New Food Industry 2013年9月号

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9月号目次の訂正

弊誌、9月号の目次、「高知県黒潮町の日戻りカツオに関する調査 ―抗疲労物質含量とその効果について―」の著者名に編集ミスがあり、著者の皆様には大変ご迷惑をおかけしました。ここにお詫びをするとともに、今後こういうことのないよう、十分に注意をし、編集作業を進めるようにいたします。
正しい、目次をPDFにしましたのでダウンロードをお願い申し上げます。

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New Food Industry 2013年 9月号

ウィスキーは考えている (1)ニューポットができるまで

古賀 邦正

 「美酒」とは,美しい酒のことではなく,うまい酒のことだ。しかし,うまい酒は美しい。心地よい酔いに浸りながら,美酒を器に注いで眺めていると,その美しさに心惹かれる。そして,それがどうやって生まれてきたのか興味が涌いてくる。心地よい酔いはひとを素直にしてくれる(図1)。
 私は若い頃の一時期,ウイスキー熟成の研究に取り組んだことがある。そのとき初めて,ウイスキーの製造工程が実に複雑で精妙なものであることを知り,驚いた。そして,複雑な製造工程を経た,できたてのウイスキーはそのあと,通常でも10年前後をただひたすら樽の中で眠り続ける。それは全製造期間の99%以上を占める,ばかばかしいほどの時間だ。
 その間にウイスキー品質は驚くほどの変化を遂げる。美しい環境のもとで,長く貯蔵するとウイスキーが美味しく熟成することは分かっているが,その理由のすべてが分かっているわけではない。しかし,ウイスキーの熟成を夢見て,ウイスキーの製造工程で多くの工夫がなされている。また,鋭敏な感覚を研ぎ澄まし,ウイスキーの眠る環境を清潔に保ちながら,その成長を見守る人がいる。
 私はかねがねウイスキーの素晴らしさや面白さをもっと多くの人と共有したいと思っていたが,この度,本誌において,その機会を頂戴したので,3回に分けて紹介させて戴こうと思う。今回は,できたてのウイスキー(ニューポット)誕生までについて紹介する。

おいしいお米「コシヒカリ」の酒

古川 幸子

今,日本酒業界は「日本酒新時代」なのだという。
 平成23酒造年度(平成23年7月1日〜平成24年6月30日)において,清酒製造を行った酒造場は1,260場で,前年度から12場減少している1)。一方で製造数量(アルコール分20度換算数量)は,449,171KLであり,前年度比102.2%で増加している1)。(ちなみに日本酒とは,日本特有の製法で,日本で醸造された酒のことであり,一般的には, 米・米麹・水を主な原料とする清酒を指す。本稿では以下,表現を統一して清酒と表記する。)長らく需要低迷にあった清酒業界であるが,ここにきてようやく,復調の兆しが見え始めている。
 清酒は,自身が持つ古来の伝統に,科学技術の目覚しい進歩や時代の潮流など社会的背景を加味し,着実な進化を遂げてきた。そして今は,広く全国の酒造場で,かつてないほど良質な清酒が醸造される新たな時代を迎えている。原料となる米も,酒造好適米だけではなく,バラエティに富んだ品種・銘柄を各酒造場が工夫して積極的に取り入れるようになっている。その中で,食用米の代表的銘柄米であるコシヒカリから造った「コシヒカリ清酒」が,近年,着実に市場に浸透してきている。

高知県黒潮町の日戻りカツオに関する調査
―抗疲労物質含量とその効果について―

島村 智子、受田 浩之、柏木 丈拡、藤本 浩之

高知県は国内有数のカツオの水揚げ地であると共に,古くから「土佐カツオ一本釣り漁業」で知られる場所でもある。また,平成24年の家計調査によると,高知市の年間のカツオ購入金額9,378円は2位以下の都市の2.5倍以上であった。このことから,高知県はカツオの大消費地であるとも言える1)。
 高知県の西南部に位置する黒潮町は,高知県の中で最も多いカツオ漁獲量を誇る地域である2)。黒潮町は平成21年から高知県の産業振興推進総合支援事業を活用し,「日戻りカツオ」のネームブランドの向上と定着化,カツオの新商品開発などに積極的に取り組んでいる。「日戻りカツオ」とは文字通り,釣ったその日に水揚げされた一本釣りのカツオのことであり,鮮度の高さが特徴である。平成22年1月には「土佐さが日戻りカツオ」として商標登録も行われている (商標登録第5295259号)。また,平成23年1月には,黒潮町にて黒潮一番地 カツオ・シンポジウム2010が開催され,同時に日本カツオ学会が設立された。日本カツオ学会の設立趣意書3) には「私達にとって,これまで身近な食材であったカツオ資源の実態はどうなっているのか,そして,カツオに関わる漁撈,加工,流通,消費,文化がどのような現状にあるのか,また,カツオの高付加価値化や有効な利用方法にはどのような可能性があるのかなど,今後,さらに継続した調査・研究と課題への挑戦が必要」との記述がなされており,今後,カツオに関連するあらゆる角度からの最新情報の発信が期待されている。
 このような背景の下,我々は黒潮町産日戻りカツオの高付加価値化を図る取り組みの一環として,抗疲労物質として知られるアンセリン,カルノシン含量の通年調査を行った。今回はその結果を中心に報告する。

