New Food Industry 2017年3月号

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New Food Industry 2017年 3月号

食品成分によるナチュラルキラー細胞の活性化

齋藤 武

わが国の総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は平成27年度に26%に達したとされ,今後もさらに高齢化が進むと見込まれている。高齢化社会への対策として,日常生活に制限のない期間すなわち健康寿命の延伸による生産人口の確保,および医療・福祉コストの抑制は重要な課題である。要介護となる大きな要因としては認知症や脳血管疾患(脳卒中),運動器の障害などが挙げられており,健康寿命の延伸のために国や地方自治体レベルでも生活習慣や食習慣の改善などの取り組みが始まっている。一方,加齢によって免疫機能も低下し,がんや様々な感染症のリスクも増大する。そこで筆者らはからだの免疫機能の強化をサポートすることが健康状態の維持に貢献できるのではないかと考え,免疫機能の調節に関与する細胞の中で特にナチュラルキラー(NK)細胞の機能に着目して研究を進めている。

ビワの保健作用

芳野 恭士,芳野 広起

 ビワ(Eriobotrya japonica)の葉はビワヨウと呼ばれ,中国や日本で生薬あるいは漢方薬の材料として抗炎症,鎮痛,鎮咳,去痰などの効果のために伝統的に利用されてきた1, 2)。また,ヨルダンでも古くから糖尿病の治療に利用されている3)。近年では,葉だけでなくその種子や果実の様々な保健作用についても科学的に検討されるようになった。ここでは,ビワの示す様々な保健作用とそれに関わる成分について,これまでの知見をまとめて紹介する。

霊芝菌糸体培養培地抽出物(MAK)による虚血性脳障害の軽減メカニズム
Protection mechanism of exacerbation of neuronal damage after cerebral ischemia by a water-soluble extract from the culture medium of Ganoderma lucidum mycelia (MAK)

岩田 直洋,岡﨑 真理,飯塚 博,日比野 康英

Abstract.
 The mortality of cerebrovascular diseases is decreasing worldwide, but the prevalence is increasing and associated with a considerably poor quality of life. Moreover, diabetes mellitus damages the macrovasculature and microvasculature, increasing the incidence of cerebrovascular diseases several times. Rapid deterioration of brain injury has been shown in the presence of both diabetes and cerebral ischemia, but the mechanism is poorly understood. The treatment of cerebral infarction is extremely challenging because pharmacotherapy has limitations in terms of indication time-frame, and treatment options are limited. Therefore, primary prevention of cerebral infarction is important. We focused on oxidative stress and inflammation, which are commonly involved in both diabetic diseases and transient ischemic attack, and investigated food products for prophylaxis as alternatives of pharmacological agents, and reported the efficacy and safety of extracts from culture medium of Ganoderma lucidum mycelia (MAK). MAK has been consumed for many years as a food for specified health uses; it is derived from hot water-soluble extraction from the fragments of whole culture medium of Granoderma lucidum mycelia after a specific time period, and has been shown to suppress blood glucose elevation and has antioxidative activity. This review initially addresses the involvement of oxidative stress, inflammatory response, and high mobility group box 1 (HMGB1) as an etiology of brain injury deterioration in the combined condition of diabetes and transient ischemic attack, and thereafter the mechanism of brain-protection activity by MAK.

酵素剥皮技術を用いたかんきつ類の市場可能性

大浦 裕二,山本 淳子,玉木 志穂,河野 恵伸

 果実の需要はほぼ横ばいで推移しているが,生鮮果実の割合は減少する一方で,果実加工品の割合が増加し,その重要度が増している。果実加工品は,缶詰,ドライフルーツ,ジュース等が主流であり,原料の過半は輸入品で占められている。近年は加工品にも生の食感や香りといった果実特有のフレッシュ感が求められており,国産果実の需要喚起のためには,生鮮に近い食感や香りを保持できる流通加工技術の開発が必要である。
 このような背景のもと,農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所(現 果樹茶業研究部門)を中心に,酵素剥皮技術を核とした果実加工品の開発が進められてきた。酵素剥皮技術とは,酵素を用いて果物の外皮あるいは内皮を除去する技術である。この酵素による剥皮は,ナイフなどの刃物を使った剥皮や,かんきつ類において現在主流となっている酸アルカリ法による剥皮よりも,品質の高い加工品を製造できる可能性があるとして注目されている。
 ただし,酵素剥皮技術の実用化・商品化に際しては,加工業者や流通業者の評価に加え,最終的に商品を購入する消費者の評価を踏まえて,新技術の市場性を十分に検討しておく必要がある。
 農産物における新品種・新商品の市場性に関する既存の研究を概観すると,新品種については,河野3)がサツマイモ新品種を用いてHUT(ホームユースドテスト)の有効性について検討し,鈴木4)はコンパクトネギを対象に官能評価やアンケート調査を用いて新品種の受容性に関する研究を行っている。また,新商品については,本田2)がカット野菜を対象にアンケート調査から消費者の意識構造を分析し,市場性を検討している。これらは,従来とは形質の異なる新品種を利用した新商品,あるいは生鮮農産物にカットという加工を施すことによる新商品であり,いずれも加工・流通に関わる新技術を用いたものではない。
 一方,新しい加工・流通技術に基づく新商品を対象に市場性の検討を行った例は見られない。しかし,食品の表示やリスクコミュニケーション等の観点からも,新しい加工・流通技術を用いた新商品の市場性,さらに販売時に求められる表示のあり方の検討は重要であると考えられる。そこで,本研究では,技術開発が進行中の酵素剥皮技術を用いたかんきつ類の市場性を検討する。

