化を背景に漬物の市場規模はここ20年で約半分近くまで低下した(Fig.1)1)。一方で大手企業の寡占化が進み,廃業を強いられる伝統的な漬物メーカーは年々増加している。こうした背景の中で中小の漬物製造企業が生き残るには,現代の食文化にマッチし,大手企業が注目しないニッチ市場に参入することが有効だと考えられる。
 ザワークラウトはドイツの伝統的なキャベツの漬物である。乳酸菌(Lactic acid bacteria; LAB)の発酵によってもたらされるその酸味は肉料理との相性が良く,食の欧米化が進む日本において潜在的なニーズが高い商品であると考えられる。現在ドイツ系レストランでは,加熱殺菌された輸入ザワークラウトがソーセージの付け合せとして提供されていることが多く,加熱強度の低い国産ザワークラウトが入り込む余地は多分に残されている。しかしながら,著者らの知る限り乳酸発酵による国産ザワークラウトが定常的に量産されている例はない。飲食店の検索サイト2)でドイツ系レストランを検索すると,全国で1000店舗以上(そのうち約半数が首都圏)がヒットすることから,現在のザワークラウトの業務用としての市場規模は少なくとも5〜10億円程度はあると想定される(3kg消費/日/店舗×500円/kg×365日×1000店舗=5.5億円)。国産ザワークラウトは,大企業にとっては決して大きい市場とは言えないこと,小規模の事業者によっては参入するに技術的,経営的にハードルが高かったことから,これまで注目されてこなかった市場と言える。

フレボタイドが食品(パン・中華麺)に与える影響 

蒲池 加寿子

クロレラが健康食品として市場に登場したのは1964年,それから半世紀にわたり様々な分野でクロレラ粉末およびその熱水抽出物(以下クロレラエキス)の研究・開発が進められてきた。現在では,クロレラには人の健康に有効な「コレステロール低下作用1)」,「血圧低下作用2)」,「解毒作用3, 4)」,「生体防御機能調節作用5, 6)」,「緑黄色野菜代替作用」など種々の生理作用があることが広く知られるようになり健康食品として不動の地位を築いている。
 一方,一般食品への利用は,クロレラエキスの乳酸菌に対する増殖促進効果を利用して初めて発酵乳製品に用いられた。その後,クロレラエキスには食品の味を調える作用があることがわかり,クロレラ粉末は葉緑素含量の高さを利用して緑の着色を目的に使用されるようになった。現在,クロレラ粉末は着色料としてクロレラエキスは調味料・製造用剤として食品添加物リストにも収載され一般食品にも広く使われている。
 当社クロレラ工業㈱では,一般食品向にクロレラ粉末をさらに微粉末加工した緑の色づきのよい「商品名:クロレラマイクロパウダー」,クロレラエキスは糖と塩で保存性を高めた「商品名:フレボタイド(糖液),フレボタイド(塩液)」(以下フレボタイド)を製造している。クロレラマイクロパウダーの用途は「緑の色づけ」がほとんどであるが,フレボタイドはパンや麺,和菓子などの食味や物性に効果があるとして多様な食品に利用されている。しかしながらそのフレボタイドが食品に与える影響は製造者の経験や感覚によるものでありほとんど科学的に実証されていない。
 そこで本稿では,パンと中華麺を対象としフレボタイドが食味や物性に与える影響を検証したので報告する。

酵母が醸すお酒の世界 −酵母のアルコール発酵と二日酔い対策−

中川 智行

 古来より人類は「酒の持つ不思議なチカラ」に陶酔してきた。酒はヒトに昂揚感を与え,特別な精神状態を作り出すことから,人類は酒を神聖なものと崇め,神への捧げ物,さらには神の領域に近付くための重要なツールとして祭事や儀礼などで利用してきた。さらに酒は,時には「憂いの玉箒」とあるように心の憂いを拭い去ってくれ,時には「人間関係の潤滑油」として交渉事や冠婚葬祭など様々な宴席で親睦を深めるためのツールとして活用されてきた。このように,人類は酒の持つ偉大なチカラを知り,その魅力を楽しみ,それらを巧妙に活用することでそれぞれの文化を発展させてきた。また人類はその文化の構築の過程で「より美味い酒」を追い求め,それぞれの文化に見合った酒を醸造する技術を長い歴史の中で発展させてきたことから,酒は各々の地域文化を映しだす鏡であると言っても過言ではない。
 一方,江戸時代の儒学者・貝原益軒は「養生訓」の中で「酒は天の美禄なり。少し飲めば陽気を助け,血気をやわらげ,食気をめぐらし,愁を去り,興を発して甚だ人に益あり。」と記し,酒はヒトにとって有益なものであるとしている。しかし,同時に「少しのめば益多く,多くのめば損多し」,「すぐれて長生きの人の十人に九人は酒を飲まない人。酒を多く飲む人の長命はまれである。酒はほろ酔いに飲むことで,長生きの薬になる。」と節度ある飲酒こそ「百薬の長」と忠告もしている。その通りで,ついつい飲みすぎた次の日は二日酔いになり,それが常習化してしまうとやがてアルコール使用障害に陥り,人体に多大な悪影響をおよぼすことはいうまでもない。この二日酔いの原因物質のひとつとして知られるアセトアルデヒドは,エタノールの酸化により体内で必ず生産される代謝中間体であり,フラッシング反応(顔面紅潮,吐き気,動悸,眠気,頭痛,頻脈,血圧低下,気管支収縮,アレルギー反応など)を引き起こすのみならず1, 2),肝障害や発ガン性1, 3−5),さらにはシックハウス症候群の原因物質でもある6)。つまり,飲酒時にはこのアセトアルデヒドの細胞毒性を上手に回避しながら宴席を楽しみたいものである。