ベトナムにおける栄養不良の二重負荷に伴う子どもの肥満の現状と課題
− グローバル化の進展による生活環境の変化がもたらす影響 − 

三好 恵真子、由本 優子

ベトナムは,大国アメリカとの戦争に勝利し,民族解放闘争の英雄として世界史上に躍り出たものの,南北統一後,長く苦しい貧困時代を乗り越えなくてはならなかった。そして,戦時体制の国家社会主義から脱却すべく,1986年に社会主義型市場経済を目指す,ドイモイ(刷新)政策が開始され,改革・開放路線に踏み出すことにより,社会環境は劇的に変化してゆくことになる。すなわち,国民がそれぞれの要求に合った多様な生活様式を追求することを認め,また外資導入によって,ホーチミン市やハノイなどの都市部を中心として,高度経済成長が達成されるものの,農村から大量の都市移住は発生して,地域間格差も拡大しており,ドイモイ・インパクトが及ぼしたベトナムの社会・生活環境の変容は計り知れないものがある。
 こうして目覚ましい経済発展を遂げたベトナムでは,人々の生活の質は向上し,栄養状態も改善しつつあるものの,いまだ5歳未満児の約3割が発育阻害注1)であり微量栄養素の欠乏症注2)も深刻な問題であることから,全国的には子どもの栄養不足の改善が優先課題となっている。その一方で,2000年頃から成人肥満注3)や生活習慣病の増加が社会問題化し,低栄養と栄養過多が同時にみられる「栄養不良注4)の二重負荷(Double burden of malnutrition)」といわれる栄養の過渡期を向かえている。

歴史の潮流と科学的評価(第3節 ベジタリアン食とがんのリスク①)

ジョアン・サバテ(Joan Sabate)、訳:山路 明俊

 食習慣と健康との関係への関心は,古代に遡ります。旧約聖書には,健康を促進したり,増強したりすると考えられた食養生法が多く見つかります。また,主要な世界の宗教(西洋と東洋を含めた)の殆どは,2千年以上にわたり,その教えの中で,少なくてもいくつかの食事指導,訓戒や禁止事項を取り入れてきました。人のがんが古代エジプトのミイラで発見されています。20世紀になってからですが,寿命が延長し,死亡原因としての感染症が減少傾向になって,がんが主要な公衆衛生の関心の的として浮かび上がってきました。食事とがんについての多くの近代研究は,ベジタリアンのライフスタイルを推奨する宗教家達に焦点を当てるようになりました。ベジタリアンの人々は,がんリスクの点で,外部の非ベジタリアンの人々と比較ができ,その相違を測定できるので研究に有用です。また,彼らは,ベジタリアニズムへの執着度によるがんのリスクを評価できる内部比較も可能なので,有益なのです。(あるいは,喫煙者と非喫煙者の体重,その他のサブグループの関心事を含め)
 しかし,20世紀になって初めて,食事/がんの関係の系統的研究が出現するようになりました。ドール(Doll)とピトー(Peto)の報告(1981)によって,近年,食事とがんへの関心に拍車がかかり,彼らは米国でのがんによる死亡率を避けるケースについての判りやすい分析を発表しました1)。彼らの分析は,米国のがん死亡の約35%は食事習慣に影響されることを示し,この数字はがん死亡への喫煙の影響に対してのみ,第2位にあります。しかし,彼らの推定は,大きな幅の不確かさがあります(10%〜70%)。

“薬膳”の知恵(78)

