New Food Industry 2015年8月号

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New Food Industry 2015年 8月号

高血圧自然発症ラットにおける霊芝菌糸体培養培地抽出物(MAK)の血圧上昇抑制作用
Antihypertensive effect of a water-soluble extract from culture medium of Ganoderma lucidum mycelia (MAK) in spontaneously hypertensive rats

深谷 睦,岩田 直洋,庄司 早織,神内 伸也,岡﨑 真理,浅野 哲,宮野 義之,飯塚 博,日比野 康英

Abstract
 Hypertension is an important risk factor for circulatory disease in the general population. Recently, it has been reported that oxidative stress is a key player in the pathogenesis of hypertension. Now, we are examining the potential of antioxidant foods to prevent hypertension. We reported that a water-soluble extract from culture medium of Ganoderma lucidum mycelia (MAK) as a functional food had an antioxidant activity. However, the effect of MAK on hypertension has not been elucidated. The purpose of this study was to examine whether MAK relieved a hypertensive state induced in spontaneously hypertensive rats (SHRs). SHRs (4-week-old, male : SHR group) were fed a diet supplemented with 0.5% MAK for 10 weeks. As a positive control of antioxidant food, N-acetyl-L-cysteine (NAC : 1.5 g/kg/day) was ingested for 10 weeks. In rats fed with diets supplemented with MAK (S-MAK group) or NAC (S-NAC group), blood pressure was decreased in comparison to the SHR group fed with the control diet (157.3±10.3 mmHg in S-MAK, or 155.6±9.2 mmHg in S-NAC vs 185.8±8.9 mmHg in SHR group, 14 weeks ; p < 0.01). Moreover, MAK and NAC decreased oxidative stress evaluated by d-ROMs test in each group. However, histological changes in kidneys and blood vessels were not observed in any group at 14 weeks. These results suggest that daily intake of MAK exerts antihypertensive, which may contribute to alleviation of the oxidative stress in SHRs.

 厚生労働省の平成24年国民健康・栄養調査によると,血圧の状況に関する調査(20歳以上)の結果の概要において,収縮期血圧が140 mmHg以上の者の割合は,男性35.7%,女性25.5%であり,この10年間,男性は大きな変化は見られず,女性は減少傾向にあると報告されている。しかしながら,同調査結果では,男性の55.5%,女性の39.6%が高血圧症有病者(収縮期血圧140 mmHg以上,または拡張期血圧90 mmHg以上,もしくは血圧を下げる薬を服用している者)であるとも報告されており,我が国における高血圧者数が約4300万人にのぼると算出される。また,「薬の服用状況」の調査報告では,使用あり(1つ以上)とした者のうち,「血圧を下げる薬」と回答した者の割合が他の薬〔(脈の乱れを治す薬,インスリン注射又は血糖を下げる薬,コレステロールを下げる薬,中性脂肪(トリグリセライド)を下げる薬)〕と比較して最も高い結果となっている。高血圧症そのものに疾病としての自覚症状はほとんどないものの,虚血性心疾患や脳卒中,腎不全などの循環器疾患の発症リスクとなることから,その予防対策は重要な課題である。高血圧の原因は単一ではなく,遺伝素因に加えて生活習慣などが複雑に絡み合って生じると考えられる。その中で,糖尿病をはじめとする他の生活習慣病と同様に,酸化ストレスの亢進が誘因の一つであることが報告されている1)。
 近年,増加の一途を辿る生活習慣病対策として,食品や健康食品または食品成分の摂取による疾病の発症予防や改善効果を期待した研究が数多くなされ,高血圧に関してもクレソン2)やウコン3),アカザ属植物のキノア4),生コーヒー豆抽出物5),大豆蛋白質由来トリペプチド6)などにその有用性が報告されている。