調理用ブレードミルによる乾燥食材の粉砕と回転速度の関係
-ジューサー,ミキサー,プロセッサーの動力学-

姉崎 正治,三好 恵真子

食材を粉にして味わう文化は世界各地で共通とされるが,日本ではうどん粉,そば粉,黄粉といった日常的な食文化の中や茶道における抹茶のように幅広く利用されてきた1−3)。この食材粉の評価には二つの面がある。一つはその粉を使った食品(加工食品)の旨味であり,もう一つはその粉の製法(粉砕技術)である。日本には旨味を表すオノマトぺ(onomatopoeia)が多く,その微妙な差異を定量評価することは難しい。概ね物理的性質によるものと化学的性質に関係するものとに分けられるが,近年になって粉体の表面構造の解析や物理的・化学的特性の研究の成果が微粉技術や整粒技術の進歩を促してきた。それらは,健康食品,医薬品,ファインセラミックス等の需要の増加と共進しつつナノ粒子の製造を可能にした。このことはまた粉砕機構の解明や粉砕機器の革新に寄与してきた。
 このような粉体に関する歴史的,科学技術的な進展の中において,中心的なキーワードとされるのが「粒度」である。そして本研究では,日常的に用いられている野菜や果物のジューサーやミキサー,フードプロッセッサー等の電動式食品調理機器(以降単にブレンダー類と表記)による食材の粉砕・混合過程に着目した。なぜなら,それらの機器の基本的な操作機構(ブレードによる刻みと混合)や形状(縦長の筒型や横広の鍋型)がほとんど変化しておらず,それと同時にその微細化機構や混合過程に関する基礎的研究4−6)もほとんどなされていないため,日常的に利用されている電動式の食品調理機器の裁断や混合について,動力学な観点から基礎的な研究を試みようと考えた。
 食品の旨味に関係する物理的食感のうち,とろけるような感じと表現される粒度は20〜30μm以下といわれている7, 8)。しかし日常的には粒度そのものは注目されず,調理後の全体を捉えて旨味が表現されている。一方上述の機器,ブレンダー類はジュース等の湿式操作とコーヒー豆や煮干し粉のような乾燥食材を粉にすることに用いられていて,粒度も粒度分布も機器メーカーごとのデーターを見る以外簡単に知るすべがないのが実情である。

ニジマスの肉色改善-5

酒本 秀一

 著者はこれまでに行ったニジマスの肉色改善試験で以下の4点を調べた。①合成アスタキサンチンとカンタキサンチンの魚による吸収率ならびに両者の肉色改善効果1)。②色彩色差計での測色と色素量の測定を行うべき部位2)。③色彩色差計をニジマス肉部の色素量の推定に用いる事の妥当性3)。④肉色改善効果に及ぼす飼料への油脂添加の影響4)。
 この一連の試験で供試魚の大きさによって肉色改善効果が違うのではないかと考えるに至った。よって本試験では,供試魚の大きさと肉色改善効果の関係を調べることにした。

プランクトンの増殖促進による地球温暖化防止法と漁業の復活策

尾崎 庄一郎

要旨
 地球は化石燃料の燃焼によリ発生するCO2と熱により温暖化されている。CO2同化反応は太陽熱を吸収しながらCO2と水から炭水化物ができる反応である。燃焼は同化反応の逆反応である。化石燃料の燃焼によるCO2と熱の発生を同化反応用によるCO2と熱の吸収によって相殺する事ができれば地球の温暖化を防ぐことができる。地球誕生時に95%あったCO2を現在の400ppmまで下げたのは,プランクトンのCO2同化反応である。CO2同化反応の70%は海で行なわれているといわれている。プランクトンの成長を促進するため海に栄養塩類である窒素,リンを供給することがもっとも大切なことである。樹木や化石燃料を燃焼する時NOx が大量に発生する。このNOxをそのまま大気に放出すればよい。排水中には窒素,リンが含まれているのでそのまま海に放出すれがよい。深い海水には栄養塩類が高濃度で含まれているので栄養塩類のない浅い海水と撹拌する方法を研究する事が重要である。NOx と下水中の窒素,リンを排除する処置をやめて,深層海水と浅層海水を撹拌することにより海水中のN とP の濃度を高めてプランクトンの増殖を盛んにしてCO2同化反応を盛んにしCO2と熱を吸収すれば地球温暖化は防止できる。また,衰えてしまった日本近海の漁業が復活できる。