荒 勝俊

 腰痛は人類が立って歩くがゆえに必ず起こってしまう病気と言われている。日本では,国民の8割以上が生涯において“腰痛”を経験しているといった“腰痛大国”であり,多くの雑誌やTVでの特集が組まれている。中医学において,腰部周囲の筋緊張による腰痛は“痺症”に分類され,様々な原因による気血の流れの停滞が原因とされている。即ち,痛みは「不通則痛」と「不栄則痛」が原因と考えており,経絡が滞おる事で腰に関係している臓腑の力が低下した状態だと説明されている。こうした気血の流れを改善する方法として,中国では経絡を刺激して痛みを抑えたり,気血の流れを良くする方法が施されている。例えば,内臓のどこかに具合が悪いところがあると,その場所と関係のある表面に強い反応が現れる。腰痛も腎の力が低下し,その結果気血が不足した症状として表れるので,経絡を介して問題の臓器を健全な状態に戻してやる方法が中医マッサージや鍼灸施術である。
 経絡とは,古代中国医学において,人体の中の気血津液の通り道として考え出された経路で,経は経脈(縦の脈),絡は絡脈(横の脈)を表す。この経絡上に有って,気血が出入りし,経絡が合流したり分枝したりする経絡状の重要な部分を経穴と呼び,頭の先から足の先まで365箇所存在すると言われている。

築地市場魚貝辞典(カンパチ)

山田 和彦

 近年,残暑の厳しい日が長くなったような気がする。気がするというのは,きちんと調べたわけではないからなのであるが,子供のころ,9月の声を聞くと風が急に涼しくなったような気がした。しかし,最近は9月も夏の仲間入りをしたんじゃないかと思うことが多い。築地市場へ向かうときも,あいかわらず日陰を探して歩くことになる。正門を入り,文字通り人と車の交差する場所を抜けると,平屋の三角屋根が見えてくる。通称「茶屋」と呼ばれる買出し業者の荷捌き場所である。かつて輸送手段が船に頼られていたころ,潮位によって船の出入りが制限されたので,その船を待つための茶屋であったという話を聞く。今はそんな面影はなく,まったくの出荷場なのであるが。通いなれたつもりで歩いていると,目の前に黄色い小屋が1つ。壁に「SALT」「塩販売所」と書かれていて,塩の袋が積まれている。氷とともに,塩は保存料として重要である。こんな施設もあったのかと,観察力のなさ,いや,築地市場の奥深さを再認識した。
 今回も夏の魚,カンパチを紹介する。

“地域密着でキラリと光る企業”
醤油発祥の地“和歌山県湯浅”で伝統の湯浅醤油を守り・進化させている『湯浅醤油有限会社』

田形 睆作

 和歌山県湯浅の地は日本の醤油発祥の地である。湯浅醤油の歴史はおよそ750年に及ぶ。熊野古道の宿場町でもあった湯浅が繁栄した頃,開山覚心(法燈円明国師)が中国から帰国し,由良興国寺に入山した。この時,由良に伝えたのが金山寺味噌(径山寺味噌)の製法である。この金山寺味噌の製造過程でできる”樽に溜まった液”が,今でいう「たまりしょうゆ」になって全国に広まった。
 湯浅醤油有限会社はこの製法を今でも継承し,この「たまりしょうゆ」を商品名『九曜むらさき』として販売している。さらに進化させて,日本一・世界一の醤油を作りたいという想いから丹波黒大豆100%を杉樽で天然醸造した新開発醤油を商品名『生一本黒豆』で販売している。
 今や日本料理に限らず,噂を聞きつけてヨーロッパからミシュランシェフが蔵まで買いつけに来るくらい,高い評価を受け,海外にまで名前が届くようになった。最新の新商品は”魯山人”が愛した醤油をできうるかぎり再現した醤油を開発し,『魯山人』という商品名で販売を始めている。もちろん,金山寺味噌も販売している。

二枚貝用飼料-4

酒本 秀一、大橋 勝彦、仙石 義昭

これまでに数回ホタテ稚貝やアサリ成貝を用いて配合飼料による飼育試験1-3)を行ってきたが,飼育成績にバラツキが大きかった。試験毎に用いた飼料の組成が違っていたし,飼育水温も大きく違っていたので無理も無いが,その他にも何か飼育成績に影響を及ぼす大きな要因が有るのではないかと推測していた。
 前報3)で飼料の原料やスフェロプラスト化処理の有無よりも飼料の粒径の方が飼育成績により大きな影響を及ぼすのではないかと思える結果を得た。本号では飼料の粉砕法の違いや原料組成が飼料の粒子径に及ぼす影響を調べることにした。また,二枚貝が食べる餌は海水に懸濁している物で,海水に懸濁した飼料は吸水・膨潤しているはずである。よって,飼料を海水に懸濁した後の膨潤度,粒子径,粒子数等の経時変化も調べた。