New Food Industry 2008年4月号

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New Food Industry 2008年 4月号

カカオハスクの多様な生物作用と代替医療における機能性

坂上 宏、前田 裕一、大澤 謙二

カカオ豆は学名Theobroma cacaoという熱帯性植物の種実であり,古代「神の食べ物」と呼ばれ珍重されていた。カカオの木はカカオポッドと呼ばれる約20センチのラグビーボール状の実をつけ(図1A),その中にパルプ状の果肉とともに30〜40粒のカカオ豆が入っている(図1B)。ポッドから取り出したカカオ豆に発酵,乾燥,加熱などの処理を加えることにより,カカオ特有の色合いや香気が生じるようになる。カカオ豆は機械によって胚乳と外皮(カカオハスク)に分けられ,胚乳のみがさらに加工されてカカオマスとなり,チョコレートやココアの原料として使用される。カカオハスク(図1C)は大部分廃棄処理されており,現在,その有効利用が望まれる(図1D)。カカオについては,抗酸化作用1),抗動脈硬化作用2),抗菌作用3),抗ウイルス作用4)などの生物活性や,カテキン,エピカテキンやその重合体であるプロシアニジンB2, プロシアニジンC1 ,シンナムタンニンA25),あるいは食物繊維としてのリグニン6)などの成分分析が報告されている。

カンピロバクター食中毒の発生低減のために

山下 千恵

畜産物は食品の原材料として主要な地位を占めている。畜産物の供給源である家畜の必要条件は,健康で疾病にかかっていないことである。また,食肉となった段階では動物用医薬品等の残留がないことなどである。人間と同様,健康な家畜においても,体表面や消化管等に細菌叢として様々な微生物を保有している。そうした微生物の中には家畜には症状を起こさなくても,人間に摂取された場合に食中毒や感染症の原因となるものもある。食用家畜・家禽が保有する主な食中毒起因菌等には,サルモネラ,腸管出血性大腸菌,病原性大腸菌,カンピロバクター,ウェルシュ菌,黄色ブドウ球菌,リステリア等,様々なものがある。畜産物を安全に利用するためには食中毒起因菌等の最終食品への残留をいかに防止するかが重要なポイントとなる。と畜検査・食鳥検査では,肉眼的に臨床症状を認めるものを食用とならないよう,と殺禁止・解体禁止・廃棄等の行政処分を行っているが,不顕性感染・健康保菌の状態のものは排除できない。

広域化する魚介類の毒化

村上 りつ子、野口 玉雄

近年,ポリフェノール類による糖の吸収遅延,血糖値上昇抑制効果などが知られ,糖尿病を含む生活習慣病への効果が期待されている。日本における糖尿病の大半が2型糖尿病であり,運動療法や食事療法による血糖コントロールが重要である。この血糖コントロールに関して,ポリフェノール類による糖の吸収遅延及び血糖値上昇抑制効果などが知られるようになり,特定保健用食品(トクホ)としてお茶類やグアバ葉などを原料としていくつか商品化されているものがある。これらの特定保健用食品は,糖の吸収を穏やかにするということで血糖値が気になる人に飲用されている。そこで我々は,ベトナムで食されている28 種類の飲食材について,ポリフェノール含量,α-グルコシダーゼ抑制,抗酸化性についてスクリーニングを行った。

めっき技術による抗菌加工の理論と実際

福崎 智司

近年,食品および医療関連施設では,微生物に起因する食性疾患や院内感染の発生が社会問題となったことなどをうけて,材料面からの衛生管理技術の開発が精力的に行われるようになった。従来,食品・医療環境での微生物汚染源として,微生物が膜状に集積したバイオフィルムの関与が強く指摘されてきた1-3) 。また,バイオフィルムは,ステンレス鋼の配管系における腐食孔の発生事故や溶接部の損傷4-5)の原因となることも報告されている。したがって,バイオフィルムによる危害が想定される場合,基材表面に微生物が付着しにくいような,あるいはバイオフィルム生成の初期段階で付着した微生物を死滅させるような抗菌処理等の表面処理が必要となる。
 食品・医療分野および生活関連資材における抗菌処理では,安全性が高く,かつ持続性に優れた無機系抗菌剤を利用した表面処理法が注目されている 6-7)。その一つに,抗菌性を有する金属を用いてめっき皮膜を創る抗菌めっき技術がある。ここでは,抗菌性めっき皮膜の種類と特徴ならびに各めっき皮膜の抗菌機構について解説する。

植物バイオセンサーを用いた低コスト・無菌操作不要のステロイド系化合物活性測定法

東條 卓人、高橋 洋介、山崎 健一

脂溶性低分子量のホルモンであるステロイドホルモン,およびビタミンDやレチノイン酸などは細胞の増殖や分化,機能の調節ばかりでなく様々な疾患やガンの成因および治療にも深く関与している。これらのホルモンは直接,標的細胞内の核あるいは細胞質に浸透し,そこに存在するそれぞれのホルモンに特異的な受容体(核内受容体)と結合する。核内受容体はリガンド依存性の転写因子でもあり,発生,分化,増殖,機能,代謝などの重要な機能を担う脂溶性低分子シグナル物質の生体内における生理作用は,これら特異的な核内受容体を介してその標的遺伝子の転写が制御されることにより発揮される。