特別寄稿

中国料理に魅せられて ー南国酒家の創業に至るまでの道程

宮田 了

Abstract
This article introduces the road up to the establishment of Nangokusyuka Chinese restaurant that pursues new food culture by incorporating Japanese elements

中国の料理をベースにして、日本的な要素を取り入れた新しい食文化を追及している中国料理レストラン「南国酒家」の創業の歴史に迫る。

エッセイ

伝える心・伝えられたもの — 国分寺崖線,湧水巡り—

宮尾 茂雄

 水道の蛇口をひねれば水がほとばしり,町にでればペットボトル入りのミネラルウォーターがどこでも手に入る時代,私は水のありがたさを忘れていたような気がした。しばらくぶりに東京都国分寺市にある万葉植物園を訪れ,裏山からの湧水が陽の光を受けてキラキラ揺れている様子を見たときは,懐かしく心安らぐ思いがした(写真1)。
 万葉植物園は私が学生時代をおくった東京農工大学に近く,冬になると雑木林や畑の道はジョギングコースとなり,体育の授業時間にいやいやながら走った記憶がある。久しぶりの湧水との再会は何故かとても嬉しかった。ちょうど柿が実り,黄金色の蜜柑が晩秋の秋晴れの空に輝いていた。
 国分寺市から世田谷区まで続く武蔵野台地と多摩川の間にある国分寺崖線は,古多摩川の流れによって造られた標高10〜15mの河岸段丘で,通称「ハケ」と呼ばれている。ハケの湧水は富士山,箱根の噴火による火山灰が4〜8m堆積した武蔵野ローム層の下,砂利が混じった武蔵野礫層にある地下水脈から湧き出している。崖線下の「ハケの道」は湧水と緑に恵まれた野外博物館といった趣があり,四季おりおり自然の展示換えもおもしろい。

湧水マップも掲載された、カラーPDFをご希望の方は編集部までご連絡ください。

製品紹介

『アスコフレッシュ®』

株式会社林原

 「アスコフレッシュ®」(主成分:L-アスコルビン酸2-グルコシド)は,ビタミンC(L-アスコルビン酸)とでん粉を原料に,林原の持つ糖転移酵素の技術で製造した安定型ビタミンC。一般にビタミンCは分解されやすく,着色しやすいという欠点を有している。これに対してアスコフレッシュは,還元性に重要な役割を果たすビタミンC分子の2位水酸基にグルコース分子がα-グルコシド結合した構造をしており,熱や光,酸素,他の栄養素(ミネラル,アミノ酸他)などの影響を受けにくく,安定性に優れている。そのため,保存中の着色,退色,臭気発生,残存率の低下などの問題が生じにくい。
 アスコフレッシュを摂取した場合,小腸の消化酵素(α-グルコシダーゼ)により容易に加水分解を受け,ビタミンCとして体内に吸収される。

カラーPDF下記よりダウンロードしてください。

「アスコフレッシュ」カラーPDF

野山の花 — 身近な山野草の食効・薬効 —

コブシ Magnolia kobus D.C.(M. praecocissima Koidz.)(モクレン科 Magnoliaceae)

白瀧 義明

 3月,ようやく春めいてきた山里を歩くと,山の中腹や民家の庭などで真っ白な花を枝いっぱいに付けた木を見かけます。これがコブシです。本植物は北海道から九州にかけての日本,朝鮮半島南部の山地に自生し,庭などにも植えられる落葉高木で,高さは7~8m になります。幹は直立し表面は灰色,よく分枝し,小枝は折ると芳香があります。葉は互生,有柄で広倒卵形,先端は突形,基部は広いくさび形をしていて全縁です。若葉には毛があり,毛はやがて脱落し,托葉は膜質で早く落ちます。3~4月ごろ,葉に先立って花をつけ,つぼみは毛皮質の包葉で2~3重に包まれた倒こん棒形をし,がく片は3個で外面に軟毛を密生します。花弁は6枚,白色でへら形,基部は少し赤みを帯び,花の径は約10 cm位です。コブシの名前の由来は花後にできる果実の表面が盛りあがり,握り拳のようにぼこぼことした形をしていて,人の拳のように見えるところからついたとされています。また,コブシには枝を一周する托葉痕があります。托葉痕はハチマキともいわれ,モクレン科に共通する特徴でもあります。

デンマーク通信

デンマークのビール

Naoko Ryde Nishioka

 今回はデンマークのビールにまつわる話を紹介したいと思います。
 ヨーロッパのビールといえば,日本人に最も身近なのは,ベルギーのビール,ドイツのビールなどでしょうか。デンマークはドイツの北に位置する小さな国ですが,もちろんここでもビールは,欠かせないアルコール類の一つです。例えば,世界的にも有名なビールのメーカー,カールスバーグは,1847年にデンマークで創立し,緑色のパッケージのビールは,現在世界各国で販売されています。デンマーク国内でもカールスバーグは人気のビールの一つですが,他にも様々なビールが製造,販売されており,スーパーのビール売り場に行くと,多くの銘柄がずらっと並んでいます。