New Food Industry 2013年12月号

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New Food Industry 2013年 12月号

栄養素の消化・吸収機構に関与している体内時計

榊原 啓之、青島 良輝、山崎 隼輔、下位 香代子

我々ヒトを含む生物の体内には,広く“体内時計”が存在しており,遺伝子発現のようなミクロな現象から体温や睡眠/覚醒などのマクロな現象まで,多くの生命現象が約24時間周期のリズム,いわゆる“概日リズム”を刻んでいることが知られている。また,摂取した栄養素や機能性成分が体内で効果を発揮する過程で通過する必要がある消化・吸収・代謝機構にも,一日の中で活性が高い時間帯と低い時間帯が存在している。従って,摂取する時間帯によって栄養素や機能性成分の作用や効果が異なる可能性が示唆されている。本稿では,体内時計について概説するとともに,摂取時刻の違いによって食品成分の作用が異なる可能性を示唆する研究例をいくつか紹介する。

大消化系は体内吸収するサプリメント成分を選ぶ

金沢 和樹

 ヒトの消化系は栄養素とそれ以外の食物成分を選別する。ATP生産の原料になる栄養素の糖質,脂質,タンパク質は体内吸収され,肝臓で処理されて血流で体細胞に分配される。ATP生産に利用できない栄養素以外の成分を非栄養素というが,非栄養素は体細胞に分配されることなく排泄される。例えば脂質過酸化物は消化管で還元されて便に排泄され,体内吸収されない。アミノ酸の加熱分解物などの発がん前駆体は,門脈で肝臓に運ばれ,肝臓で解毒されて尿に排泄される。そこで,サプリメント成分は体内吸収されるのか否かを議論した。

芋焼酎の香りの正体を求めて

髙峯 和則

サツマイモに含まれるモノテルペン配糖体のなかで,ネリル配糖体はサツマイモの中心部に,ゲラニル配糖体,リナリル配糖体およびα-テルピニル配糖体は表皮部に多く分布することがわかった。また,リナリル配糖体とα-テルピニル配糖体は中心部にほとんど存在しなかった。
 ローズオキサイドの閾値は25%アルコールでは0.35 μg/L,芋焼酎では14 μg/Lであった。閾値での評価は「甘い」,「華やか」,「バラ様」であった。ローズオキサイドは一次もろみとサツマイモからは検出されなかった。ローズオキサイドはゲラニオールから酵母の微生物的変換作用により生成したシトロネロールが発酵過程で酸触媒による化学的変換作用によりローズオキサイドに変換し,蒸留工程で変換が促進されることが明らかになった。

人体への寄生虫感染を警戒すべき食材(12)
現代の日本で極度に警戒すべき寄生虫症,旋尾線虫(Spirurina sp)幼虫症の感染源(ノート)

牧 純、関谷 洋志、田邊 知孝、相良 英憲、舟橋 達也、玉井 栄治、坂上 宏

ABSTRACT
Jun Maki1), Hiroshi Sekiya1), Tomotaka Tanabe2), Hidenori Sagara3), Tatsuya Funahashi2), Eiji Tamai1), and Hiroshi Sakagami 4)
1)Department of Infectious Diseases, College of Pharmaceutical Sciences, Matsuyama University; 2) Department of Hygienic Chemistry, College of Pharmaceutical Sciences, Matsuyama University; 3) Division of Pharmaceutical Information Service, Department of Center for Medical Pharmacy Education, College of Pharmaceutical Sciences, Matsuyama University, Ehime Prefecture, JAPAN; 4)Division of Pharmacology, Department of Diagnostic and Therapeutic Sciences, Meikai University School of Dentistry:Food that needs precautionary awareness for infection in human body (12)-

In recent years, some Japanese people have been suffering from a parasitosis caused by a kind of nematodes. The nematode in question is not the well-known anisakis but Spirurina sp so-called “senbi-senchyu”(旋尾線虫)in Japanese. The entire life cycle remains to be clarified still nowadays. However, it is clear that man is infected with it following the ingestion of the raw firefly squid (蛍烏賊), Watasenia scintillans or other fresh seafoods presently being studied as a result of suffering from larval migration in the patient. Though the possible removal of the migrating larvae near the body surface is recommendable, it is hard to practice it completely. No chemotherapy has yet been established . Its development is urgently needed.[key words: Spirurina sp(senbi-senchyu), nematodes, prevention]

要約
 日本国内での寄生虫感染は,ともすると過ぎ去った時代のイメージが強いが,現実は決してそうではない。本論文は,寄生虫の幼虫感染により激しい腹痛や皮膚爬行症をともなう旋尾線虫症に着目する。この寄生線虫の幼虫は1970年代,日本寄生虫学会で発表されたが,同学会員を除いては世間であまり知られていなかった。ヒトはホタルイカ等の生食でその中に寄生している幼虫を取り込んで感染しその幼虫が皮下を這うという事実が広く認識されるようになっても,この成虫が何であるかは全く不明であった。その成虫が寄生する本来の宿主(終宿主)も長い間わからなかった。最近になって,ツチクジラの腎臓内に寄生しているある線虫の成虫がこの親虫であることが判明した。しかし,現在でも中間宿主と終宿主の範囲や感染様式など,その実態は十分には解明されていない。その感染予防のためには,ホタルイカなどの食材に十分に熱を通すか,-30℃,4日間凍結することで防げる。酢に少々浸した程度では感染性は残存している。不幸にして,もしも感染したなら,言うまでもなく早期発見・早期治療が肝要で,そのような魚介類の生食を思い出して直ちに適切な診察を受けることである。皮膚表面より虫体を見つけて摘出することになるが,すべてを取り出すことは難しい。未だに駆虫薬は開発されていない。適切な治療薬の開発は喫緊の課題である。