茶飲料中のカテキン成分の変化とその効能への影響

芳野 恭士

 茶(Camellia sinensis L.)はツバキ科の常緑樹で,その葉が世界中で飲用されている植物である。茶葉には抗癌作用や抗動脈硬化作用,抗炎症作用などの多様な保健作用がみられ1),カフェインや各種ビタミン類,サポニンなどの種々の保健成分が含まれている。中でも含量の多い保健成分として,カテキンが知られている2)。カテキンは乾燥茶葉中に約15%含まれており3),その半分は(-)-エピガロカテキン-3-O-ガレート(EGCG)である。カテキンの化学構造中には疎水性と親水性の部位があり,また,多くのフェノール性水酸基が含まれていることから,様々なタンパク質との相互作用や抗酸化作用といった保健作用を示す。ところで,近年,従来の飲茶の習慣に加え,PETボトルや缶に詰めた緑茶,ウーロン茶,紅茶などの飲料が普及している(図1)4)。茶を発酵させたり,加工や貯蔵などを行うと,カテキンは変化することが知られている。その際,茶の保健機能がどのように変化するのかについて,これまで得られている知見を以下に紹介する。

「シソエキス」− 北海道産アオジソを原料とした抗アレルギー食品素材 −

前田 哲宏,高成 準

 免疫は我々の身体を防御してくれる重要かつ不可欠なシステムであるが,特定の抗原(アレルゲン)に対して過剰に反応し,炎症が生じてしまう場合がある。この炎症反応がアレルギーと呼ばれるものであり,埃や花粉,金属,食品がアレルゲンとなるケースが多い。症状としては,鼻水,鼻づまり,目のかゆみ,皮膚炎が多く,場合によっては全身性の炎症に繋がり命を落とすこともあるため,軽視できない疾患である。
 我々にとって最も身近なアレルギーは花粉症であろう。環境省が2014年1月に改訂した「花粉症環境保健マニュアル」によると,日本人の約3割が花粉症であり,その上,平成10年と平成20年を比較すると花粉症の有病率が10%程度上昇していることから,このアレルギーは現代病であることが覗える。
 アレルギーにより炎症が生じるメカニズムは判明してきている。アレルゲンがマクロファージによって認識されるとヘルパーT細胞,Bリンパ球へとシグナルが伝わり,免疫グロブリン(Ig)Eが産生される。さらに,肥満細胞がそのIgEと結合しアレルゲンを認識するとヒスタミンが放出され腫瘍壊死因子-α(tumor necrosis factor-α, TNF-α)の産出が促される。TNF-αはサイトカインの一種で,その名前の通り固形がんに作用して壊死を生じさせる分子であり,局所に放出後数分以内で他の炎症細胞を活性化し組織障害を引き起こす1)。この組織障害がアレルギー症状に結びついている(図1)。アレルギーの治療薬として使用されるステロイドはTNF-αの過剰産生を抑え込むことで症状を改善する薬である。しかし,一方でそれは免疫力の低下にもつながるため,TNF-αを完全には抑え込まないよう,使用量や使用期間をコントロールする必要があり,ステロイド剤の課題となっている。よって,マイルドにTNF-α産生を抑える素材が求められている。
 我々は抗アレルギー効果を示す食品の研究を進める中で,抗炎症作用を示すことが知られているシソに着目した。シソ(Perilla frutescence var. crispa)は古来,日本でなじみの食品である。漢方薬としても利用されており,健胃,鎮咳,鎮静,発汗等を目的として柴朴湯,半夏厚朴湯,香蘇散等に処方されている2)。我々はシソ抽出物がTNF-σの産生を抑制し抗アレルギー作用を示すことを明らかにし,その製品化を行った。本稿ではその製品である「シソエキス」の紹介をするとともに,その成分,機能についても報告する。

健康食品のエビデンス 第4回 ルテイン

濱舘 直史

 ルテインと聞いてあまりピンとこない方もいらっしゃるかと思いますが,ルテインは,ホウレンソウ,ケール,トウモロコシ,ブロッコリーなどの緑黄色野菜や卵黄に多く含まれており,日常の食生活の中で摂取している栄養素です。またルテインは,からだによい作用をもつことがよく知られているニンジンのβ-カロテンやトマトのリコピンと同じカロテノイドに分類される黄色の色素です。このルテインはヒトのからだの中ではつくることができないので,食事から摂取する必要があります。ヒトのからだの中でルテインは,黄斑という視機能に大切な役割を果たす眼の網膜中心部分にある最も視細胞が密に存在している部分に多く分布しています。黄斑は集中的に光を受けることによる強い酸化ストレスにさらされますが,ルテインにはこの黄斑を強い酸化ストレスから保護する役割があるといわれています。ルテインは植物の中では,光合成のための集光,光酸化による障害に対する保護,過剰な光エネルギーの消散といった役割を担っていると考えられていますが,ヒトはこのルテインを食事として植物から摂取することで,光による障害から身を守っていると考えることができます。このようなことを考えますと,日常の食生活の中で野菜を摂取することの重要性について,より強く実感することができるのではないでしょうか。近年では,「眼を保護する」ことを目的としてルテインを含んだソフトカプセル状のサプリメントが多く市場みられるようになりました。これらのサプリメントに含まれているルテインには,マリーゴールドという黄色い花由来のものが多く使用されています。マリーゴールドは,メキシコ原産のキク科コウオウソウ属のうち,草花として栽培される植物の総称で,その名前は「聖母マリアの黄金」を意味するといわれています。

