New Food Industry 2014年3月号

IMG_0047.JPG

New Food Industry 2014年 3月号

肥満,糖尿病そして骨粗鬆症:
機能性食因子によるBiomedical Osteoporosis Treatment

Obesity, Diabetes and Osteoporosis:
Biomedical Treatment with Functional Food Factors

山口 正義

 米国においては,2020年には50歳以上の人々の半数が骨粗鬆症あるいは低骨量を示すことが予想されており,その予防と治療のための薬剤(medications)の使用は増加の一途をたどることが2002年に報告された 1)。その後,この予想は現実になっている。多額の医療費がその対策のために必要となりつつあることは大きな社会的問題として取りあげられている。
 骨粗鬆症は肥満,糖尿病,炎症によっても引き起こされ,さらに,がん細胞の骨転移による骨破壊なども含めると,これらの骨疾患は臨床医学領域において古くて新しい重要な課題になっている 2)。
 本稿においては,米国で社会的関心が高まっている肥満および糖尿病と関連した骨粗鬆症について注目し,その細胞連関と機能性食因子(サプリメント)による予防と修復の重要性について,問題提起したい。最近,筆者は,このような機能性食因子(サプリメント)による骨粗鬆症の予防および治療を「Biomedical Osteoporosis Treatment」と称した 3)。

ビーポーレン,ローヤルゼリーのBacillus subtilis nattoによる発酵
―循環改善,骨疾患予防剤の開発―

須見 洋行、今井 雅敏、内藤 佐和、矢田貝 智恵子、大杉 忠則、柳澤 泰任、吉田 悦男、丸山 眞杉

Bacillus subtilis nattoは日本の伝統発酵食品である“納豆”製造用に用いられている微生物であるが,その中に強力な血栓溶解酵素(ナットウキナーゼ)を持つこと1, 2),ナットウキナーゼは経口化でも効くことから血栓症予防食品として開発されている3-5)。また,パンや各種発酵食品6, 7)への応用も試みられている。ビーポーレンやローヤルゼリーはミツバチが介在して作り出される天然物質であり,ビーポーレンは各種の動物実験で花粉食品の摂取による発育促進・体力増強などが確認されている。また,花粉の生理活性としては,造血作用があり赤血球を増加させる,整腸作用,食欲増進,疲労回復,精力増進,更年期障害の改善,前立腺肥大の予防と炎症抑制など種々報告されている。また,ドイツの連邦保健省ではビーポーレンを使用した医薬品を公式に認めている8)。花粉症に対する効果について「奇跡の食品」9)には,アメリカでも花粉症人口は全体の約5分の1に達しており,今のところ,アレルギーを治してくれる唯一のものが,ビーポーレンだとも記されている。
 一方,ローヤルゼリーは王乳と呼ばれ女王蜂育成におけるメカニズムや驚異的な生命力を思わせる現象があり,古くから滋養強壮的な面で知られており,研究発表も多い10, 11)。
 酵素処理ローヤルゼリーについては,カルシウム吸収促進作用12),抗腫瘍効果13),血管血流量増加作用12),血糖値低下作用15),抗疲労活性16)といった報告がある。
 今回,Bacillus subtilis nattoによる発酵処理に,ビーポーレンあるいはローヤルゼリーを添加することで,新たな機能性価値を付与することが可能であることを明らかにした。
お詫びと訂正:本文中μgのμが当方の最終データ出力の際に反映せずに印刷されてしまい、データに大きな誤りが起きてしまいました。ここにお詫びすると共に前ページの本論文のPDFをダウンロードしてください。ダウンロードはこちら