Influence of differences in the amount of added water on quality of white sorghum flour bread

Kyoko Tsuchiya

 Japan is blessed with a climate for producing rice, and many recipes with this staple food have been created, in addition to cooked rice, thereby enriching eating habits. Wheat flour products, such as bread and noodles, are generally eaten as staple foods in addition to cooked rice. Occasions to eat cereals with a high dietary fiber content have recently increased because of abundant food-related information and an increase in health consciousness. Originally, cereals represented grains other than rice and barley1), and included several types of grain including foxtail millet (awa) (Setaria italic), common millet (kibi) (Panicum miliaceum), and Japanese millet (hie) (Echinochlo aesculenta). Cultivation of these cereals started in the Jomon period around 4000 B.C.2), being historically older than rice. Cereals were important crops in some eras, but cereals were considered to supplement an insufficient supply of rice in Japan, which attached a greater importance to rice, and cultivation of cereals rapidly decreased after the Second World War2).
 Cereals contain abundant vitamins, minerals, and dietary fiber, and are nutritionally superior to rice3). These are used as substitutional foods for people with rice/wheat-induced allergies, recently attracting attention again.

グルテンフリー食品用の各種素材(3)

瀬口 正晴,木村 万里子

要約
本論文「グルテンフリー食品用の各種素材(3)」は,海外のグルテンフリー食品のための素材の現状について解説したものである。具体的には,米国の穀物科学者,Jeff CasperとBill Atwellによって書かれた本(“Gluten-Free Baked Products” 2014 by AACC International, Inc. 3340 Pilot Knob Road St. Paul, Minnesota 55121, U.S.A.)の一部(”The Gluten-Free Ingredients”)を翻訳し紹介するものである。ここでは,前報「グルテンフリー食品用の各種素材(2)」につづいて述べる。

理想的にはグルテンフリー食品は,グルテン含有穀物による食品と同じ栄養的プロフィールを持つべきである。残念ながら精製したデンプンの利用を多くすると,グルテンフリー食品中の微量栄養素量は減り,セリアック病患者の栄養的要求を増加させることになる。それらによる損なわれた栄養分の吸収のために,セリアック病患者には栄養価レベルの増加が要求される。例えばカルシウム,マグネシウムなど,健康に必要な最低の要求量を満たさねばならない。強化とはこの問題を解決する方法である。FAO/WHOは強化について以下のように定義している48)。

クマザサ葉抽出液は骨芽細胞と破骨細胞を相反的に制御することで骨形成を促進する
Extract of Sasa senanensis Rehder leaves promotes osteo-formation by differently modulating the osteoblast and osteoclast.

友村 美根子,友村 明人,大泉 高明,安井 利一,坂上 宏

要旨
 クマザサ(Sasa senanensis Rehder)葉のアルカリ抽出液(SE, ササヘルス®)はマウスマクロファージ細胞株RAW264.7細胞からの破骨細胞分化を抑制した。一方,SEはMC3T3-E1 細胞の骨芽細胞への分化を促進した。従ってSEは骨形成を担う骨芽細胞の分化と骨吸収を担う破骨細胞の分化を相反的に制御することから,骨粗鬆症などの骨疾患の治療や予防に有効である可能性が示唆された。

Abstract
 Alkaline extract of the leaves of Sasa senanensis Rehder (SE, SASA-HealthⓇ) inhibited the osteoclast differentiation in murine macrophage-like cell line, Raw 264.7, while it promoted the osteoblast differentiation in MC3T3-E1 cells. Thus, SE reciprocally regulates the cell differentiation of bone-resorbing osteoclast and bone-forming osteoblast in vitro. SE may have a therapeutic potential for treatment of bone disease such as osteoporosis.