脂溶性機能成分の可溶化と腸管吸収 − カロテノイドの吸収促進 −

小竹 英一

 食品に含まれる脂溶性栄養・機能成分として,ビタミンA,D,E,K,カロテノイド,CoQ10,クルクミノイド等が知られている。カロテノイドは微生物や植物により生合成される脂溶性の色素で,天然には700種類以上知られており,その多様な生物活性(抗酸化,抗がん,抗肥満作用等)が注目されている。しかしながら,一般的にカロテノイドの生体利用性はビタミンEなどに比べて低く,その中にはヒト組織中にほとんど見出されないものもある。生体利用性とは簡単に言えば,「摂取したうち,どれだけ体内に吸収されて作用部位に到達したか」である。野菜を生で食べてもカロテノイドはほとんど体内に吸収されないと考えられる。葉物野菜などは特に細胞壁が硬く,これを破壊してカロテノイドが遊離しなければ消化管での吸収は不可能である。この点,卵黄のような動物性由来の食品ではそのような問題は起こらない。一般に野菜を油でいためるとカロテノイドの吸収は良くなるといわれるが,その理由として加熱により細胞壁が破壊される,カロテノイドが油脂に溶解し腸管に吸収される形態(混合ミセル)になりやすくなる,といったことが考えられる。ただし,混合ミセルとなったカロテノイドの全て(の量,種類)が腸管から吸収されるわけではなく,そのメカニズムの詳細はわかっていない。
 体内蓄積については,ヒトは通常の食事下では約40種類ものカロテノイドを摂取しているが,図1中のα-carotene,β-carotene,lycopene,phytoene,phytofluene,ζ-carotene,β-cryptoxanthin,lutein,zeaxanthin,そしてこれらのカロテノイド由来と考えられる代謝産物だけがヒト血液中や母乳中に存在している1, 2)。例えば,violaxanthinと9'-cis-neoxanthinは葉物野菜に多く含まれるキサントフィルであり,luteinと一緒に摂取されるが,前者2つはヒト血液中に見出されていない1)。このような特定のカロテノイドのみが血液中に存在する理由についても,よくわかっていないが,消化管内に選択的な吸収機構が存在するのかもしれない。また,カロテノイドの蓄積は,吸収後の代謝変換機構によっても調節される。代謝の代表例として,哺乳類において プロビタミンAカロテノイド(β-carotene,α-carotene,β-cryptoxanthin)からのビタミンAへの変換はよく知られている。キサントフィルの代謝産物については,我々が最近報告しているものの3),代謝酵素の詳細について等まだ不明な点が多い。生体利用性は可溶化・腸管吸収・蓄積・代謝に依存するが,これらを正確に把握することは,カロテノイドの生物活性メカニズムを考える上で重要である(図2)。これらのうち,本稿では可溶化・腸管吸収向上に関する知見を紹介する。なお,ここでの「腸管吸収」は「細胞による取込み」と「(リンパへの)透過/分泌」の両方の過程を含む。

米デンプン分解酵素の分布と美味しさとは?
Do behaviors of starch degrading enzymes affect eating quality of cooked rice?

大倉 哲也

Abstract
Rice is an important staple food in Japan. Diverse rice cultivars are grown for various usages (cooked rice, rice ball, glutinous rice cake, and sake brewing) all over the countries. Glucose and reducing sugars, which are mainly produced during rice cooking by starch degrading enzymes, likely contribute to eating quality of the cooked rice through taste and luster of the grain surface. Although the reducing sugar amount changes during rice cooking have been quantitatively analyzed in some cultivars, it has not been well known where each starch degrading enzyme localizes in rice grains of various cultivars. We investigated the localization of starch degrading enzymes in brown rice of Koshihikari, Nipponbare and Habutaemochi and their elution behaviors during rice cooking. I propose that the cultivar specific behaviors of starch degrading enzymes may lead us to understand which cooking condition is the best for each cultivar.