コラーゲンペプチドとプロピオン酸菌による乳清発酵物を組み合わせた食品摂取による肌質改善効果および整腸作用に関する検討
―二重盲検比較試験― 

窪田 大、近山 純乃、川手 雄二

 便秘傾向で,肌の乾燥を自覚している成人女性84名を対象に,魚由来コラーゲンペプチド5,000 mgとプロピオン酸菌による乳清発酵物を組み合わせた食品を摂取した時の肌質改善と整腸効果および安全性について試験を行った。
 試験は,プラセボ食品を対照として二重盲検並行群間比較試験により検討した。試験食品を8週間経口摂取させ,肌の水分量測定および排便状況(排便回数,便状況等)調査を実施した。
 結果は,被験食品群で,摂取開始前と比較して摂取4週目から角層水分量の減少抑制が認められた。一方,プラセボ食品群で有意な角層水分量減少が認められ,冬季の厳しい乾燥の影響が考えられた。排便回数に関しても,摂取開始前と比較して,摂取4週目から有意な改善が認められた。便の状態も「形状」「色」共に改善が確認され,整腸作用からの美肌作用が示唆される結果が得られた。30歳以上の層別解析では,角層水分量に関して,摂取前後比較に加えて,プラセボ食品群との比較でも,摂取8週目に有意な改善が認められた。排便回数に関しては,摂取開始前と比較して,摂取4週目から有意な改善が確認され,プラセボ食品群と比較して,摂取8週後に改善傾向が認められた。
 安全性に関して,被験食品群で,試験責任医師により「関連あり」もしくは「多分関連あり」と判定された有害事象が3件発生したが,いずれも一般食品でも起こり得る軽度な消化器症状(膨満感,放屁,腹鳴)であり,処置なしで早期に回復していることから,安全性に問題ないと判断された。
 以上のことから,魚由来コラーゲンペプチドとプロピオン酸菌による乳清発酵物を組み合わせた食品を8週間摂取することにより,安全に,女性の肌質改善および整腸作用が促進されることが示唆された。

ウンシュウミカン果実におけるβ-クリプトキサンチンの集積機構と高含有化技術

加藤 雅也

 カロテノイドは,自然界に700種類以上も存在する色素群の総称である。私達の食生活の中では,ニンジンやカボチャに含まれる橙色のβ-カロテン,トマトやスイカに含まれる赤色のリコペン,青菜などに含まれるルテイン,そしてウンシュウミカンに含まれるβ-クリプトキサンチンなど様々なカロテノイドが存在している。このカロテノイドは,炭化水素骨格からなるカロテン(β-カロテンやリコペンなど)と含酸素カロテノイドであるキサントフィル(ルテインやβ-クリプトキサンチンなど)の2つのグループに大きく分けることができる。
 ウンシュウミカンの砂じょう(果肉部分)には,多量のβ-クリプトキサンチンが含まれる。β-クリプトキサンチンは,カロテノイドの一種であり,橙色を呈する。このβ-クリプトキサンチンは,ビタミンAの前駆体として働くこと,また,近年,抗酸化成分として発ガン抑制作用や骨粗しょう症などの生活習慣病の予防1, 2)に役立つことが明らかとなってきている。
 カンキツ果実は,キサントフィルを豊富に含有し,カンキツ属の種間においてキサントフィル含量・組成において非常に多様である。中でも,カロテノイド含量・組成において大きく差が認められるウンシュウミカン(β-クリプトキサンチンを蓄積する種),バレンシアオレンジ(ビオラキサンチンを蓄積する種)およびリスボンレモン(カロテノイド含量が少ない種)を研究材料として,カロテノイド生合成・分解に関わる遺伝子の発現を比較することにより,β-クリプトキサンチンの集積機構を解明する研究に取り組んできた3-5)。また,ウンシュウミカンにおけるβ-クリプトキサンチン含量を調節する種々の要因を,培養した砂じょうを用いて調査6)し,果実にβ-クリプトキサンチンを高含有化する技術7)についても研究を進めている。

植物の香り成分による空気質の改善

大平 辰朗

 地球上には,太古の昔から生物が生産する自然物質や近代文明化に伴って人類が人工的に作り出した合成物質など様々な化学物質が存在している。特に人工的に合成された物質は化学産業が発展する中で建築材料や家庭用品等の原料とし大量に使用されるようになり,我々の生活水準の向上に大きく貢献している。しかしその反面,人間に対するマイナス面も浮上している。例えば自動車の排出する排気ガスや工場排煙,建材等から発生する室内空気汚染物質が原因と考えられる空気汚染問題が急激に増加している。問題視されている有害物質の指針値(例えば厚生労働省が定めるもの)は数ppm程度と極めて微量ですが,日常生活を通して暴露(経皮,吸入,経口暴露)され続けている状態が継続されると,物質の存在量が微量であっても,空気の摂取量全体を考慮した場合,健康影響を問題視する必要があります1)。ヒトが1日24時間に呼吸として体内に取り入れている空気の量は約20 m3で,重さにすると約24 kgに相当し,一方で一日に人間が摂取する水の量は個人差はありますが,通常約2 Lで,重さにすると2 kgに相当します。したがって空気は水に比べ,体積で1万倍,重さで10倍も多く摂取しています(図1) 2)。そのため,空気汚染の問題は特に重要視されており,それらの濃度の低減化策が重要になっています。このような背景の中,様々な技術開発が進められ,例えば高性能な吸着剤などが開発されてきている。しかしながら,これらの方法はフィルター形式の静的な方式であるため,吸着効率には限界があります。そこで注目されているのが環境中で除去効率の高い物質と汚染物質とを反応させ除去する動的な方式である。この方式は空間で汚染物質を積極的に除去できるため,効率が極めて高くなります。我々はこの方式に用いる物質の候補として植物の産する香り成分に着目しました。香り成分の機能というとアロマセラピーなど癒やし効果が連想されますが,この機能以外に抗菌,防虫性,悪臭・有害物質の除去活性についても優れた成分が見出されています3)。このような香り成分を活用することで,人の生活環境において,有害あるいは不快と感じるものが浄化されると同時に癒やし効果の高い空気に改善でき,結果的に総合的な空気の質の改善につながるのではと考えられます。本稿では樹木の香り成分による環境汚染物質の浄化作用の他,香り成分の有する癒し効果等の快適環境創造効果を中心に研究例を紹介する。