ニジマスの親魚用飼料-3

酒本 秀一

 既報1,2)においてハードペレット(HP)とエクストルーダーペレット(EX)のニジマス親魚用飼料としての適性を比較し,以下の結果を得た。
 ・HPあるいはEXで飼育した親魚を用いて再生産試験を行った結果,受精・発眼率,孵化率,孵化仔魚の奇形率等はHP飼育魚の方が優れていた。
 ・採卵,採精後の親魚の生残率はHP飼育魚の方が高かった。
 ・HPの欠点は魚の飼育成績がEXより劣ることであるが,HPに魚油を7.5%添加するとEXと同等の飼育成績を示した。
 HPには魚の再生産効率が高くて飼料の製造コストが安いという利点は有るものの,飼育成績が劣るという大きな欠点があった。この欠点は魚油の7.5%添加で解消されることが分かった。魚油添加HP飼育魚による魚の再生産結果がHP飼育魚に劣らなければ再生産効率,飼育成績共に優れた親魚用飼料になり得る可能性が有る。
 前報2)の試験-3終了時には生殖腺が発達を始めていたので,本試験では育成用飼料から親魚用飼料に切り替えて飼育を継続し,再生産試験を行った。さらに採卵,採精後の親魚の生残率を調べるために回復試験も行った。

野山の花 — 身近な山野草の食効・薬効 —

ヤマノイモ Dioscorea japonica Thunberg(ヤマノイモ科 Dioscoreaceae)

白瀧 義明

 秋も深まり,木の葉が散り始める頃,山里を歩いていると,風鈴の短冊のような果実をつけたつる性の植物を目にします。ヤマノイモは北海道〜沖縄の山野に生える雌雄異株のつる性の多年草で葉は対生(一部互生),長さ5〜10cmの三角状披針形,基部は心形,先は長くとがり,葉腋にしばしば珠芽(ムカゴ)をつけ栄養生殖します。花期は7〜8月,雄花序は葉腋から直立し,花被片6個の白い小さな花を多数つけます。一方,雌花序は葉腋から垂れ下がり,雄花よりやや小さい白い花がまばらにつき,子房に翼があり,成熟すると翼が大きく張りだします。さく果は下向きにつき,3個の扁平な丸い翼をもち,種子は円形で周りに薄い翼があります。良く似た同属植物のオニドコロのさく果は上向きにつき楕円形,種子の片側にのみ翼があります。また,カエデドコロの花は橙黄色で,さく果は上向き,種子の全周に翼をもち,葉柄基部に小さな突起があります。これら,「トコロ」の仲間は食用には不向きですが,同属植物でメキシコに自生するDioscorea mexicanaなどの成分であるステロイド化合物のdiosgenin, dioscinなどはコルチゾンなどのステロイドホルモンの製造原料として重要です。

デンマーク通信

デンマークの便利食品

Naoko Ryde Nishioka

 今回はデンマークの、子育て世代の忙しい人々を支える便利食品について紹介したいと思います。
 デンマークといえば社会福祉国家で、女性も男性も、家庭をもつ人も持たない人も、社会で活躍できるようなシステムが整った国家のイメージがあると思います。中でもデンマークにおける女性の社会進出は日本などに比べると、だいぶ進んでおり、家庭を持っても、夫婦共働きが基本です。そんな環境を支えるために、例えば子供が生まれても、必ず身近にある保育園に子供を預けることができたり(待機児童は基本なし)、多くの会社では、勤労時間や時間帯もフレキシブルにしていたり、在宅勤務も広く普及しています。そんなわけで、デンマークでは共働きが基本なのです。子育て世代の人々はとにかく忙しく日常を過ごしていることが多く、今回はそんな人々を支える食品について紹介したいと思います。

国際的コミュニケーション能力の重要性(5)

The importance of international communication skills (5) How can we not be left behind in the times?

坂上 宏,肖 黎,戴 秋娟,大石 隆介,神崎 龍志,土田 幸広

 驚異的な発展を遂げ続ける中国に学ぶところ 2009年にIADR会議(武漢)に出張の折,上海に立ち寄った。新宿の高層ビルよりも遥かに高い建物に圧倒されたことを鮮明に覚えている。中国の目覚ましい発展は,既にその頃から始まっていたのだ。
 アメリカのTPP離脱1),そして,G7サミット(タオルミーナ)でのトランプ外交の失策2)は,アメリカのアジアそして欧州に置ける存在感を著しく弱めた。これに対して中国は,「一帯一路」国際合作高峰会議期間中における,参加国や国際機関との68に及ぶ協力協定の署名3),途上国に対する莫大な融資や,インフラ建設の支援などにより着々と基盤を形成しつつある4)。近代中国革命の根源的命題は,中国的価値観を外国に再認可させること(=「中華天下恢復」)である5)。中国ではノーベル賞級レベルの交遊に標準を合わせている6)。最近の香港の若者は,中国本土の圧倒的な経済力,学力,税力に対抗できない7)。

◆解 説 非分解プラセンタ内服による肌解析結果の考察

筑丸 志津子

 プラセンタは日本では1956年にプラセンタエキスの注射液「メルスモン」が医薬品認定を受け,更年期障害と乳汁分泌不全の治療に使われ始めまた。その後1959年には「ラネンネック」が製造され,総合的な肝機能治療薬として認可された。多種の効果が期待できることから徐々に美容にも応用され始め近年では内服サプリメントでプラセンタを扱う医療機関もでてきた。各種内服プラセンタがあるが,今回非分解プラセンタカプセル製剤を10人に1か月内服してもらい,その効果について肌解析を行い美容的に効果がみられるかを検討した。