 米(Oryza sativa)は日本人の食生活を特徴づける重要な食品である。日本で作付けされている米の9割以上は粳米で,飯米・おにぎり・すし米などその用途に適したさまざまな品種(コシヒカリ,ミルキークィーン,日本晴など)が植えられている。粳米が搗精・浸漬後炊飯器で炊かれるのに対し,酒造好適米(山田錦など)や糯米(羽二重糯など)は搗精・低温浸漬後に蒸して利用され,ジャスミンライスは茹で水を捨ててから新しい水を加えて蒸し煮する。このように用途によって浸たし・炊き・蒸す方法が異なることについては現象論的な解析は行われてきたが,分子レベルでの解析はあまり進んでいない。
 米飯の食味は,硬さや粘りといった物理的要因や,甘み・うまみなどの化学的成分が,関与して決定され,これが炊飯方法による影響を受けることはよく知られた事実である1-3)。米に適量の水を加えて加熱すると米デンプンが糊化されて柔らかくなり,食べやすい状態に変わる。この一連の調理工程が炊飯であり,洗米・加水・浸漬・加熱・蒸らしという段階を経て行われる。炊飯後期の加熱(沸騰期)・蒸らし過程では,飯粒への水の吸収と同時に,一度溶出した成分の大部分が米粒に吸収される。しかし,飯粒表層部には粒内に吸収されなかった成分,主として糖質が糊状物質となって付着し,飯粒表面の粘りや「つや」などに影響を与えている4)。米飯の「美味しさ」は,飯粒表層部にある細胞の適度な崩れと上述の濃厚な糊状物質(おねば )と関連が大きいことが報告されている5, 6)。しかしながら,オリゴ糖・グルコースを含めた糖質が,どのデンプン分解酵素により何時何処で生成するかについては,各酵素に対する特異的な抗体が少ないことなども原因で解析が進んでおらず,品種間で生成する還元糖量に違いが生じる要因も不明な点が多い。
 我々は,加工法や用途が異なる品種では,デンプン分解酵素の種類や分布が異なっているのではないかという仮説を立て,これらの解析を進めることとした。

もち小麦「餅」の2つの機能性 − 食べやすさと食後の血糖値GI −

藤田 修三,三瓶 龍一,幾田 実希,戸原 玄

 豪州小麦ASWに対抗する国産低アミロース小麦の品種開発過程において,もち小麦は,世界に先駆けて創出された1)。もち小麦はデンプンの殆どがアミロペクチンからなり,わずかにアミロースが残る。またグルテン形成タンパク質を有しているので,ライ麦を除き,他の穀物にはみられない麺帯(ドウ)を形成し,麺帯を茹でるとソフトなモチモチ感と,うどんやパスタのなめらかな麺の食感が同時に味わえる。また,焼く,揚げると大きな膨張性を示し,あられのような軽い,食べやすい食感が得られる。もち小麦の創出以来,20年が経過したが,開発当初は農水省モチ性小麦の生産・利用技術実用化事業として,基礎研究および和洋中食材への加工適性が検討された。澱粉を研究していた著者も,遺伝的に6倍体の普通小麦には,モチ性品種の育種は不可能とされていたなかでの創出であり,強い好奇心をもち,また日本人好みの餅製品に利用すれば,大量に流通する麺,麺皮等に充分応用できると考えて加工適性の研究を始めた。そこで,餅製品の開発を加工業者に提案したが門前払いを喰った苦い経験がある。今から思えば,アワ餅やキビ団子の類似品を作る,あるいは邪道な餅を作るという感じの提案であり,コンセプトの貧困さからインパクトに欠けていたと反省している。
 そして,時を経て,わが国の少子高齢社会への構造変化がより鮮明となるなか,国民全体とりわけ高齢者のQOL向上による健康増進にスポットライトが当てられるようになった。保健医療福祉系大学に着任して以降,改めて保健医療福祉からのアプローチ,健康増進へのもち小麦餅の食べやすさの活用を念頭に研究を進めてきた。健常な成人を対象にシェッフェの一対比較法により,もち小麦餅と普通餅との比較食味試験を実施したところ,もち小麦餅の咀嚼性,嚥下性が良好との結果であった2)。第16回日本摂食・嚥下リハビリテーション学会学術大会(2010)参加者による試食アンケート調査においても同様の結果が得られた2)。そこで,何故もち小麦餅は食べやすいのかについて,摂食および嚥下機能面から研究を進めた。
 一方,食事をすればデンプン,糖質が消化吸収されて血糖値が上昇する。Jenkinsらは,臨床研究から食べる食品の種類が食後の血糖値の上昇に影響することを報告した3)。そして,食品の糖質50グラムを摂取した際の血糖値上昇の程度を,ブドウ糖を100とした場合の相対値で表したグリセミックインデックス(以下,GIと略す)の概念が生まれた。GI分析により,中華麺,パスタ等,小麦特有のグルテンを形成する食品は,血糖値上昇を穏やかにすることも示された。もち小麦餅はグルテンが形成された塊状食品であり,麺類とは異なり消化吸収の予想が難しいためGI測定に興味がもたれた。
 以上のことより,ここではもち小麦「餅」の食品機能性に絞り,通常のもち米餅と比較しながら,もち小麦餅のふたつの機能,すなわち,なぜ食べやすいのか,また食後の血糖値上昇への影響について研究したので報告する。