アミノ酸サプリメントの摂取が成人女性の免疫機能へおよぼす影響
The immunostimulating effects of amino acid supplement in healthy humans.

村井 信夫、山下 慎一郎、鈴木 直子、髙良 毅

要 旨
 本試験は,アミノ酸サプリメントが免疫機能におよぼす影響を検討した。日頃から疲れやすいと感じている,BMI25以上の成人女性9名を試験参加者とした。試験参加者はアミノ酸サプリメントを1日3包,8週間継続摂取した。主たるエンドポイントを免疫機能,副次的エンドポイントを自覚症状とした。摂取前と摂取8週後に来院検査を行った。全ての試験参加者が試験を完遂したため,9名全員を分析対象者とした。8週間の摂取の結果,Tリンパ球年齢が有意に低下した (p = 0.023)。また,CD8+CD28+T細胞数が有意に増加した (p = 0.030)。自覚症状では「肌に潤いを感じる」で有意な改善が認められ (p = 0.040),「一晩休めば疲れは取れる」で改善の傾向が認められた (p = 0.065)。以上より,アミノ酸サプリメントの摂取が,T細胞系の免疫機能を改善する可能性が示唆された。

Summary
We investigated the immunostimulating effects of amino acid supplement in humans. Participants were nine female volunteers who felt daily fatigue and whose BMIs were more than 25. Participants took 3 packs of amino acid supplement per day for 8 weeks. The primary endpoints were immunological function;secondary endpoints were subjective symptoms. We conducted Visiting investigations at the before starting ingestion(0w)and 8 weeks(8w)after starting ingestion, and investigated the immunological function and subjective symptoms. All nine participants completed the trial and were statistically analyzed. After 8 weeks ingestion, T-lymphocyte age decreased significantly(p = 0.023), and the number of CD8+CD28+ T cells increased significantly(p = 0.030). In the subjective symptoms questionnaire “I feel moisture in my skin” improved significantly(p = 0.040), and “I feel refreshed enough to sleep at night” improved with marginal significance(p = 0.065). These results suggest that amino acid supplement might improve immunological function in adult females.

腸内細菌代謝産物によるインスリン誘導性遺伝子の発現制御

羽石 歩美、高木 勝広、浅野 公介、山田 一哉

要旨
生活習慣病の1種である糖尿病の患者数とその予備軍の増加は,日本はもとより世界各国で問題となっている。糖尿病は,生体内で唯一の血糖低下ホルモンであるインスリンの作用不足により生じる。私どもは,インスリンにより肝臓で発現が誘導され,血糖上昇に関わる糖新生系酵素であるホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ遺伝子の発現を低下させる転写因子として SHARP-2 を同定した。一方,近年,糖尿病も含めて腸内細菌叢と健康・疾患の関連性が話題となっているが,私どもは,大豆イソフラボンの一種であるダイゼインの腸内細菌代謝産物である (S)-エクオールが,SHARP-2遺伝子の発現を増加させることを見いだした。
 本稿では, (S)-エクオールによるSHARP-2遺伝子の発現誘導とその作用メカニズムについて紹介する。

ベジタリアン栄養学
歴史の潮流と科学的評価(第2節 ベジタリアン食と慢性疾患予防)

