New Food Industry 2014年 1月号

肥満に対する非対面式減量支援プログラムの効果
−フォーミュラ食・遺伝子検査・サプリメントを組み合わせた
「DHCダイエットアワード2013」報告−

蒲原 聖可、玉川 真由美、今高 優佳、須永 春奈

肥満に対する食事療法の一つとして,良質のタンパク質を含む低エネルギーのフォーミュラ食(置き換え食,代替食)が用いられており,一定の減量効果が示されてきた1-3)。また,肥満関連遺伝子変異の検索により,個人の体質に応じた肥満治療の可能性が報告されている1, 2, 4)。さらに,機能性食品素材・サプリメントを補完的に用いた減量効果も注目されるようになった。近年では,インターネットを活用した非対面式介入法による減量サポートの効果が散見される5)。私共は,医療有資格者による非対面式ダイエット支援プログラムを構築し,フォーミュラ食(置き換え食)による食事療法を中心に,肥満関連遺伝子変異検査および機能性食品素材を併用し,インターネットを活用した介入方法の検証を行ってきた6, 7)。今回,減量を希望する549名を対象に,3ヶ月間の非対面式ダイエット支援プログラムを行ったので報告する。

食品の非加熱殺菌技術の新展開
New development of non-thermal sterilization processes

古川 壮一、荻原 博和、森永 康

加熱殺菌の歴史は古く,またその安全性や経済的優位性は広く知られるところである。我が国では,パスツールによるワインの低温殺菌技術の開発に先駆けて,室町時代より清酒の火入れが行われていた。このことは,加熱が品質の維持に貢献することが古くから認識されていたことを示している。しかしながら,実際には加熱に適しない食品も多く,缶詰・レトルトなどの高温加熱を要する場合にはオフフレーバー,呈色,栄養価の変化などがもたらされる場合がある。これらのことから,放射線殺菌が承認されていない我国食品産業においては,実用的な非加熱殺菌技術の開発は重要な課題である。我が国では,これまでに多くの非加熱殺菌処理に関する研究がなされてきた。そのなかでも,加圧処理(高静水圧処理や高圧二酸化炭素処理)は広く研究され,その成果の一部は実用化されている。筆者らも高静水圧処理や高圧二酸化炭素処理など,幾つかの非加熱殺菌研究に携わってきた。ここでは,非加熱殺菌処理を,物理的非加熱殺菌処理と化学的非加熱殺菌処理に分け,特に物理的非加熱殺菌処理について,これまでに我々が関与したものを中心に,非加熱殺菌研究の概要を述べ,今後の展望についても考察したいと考えている。

冷凍・解凍したパンドウの遊離液体量と製パン性について

森元 直美

-20℃で1日間,冷凍貯蔵したパンドウを解凍後,製パンした時の製パン性 (パン高(mm)・比容積(cm3/g)) は,コントロール(未冷凍)に比べ大きな低下が観察された。冷凍貯蔵期間を3日,または6日間にしても,さらに大きな製パン性の低下は認められなかった。冷凍・解凍したドウから液体がしみだした。遠心分離 (38,900g,4℃,120分間) によって,パンドウからしみだした液体は,遠沈管を60分間,角度45度に傾斜して集めた。集められた液体量と製パン性との間には高い相関性が認められた。冷凍・解凍したドウ中の液体がしみだす原因を調べた。パンドウ中のイーストと食塩の存在が,この遊離液体量と深くかかわりのあることが示唆された。パンドウの発酵は遊離液体量に大きく影響した。
(本論文において参考文献の追加記載がありました。ダウンロードはこちら

野菜含硫成分の生理機能と腸内動態

宇田 靖

野菜,果実,豆類など植物性食材の摂取が心臓病,がん,糖尿病,認知症など生活習慣病の発症リスクを低減させることが様々なコホート研究や動物実験などによって明らかになってきた。しかし,わが国における野菜の摂取量は特に20〜40歳代の若年世代を中心に大幅な摂取不足1)が明らかになっており,生活習慣病の予防上,野菜摂取量の増大が重要課題とされている2, 3)。
 野菜の健康保持に寄与すると期待される有用成分には,多くの野菜類に共通の食物繊維やアントシアニン,カロテノイドなど色素成分などに加えて,アブラナ科野菜類ではグルコシノレートのミロシナーゼ(β-Thioglucosidase)による分解生成物,すなわち,イソチオシアネートとシアノエピチオアルカンなどアグリコン分解生成物とともにネギ属野菜類に含まれるS-アルキ(ケニ)ル-L-システインスルフォキシドのアリイナーゼ(Alliin lyase)による分解生成物,すなわちS-アルキ(ケニ)ルスルフェン酸から誘導される各種のスルフィド化合物など,含硫化合物の機能性が注目されている4)。しかし,グルコシノレートやS-アルキ(ケニ)ル-L-システインスルフォキシドのような含硫成分前駆体の腸内細菌による分解性や分解生成物の反応性など腸内動態についてはまだ不明な点が多い。以下では,アブラナ科及びネギ属野菜に含まれる含硫化合物の機能性と筆者らの最近の知見を中心に腸内動態について取り上げる。

昆虫食の新たな可能性

井内 良仁

今,「昆虫食」が密かなブームになっているという。インターネットで「昆虫食」で検索をかけてみるとかなりの数のサイトやニュースが目に飛び込んでくる。新聞や雑誌, テレビ番組などでも目にする機会が増えてきた。しかし日本人の大半は, 昆虫を食べると聞くと眉をひそめる人が多いのではないだろうか。やはり昆虫食はゲテモノ料理の一つに過ぎないのか?はたまた人類の救世主となる食料なのか?