濡れ時間を指標としたかび毒蓄積リスクの評価

黒瀬 義孝

 小麦の登熟期間が高温多湿で梅雨と重なる日本では,赤かび病は小麦の最重要病害である。図1は赤かび病に罹病した小麦である。赤かび病は収量を低下させるだけでなく,小麦粒中にかび毒を蓄積させる。最近の研究から,低濃度であってもかび毒を長期間摂取し続けると成長抑制や免疫力低下などが引き起こされることが明らかとなった。小麦はパンや麺などの主原料であり,日常的に食べられる食材である。このため,かび毒に対する規制が強化されるようになった。
 日本では厚生労働省が2002 年に小麦のかび毒(デオキシニバレノール;DON)濃度を1.1 ppm 以下とする暫定基準を設け,この基準を超えた小麦は流通できなくなった。さらに,農林水産省は2003 年産の小麦から赤かび粒の混入率を0.049 %以下とする基準を設け,この基準を超えた小麦は規格外となる。2002 年産までの基準は1.0 %以下であったことから,2003 年産から検査基準が非常に厳しくなった。このため,小麦の産地では赤かび病対策の徹底が求められた。
 小麦が赤かび病に最も感染しやすい時期は開花期であり,赤かび病対策は開花期における薬剤防除が基本となり,さらに追加防除が行われる。薬剤防除は重要な対策技術であり,防除薬剤の選定1)や防除適期である開花期を気象データから予測する技術が開発されている2)。一方,追加防除の要否判定に不可欠なかび毒の蓄積に関する知見は,Yoshida and Nakajima3)が登熟後半にかび毒が大幅に増加することを示している。また,Yoshida et al.4)は開花20日後の追加防除がかび毒蓄積の低減に効果的であることを示している。しかし,かび毒蓄積と関係が深いとされる濡れとの関係で調査した事例は見当たらない。ここでは,赤かび病感染後の濡れ時間とかび毒蓄積との関係を調査し,濡れ時間を指標にしたかび毒蓄積リスクの評価を試みたので紹介する。

歴史の潮流と科学的評価
(第4節 健康的なベジタリアン食への提言)(続)

ジョアン・サバテ,訳:山路 明俊

 ナッツは通常,木の実(しばしば,硬い殻に包まれています)かピーナッツ(豆として)に分類されます。脂質含量が多いので,米国人は,一年を通して,控え目ながら(1/2オンス以下/日)ナッツや種子を摂取します。米国人が摂取する脂質の2,3%がナッツによります117)。健康食で注目されている地中海の人は,米国人の2倍のナッツを摂取しています。