チーズの包装技術

佐々木 敬卓

私達が生きていくために必要不可欠なものが食品である。その食品を商品として良好な状態でお客様にお届けするために必要な要素として以下の6項目がある。それは1,「安全・衛生性」 2,「環境・資源」 3,「ユニバーサルデザイン」 4,「生産性・コスト」 5,食品の機能を維持するための「保存性」  6,おいしさや食べたさを等を助長する「感覚的要素」や「鮮度」の付与である。食品を総合的に最も優れた状態でお客様にお届けする場合上記の6項目の充分な検討が必要である。しかし,この6項目は次の3つの技術も相互に機能し,始めて成り立つことになる。その3つの技術は,Ⅰ,内容物製造技術 Ⅱ,包装設計技術 Ⅲ,物流・流通(保管・輸送・店頭陳列)技術である。

チーズの機能性 一次機能

根岸 晴夫

チーズの栄養成分は表1に示したように乳の脂肪とカゼインから構成され,カルシウムとビタミンAを豊富に含むことが特徴である。そのほかに少量の可溶性成分としてホエイタンパク質,乳糖,ビタミンBなどの水溶性ビタミンを含む。同様にリン,マグネシウムのほかに,亜鉛,鉄,ヨウ素,セレン,銅など生体にとって重要な微量ミネラル成分も含まれており,非常に栄養バランスに優れた食品である。栄養成分の組成はチーズの種類で異なり,代表的なチーズの成分組成は表1に示した通りである。またカゼインはチーズの主要タンパク質であり,表2に示したように,そのアミノ酸バランスは牛乳と比較してトリプトファン含量が高いという特徴がある2)。これらのチーズの栄養成分の詳細についてはチーズの基礎科学の項で述べられている。

築地市場の魚たち(10)魚以外の水産物の旬(春,夏)

山田 和彦

日の光がだんだんと暖かさを増し,どこからともなく沈丁花も香りだす。隅田川もうららかな春である。春といっても,最近では花粉症の心配やら,暖冬は温暖化の影響だなど,心配事も多い。日本には古来,季節の変り目には豊穣祈願とか無病息災など,無事を祈る行事がある。四季折々の行事には,その時々にその土地で採れる食材を利用して,料理が作られていたのであろう。旬は四季の明瞭な日本で発達した文化の1つである。

薬膳の知恵 (23)

荒 勝俊

“臓”とは体内におさまっている内臓を指し,これらは中医学においてはそれぞれが持つ生理的・機能的特長によって“臓”・“腑”・“奇恒の腑”の3つに分類されている。“臓”は五臓を指し,これには肝・心・脾・肺・腎がある。“腑”は六腑を指し,胆・胃・小腸・大腸・膀胱・三焦がある。また“奇恒の腑” は,脳・髄・骨・脈・女子胞がある。
 “臓腑”はこれまでに述べてきた様に,五臓と六腑の間で相互依存・相互制約の関係にあり,それぞれが協調しあってバランスを保っている(臓象学説)。こうした臓腑の生理機能のバランスが崩れる事で障害が起こり,疾病を引き起こす。

中国食品通信

馬 桂 華

中国食品日報によると北京食品?公室(事務所)は,2007年における北京市と各区の食品担当部門が65種類の食品から112105個の検体を抽出し,品質検査を実施したことを報告している。それによると,合格率は96.17%に達しており,2006年よりも0.89%上昇した。これは,ここ数年来の最高値であったことを報じている。その中には国民経済と社会の発展の指標となっているものとして,米,小麦粉,食用植物油,野菜,豚肉,豆製品など,6 種類の食品があるが,それらの合格率は97.18%に達した。北京市は既に監察と抽出検査,委託検査,企業の自主検査等が連携しあう横断的な検査体系を形成するにいたっている。具体的には,五大農産物卸売市場では食品に対する自主検査室を設置しており,大型チェーン店でも57箇所,スーパーマーケットでは食品配送センターに検査室を設置している。なお,北京市では48台の快速検査測定車を配置した。


連載エッセイ 楊枝の歴史と文化(10) 楊枝の正しい使い分け

稲葉 修

厚生労働省と日本歯科医師会が「8020運動」を展開されている。80歳で自分の歯を20本残そうという啓蒙運動である。20本あればどんなものも食べることが出来る。人生80年時代を迎え,自分の歯で噛めることの大切さを想像していただきたい。正に人生の質,いわゆるクオリティ・ライフに関わる問題である。最近,歯周病と生活習慣病(糖尿病・心臓疾患・骨粗しょう症等)との関係が指摘されている。日本は「8008」即ち80歳で8本しか残っていない。それに対しアメリカでは80歳で15〜6本,スウェーデンでは17〜8本残っている。これらの歯の先進国と比べると圧倒的に遅れている。三角ようじが普及している国では歯が悪くなってから治すのでなく,悪くならないよう日頃から気をつけるという精神・予防歯科の考え方が浸透している。我が国では楊枝はスーパーかホームセンターの荒物売り場か100円ショップで買い求められている。一緒に売っているのは「箸,たわし,包丁,まな板」などである。台所用品として売られている丸い楊枝を歯のケアに使うこと自体が問題であるが,長年の習慣で料理用の丸い楊枝で平然と歯を傷めているのが実情である。