健康長寿社会の実現をめざして

田形 睆作

WHOの世界各国の平均寿命調査(2009年)によると,男女では日本は世界で1位であり83歳である。女性は1位で86歳であるが,男性は7位で80歳である。ちなみに男性の1位はサンマリノで82歳である。日本国内での長寿県は男女とも長野県である。長野県と言えば漬物や味噌など塩分が多い食品の摂取量が多く,昭和40年(1965年)には脳卒中ワーストワンの県であった。如何にして,長寿県になったのであろうか。

ベジタリアン栄養学歴史の潮流と科学的評価第2節
(ベジタリアン食と慢性疾患予防)

ジョアン・サバテ(Joan Sabate)、訳:山路 明俊

臨床上の実践に加えて,疫学データは,比較的未精製のベジタリアン食が,慢性疾患の予防に対して顕著に予防効果を示すことを,明確に示唆しています1)。典型的なベジタリアン食は,多くの全粒穀物,豆類,野菜,果物,ナッツや種子を含んでいて,同時に,精製食品や動物性食品が少ないか,除かれています。(表6-1)つまり,雑食とは対照的に,ベジタリアン食の栄養学的組成は,食物繊維が多く,飽和脂肪酸が少ないのです5)。先進国では,過剰なエネルギーと飽和脂肪酸摂取の問題に直面し,慢性の退行性疾患の罹患増加を引き起こしています。骨粗鬆症,糖尿病や神経疾患予防としてのベジタリアン食の予防効果についての明白なデータはそれ程多くはありません。しかし,ここでは,これらの3種の異なる疾病の罹患率に対して,ベジタリアン食を実践した際に想定される役割についての文献を簡潔に要約します。

シロザケ飼料の魚油添加効果-4

大橋 勝彦、酒本 秀一

著者らはシロザケ飼料の魚油添加効果を調べる一連の試験1−4)を行い,以下のことを明らかにした。

・餌付けは油無添加飼料で行うべきである。油添加飼料で餌付けを行うと摂餌性が悪く,その悪影響が可也長期間残る。4,5日間油無添加飼料で餌付けを行った後油添加飼料に切り替えれば良い。
 ・飼料に添加すべき油は魚油で,至適添加量は約7%(飼料の脂質含量は約12%)である。
 ・油添加区の方が無添加区より魚の成長が速く,飼料効率とタンパク質効率も高い。
 ・魚体の脂質含量と脂肪酸組成は飼料の脂質含量と脂肪酸組成を反映する。
 ・魚の絶食耐性や絶食からの回復能力を規定しているのは魚体の脂質含量である。魚体の脂質含量が高い程絶食耐性が強く,絶食からの回復も早い。
 ・魚体の脂質含量が少ない区ほど絶食期間中に死魚数が多く,しかも肥満度が大きい魚も死亡する傾向が認められる。
 ・絶食による大量死が起こる時の魚体成分の目安は脂質が約5%乾物で,タンパク質は約90%乾物である。この時の水分含量は約85%である。
 ・同一グループで餓死魚が出始めるくらいに衰弱してから給餌を再開しても容易に回復しない。既に摂餌できないくらいに衰弱しているか,摂餌しても消化・吸収する能力を失っている魚が相当数いるものと推測する。
 ・30日間絶食させた魚を直接海水に移して8日間飼育したところ,油無添加飼料で飼育した後絶食させた区の死魚数が最も多く,7%魚油添加飼料で飼育後絶食させた区の死魚数が最も少なかった。飼料の脂質含量と絶食期間が魚の海水馴致能力に影響を与えている可能性が有る。
 以上の結果を受け,今回の試験では飼料への魚油添加の有無と絶食がシロザケ幼魚の海水馴致能力に及ぼす影響を中心に調べた。

“地域密着でキラリと光る企業”
仙台名産,笹かまぼこを育てた『株式会社 阿部蒲鉾店』

田形 睆作

『阿部蒲鉾店』は昭和10年(1935年),仙台の新伝馬町で産声をあげた。創業からまもなく80年になる。『阿部蒲鉾店』は伊達の国,仙台・宮城とともに歩んできた。藩政時代からの歴史を礎に,宮城の豊饒を素材に,仙台の発展に歩調をあわせながら歩んできた。創業以来,原料を厳選し,心を込めてつくり,誠意をもって販売するという信条のもと,ただひたすらお客様においしいと喜んでいただけるかまぼこ造りに励んできた。そして今日「木の葉かまぼこ」「ベロかまぼこ」といったいろいろな名称のなかから,創業者阿部秀雄氏が名付けた「仙台名産・笹かまぼこ」は仙台の代表的な名産として広く全国に知られるようになった。