ジョアン・サバテ(Joan Sabate)、訳:山路 明俊

 肉の量が少ない食事をしているので,長生きであると言われる集団に対し,歴史的に,数多く論評されてきました1-17)。肉の少ない食事は,ある地理的に孤立した地方の人々に共通なものとして言われてきました。それは,ヒマラヤのフンザ,エクアドルのビルカバンバ,トルコの山岳民族,ロシアのコ-カサスで,70歳をかなり超える寿命を延長させる可能性を高める年齢と報告されています1-7)。よく知られているベジタリアンの食事ガイドには,エネルギーの主要供給源が肉から構成されている8),およそ40歳の寿命のアフリカのマサイ,エスキモー,グリーンランド人,ラプランド人,ロシアのキルギスという地方の人々(テクノロジーのレベルで)の実態が,質的な面で比較されています。19世紀後半にかけて,ケンブリッジの外科の教授であるG.M.Humphryは,少なくても90歳である患者が900人いて,殆どが肉は少食であることに注目しました9)。

“地域密着でキラリと光る企業”
自然と,技術と,伝統の融合をめざす『太子食品工業株式会社』

田形 睆作

 豆腐や納豆,油揚げは,日本の代表的な伝統食品であり,今の「食」を取り巻く環境からは想像もできない質素な時代から,日本の食卓を支えてきた食品である。しかし,伝統とは,昔からの様式や技術を守るだけではない。時代に合った新しい工夫や発見が加わって,次の伝統を生んできた。太子食品工業株式会社(以後はタイシと略す)も同じである。体に良くて,安全でおいしそう,そういった昔ながらの味わいは大切にしているが,時代のニーズに応える発想を次々と形にしてきた。それらは,水と緑に恵まれたタイシの工場の,近代的な設備で製品化されて,毎日の食事の一品として食卓に上がっている。創業以来の伝統と,自然なおいしさにこだわる環境,そして革新の技術。その三角点の頂点をタイシはめざしている。今回は太子食品工業株式会社工藤茂雄社長から会社の歴史,会社のあり方,商品開発の考え方など多くの話をお聞かせていただいた。

“薬膳”の知恵(83)

荒 勝俊

“鬱”とは《滞って通じない》という意味を有し, “鬱証”は情志憂鬱により気機が鬱滞しておこる病証で,現代ストレス社会において非常に深刻な社会問題となっている。主な症状は抑鬱感,情緒不安定,喉の異物感,怒りっぼい,よく泣く,不眠などがあげられる。気鬱の状態が長期間続くと,血の循環や津液の代謝にまで影響を及ぼし,多種の病証に変化する可能性がある。
 憂鬱な気分は誰しもが経験する事で,辛い経験によって一時的に気分が大きく落ち込んだり,悲しみに沈んだりする。しかし,通常は一時的なもので,時間と共に徐々に心の中が晴れ,いつの間にか元気を取り戻すことができる。しかし,“鬱証”においては,気分の落ち込みが際限なく続き,その程度もかなり強い。
 中医学において,“鬱証”はストレスや七情(喜・怒・憂・思・悲・恐・驚)の過度の変化により気の流れが鬱滞して起こると考えられている。
 中医学では人体を一つの有機的統一体と考え,人体の構成要素である気・血・津液のバランスを改善させる事でその人が本来もっている臓器の機能を回復させ,身体の内部を整え,新陳代謝を改善し,食生活を正常化する事で改善できると考えており,“鬱証”予防にもつながる考え方である。
 中医学の基礎概念である陰陽五行学説に基づき,健康管理や病気治療のために食材の持つ様々な機能を組み合わせて作った“薬膳”により,人が本来もっている臓器の機能を回復させ,身体の内部を整える事で“鬱証”に対する予防ができると考えている。

築地市場魚貝辞典(めぬけ)

山田 和彦

 昨今のニュースを見ていると,どうもきな臭い話ばかりである。もちろん,自分は本や体験された方の話しか知らないのであるが,今の流れが戦前と似たようになっているという。季節の冬は寒いがなくてはならないし,またそれなりに楽しみもあるが,冬の時代はごめん被りたい。関東大震災の後に日本橋から移転した築地市場も,2015年には豊洲への移転が本決まりになった。戦禍もくぐり抜けてきた築地市場も,見納めまで残された時間が少なくなってきた。ふと見上げた古めかしい天井の梁も,冬を経験するのはあと1回ということになるのだろうか。
 今回も冬の魚,「めぬけ」を紹介する。「めぬけ」には複数の魚種が含まれているので,メヌケ類全体を表すときは「めぬけ」,ここの種類を表すときはその魚種の標準和名(図鑑でも使われる全国共通の和名)を使うことにする。