Dietary silkworm powder reduces blood glucose and visceral fat in mice

TERUKO NAKAMURA,MASATOSHI ICHIDA TAKAHAMA

Abstract
Silkworm powder1) prepared by us based on rheological studies of silkworm blood contains α-glycosidase-inhibitory deoxynojirimycin (DNJ) at a 3-fold higher level than that in mulberry leaves, and it is expected to be a superior health food material. In this study, we investigated the influence of a silkworm powder diet on the blood glucose level and visceral fat in mice. The blood glucose level showed a reduction in both 2 and 5% silkworm powder diet groups on day 20 of ingestion, and the reduction was significant in both groups on day 28. The blood glucose level elevation after glucose loading was also inhibited. At 4 weeks, the visceral fat rate was significantly reduced in the silkworm powder diet groups compared to the control group, suggesting a lipid metabolism-improving effect.

シロザケの天然種苗と人工種苗

酒本 秀一、大橋 勝彦

 現在,日本の河川に回帰して来るシロザケ親魚の大部分は人工種苗由来である。これは回帰して来た親魚を漁獲し,人為的に採卵・採精を行って人工授精し,種苗生産施設内で卵管理を行って孵化させ,配合飼料を与えて一定の大きさになるまで育てた後河川に放流した魚である。一方,率は低いものの人の手が全く加わっていない天然種苗も存在している。
 シロザケに拘らず種苗生産と放流が行われている魚では,天然種苗の方が人工種苗より種苗としての質が高いと云われるのが一般的で,人工種苗の質を天然種苗に近づける努力が続けられている。今後シロザケ人工種苗の質を改善する為にも天然種苗と人工種苗は如何違うのかを明らかにしておく必要が有る。
 本試験では外観,成長,体成分および絶食耐性を中心に天然種苗と人工種苗の違いを調べた。

築地市場魚貝辞典(ホウボウ)

山田 和彦

 今日,魚を見に出かけたら,しばらくぶりに知人と出会った。その彼も魚好きで,しばし魚の話をしたのであるが,「やっぱり野菜より,魚の方がいいよね。野菜は季節感がないもの。いくら冷凍や養殖があるといっても,魚はまだ季節感がある」と言うのである。築地市場を見ていると,南北に細長い日本列島中の魚が集められてくるせいか,地方に比べて一つの魚が出回る期間が長くなる傾向はある。それでも,やはり季節や天候など,自然環境を反映した入荷になっている。自然を忘れがちな都会の中で,自然の大切さを思い起こさせてくれる,という意味でも築地市場は大切な役目を担っているのかもしれない。
今回は冬の魚,ホウボウを紹介する。

“薬膳”の知恵(81)

荒 勝俊

 “痴呆症”は知力の減退を主な特徴とする病証で,高齢化が進んでいる日本において非常に深刻な社会問題となっている。主な症状は記憶・判断・認識などの能力が減退すると共に,性格の変化などもあげられる。
 中医学的見地から,“痴呆症”の発症は肝・心・脾・腎の機能と密切な関係がある。即ち,心脾両虚による痴呆症,腎精不足による痴呆症,痰濁阻竅による痴呆症,於血阻絡による痴呆症,の四つに分類できる。痰濁や淤とは,水分代謝の悪化によって生じた水分の代謝や微小循環の悪化による水の停滞が原因となって体内に生じた病理産物が脳を塞ぐ事によって正常な精神活動が阻害され,“痴呆症”が発症する。従って,養心,補脾,益腎,活血が“痴呆症”改善のポイントとなる。
 中医学では人体を一つの有機的統一体と考え,人体の構成要素である気・血・津液のバランスを改善させる事でその人が本来もっている臓器の機能を回復させ,身体の内部を整え,新陳代謝を改善し,食生活を正常化する事で改善できると考えており,“痴呆症”予防にもつながる考え方である。
 中医学の基礎概念である陰陽五行学説に基づき,健康管理や病気治療のために食材の持つ様々な機能を組み合わせて作った“薬膳”により,人が本来もっている臓器の機能を回復させ,身体の内部を整える事で“痴呆症”に対する予防ができると考えている。

“地域密着でキラリと光る企業”
米菓市場をリードする『亀田製菓株式会社』

田形 睆作

 亀田製菓株式会社は1946年(昭和21年)『亀田郷農民組合委託加工所』として水飴の委託加工を開始した。その4年後の1950年(昭和25年)には次なるステップというべき『亀田町農産加工農業協同組合』に改組させ,従業員も30余名になった。事業内容も水飴加工一辺倒から,米菓,焼き菓子などにまで及んでいた。製造面,販売面においても4年前とは比較にならないほど企業の力を付けてきた。