A.ナッツと心疾患
 ナッツの摂取回数と冠動脈心疾患(CHD)のリスク低下とが相関していることを多くの疫学調査が何度も報告してきました。例えば,アドベンチスト健康調査では,ナッツを1~4回/週摂取する人(ほとんどがアーモンドとくるみで,ピーナッツは少量)は,1回以下/週の人に比べCHDリスクが25%低下し,5回かそれ以上/週摂取する人は,50%低下しました118)。カリフォルニアのアフリカ系米国人の9年間の追跡調査では,ナッツを良く摂取する人の死亡率はあまり摂取しない人より44%低い値でした119)。アイオワの女性健康調査では,ナッツを最も豊富に摂取する人は,全く摂取しない人に比べ,60%のCHDリスクでした120)。Nurse's Health Study では,5回かそれ以上/週ナッツを摂取する女性は,1回以下/月に人に比べ,致死的CHDリスクが39%低く,非致死的心筋梗塞は32%低い値でした121)。

“薬膳”の知恵(85)

荒 勝俊

 日本に禅宗(臨済宗)を広め,京都最古の禅寺“建仁寺”を開創し禅宗を日本国内に広めた栄西禅師は,茶を日本に広めた人物でもある。約800年前の西暦1191年,佐賀県脊振村にある霊仙寺内の石上坊の庭に,中国の宋から持ち帰った茶木を蒔いたとされ,その後茶を飲用する技法が広がったとも言われている。
 我が国に茶の種が伝わったのは奈良時代(行基法師が唐から持ち帰った)と言われており,栄西禅師が茶木を持ち帰る以前から上流社会において喫茶の風習は存在した。栄西禅師は,中国から茶木を持ち帰った後,茶種の招来,喫茶の奨励,を推進し,今までごく一部の上流社会だけに限られていた喫茶の文化を広く一般社会にまで拡大した功績が大きい。喫茶の普及と禅宗の伝来とは深い関係がある。禅宗僧侶が集団で修道生活を行う規則(清規)は,既に中国では唐代に確立され,その清規の中に茶礼・点茶・煎茶や茶についての儀式が多くあった。特に座禅の際に行う“茶礼”は,眠気を払う技法として利用され,さらに,茶は保健上から良薬であるといった薬としての効用を有する事から,栄西禅師は日本に禅宗を広める活動の中で,喫茶の奨励を行ったと考えられる。
 高品質の茶栽培の条件として,平均気温が13度以上で寒暖の差が比較的大きく,年間降雨量が1,500mm前後で朝霧に覆われる場所が適地とされている。佐賀県と福岡県の県境に連なる脊振山は中国の山並みを思わせる眺望の素晴らしさがあり,平均気温は16.1度,降水量は1,888.1mmと非常に茶の生産に適した場所であった。
 こうした歴史を知ることで日本独自の茶文化の本質が明確になり,その中から本来の茶の効用が見えてくると考えられる。
 今回は中国から伝来した茶が日本茶として独自の文化を作り上げていく一端を紹介したい。

野山の花 −身近な山野草の食効・薬効−
カラスウリ Trichosanthes cucumeroides (Ser. ) Maxim. (ウリ科 Cucurbitaceae)

白瀧 義明

 夏~秋,野山を歩いていると,人家に近いやぶや垣根などに絡みついているつる性の植物を見かけます。盛夏の日中,開花している花を見ることは,まず,ありませんが,秋になるとピンポン玉より少し大きな楕円球形の赤い瓜のような果実がぶら下がっているのをよく見かけます。これがカラスウリです。

組織の活性化と人材の育成〜
Improving the working environment and nurturing human resources :
−グローバル化が進む世界での組織と人材
Organizations and talented individuals in a globalizing world

大石 隆介

Abstract
Being born as a human in this world is precious, so we should endeavor to live meaningful lives. To be contributors in society, we need to use our abilities fully in order to vitalize the organizations to which we belong. This study analyzes methods for improving work environments in Japanese organizations and cultivating human resources in global society.

 本紙2015年4月号において,明海大学の坂上宏先生は次のような問いかけをされている。「この世に生を受けたことは大変尊い。我々は人生に真剣に取り組まなければならない。どのようにしたら,自己の能力を最大限に伸ばし,社会に貢献でき,そして満足の行く人生を送ることができるだろうか?」1)今回筆者は,この坂上先生の問いかけを受け,“組織の活性化と人材の育成”を,グローバル社会における組織や人材のあり方に焦点を当てて考察したい。