New Food Industry 2008年11月号

tree-2.jpg

New Food Industry 2008年11月号

トマトポリフェノールの機能性

芳村 峰花、小幡 明雄

近年日本では,花粉症を含むアレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎,などのアレルギー性疾患に悩む患者が増加している。日本人の有病率はスギ花粉症約 16%,通年性アレルギー性鼻炎約18%と報告されている1)。これらアレルギー性鼻炎はI型アレルギー反応に分類され,発症には抗原抗体反応が関与する。スギやハウスダストなどの抗原が体内に侵入すると,抗原をマクロファージなどの抗原提示細胞が貪食し,その抗原の情報をB細胞へ伝達する。B細胞は抗原特異的IgEを産生する。このIgEは,鼻腔や目の粘膜にある肥満細胞の表面に存在するIgE抗体レセプターに結合しており,再度,侵入した抗原と架橋を形成し,その刺激によって肥満細胞からヒスタミンなどのケミカルメディエーターが遊離される。

ポリフェノールと健康について −ワインの話題を中心に−

佐藤 充克

ワインの消費は戦後徐々に増加してきたが,10年ほど前まで絶対量としては微々たるものであった。しかし,1997年頃から赤ワイン・ポリフェノールの健康効果が話題となり,所謂「赤ワインブーム」が起こり,ワインの消費が急拡大した。1998年には国民一人当りのワイン消費量は2.7Lとなり,その後若干減少しているが,最近では,ワインは日本でも日常の食卓に上がるようになった。この急拡大は,ワイン,特に赤ワインに含まれるポリフェノールが健康に良いとの認識が普及したためと考えられる。
 赤ワインブームから約10年が経過し,これまでに「フレンチ・パラドックス」以外にも赤ワインについて,多くの健康効果が報告されている。ここでは最初に,赤ワインの健康効果を中心に,赤ワイン消費急拡大の契機となった「フレンチ・パラドックス」の紹介を始めとし,赤ワインの動脈硬化症に対する作用,活性酸素・ラジカル消去活性,赤ワイン・アントシアニンの熟成と活性の変化,認知症やアルツハイマー症に対する作用,赤ワインの血流増加作用など,メルシャン㈱で行った研究を紹介すると共に,抗がん効果や寿命延長効果など最近の話題を含め解説する。

ガゴメ昆布フコイダンの機能性

水谷 滋利、廣田 有花、出口 寿々、大野木 宏,酒井 武、加藤 郁之進

フコイダンとは,一般的に,硫酸化されたフコースを含む酸性多糖のことであり,広い意味での食物繊維の一種でもある。フコイダンの機能性については数多くの報告があるが,経口投与した場合の機能性についての論文はほとんど見当たらない。わずかに,オキナワモズクフコイダンの抗腫瘍作用に関係する細胞傷害性 T細胞(cytotoxic T cells)の増殖促進作用1)とワカメメカブフコイダンのナチュラルキラー細胞(NK cells)活性の亢進2)についての報告があるのみである。
 我々はガゴメ昆布フコイダンに着目し,その食品としての機能性に関して長期に渡って研究を続けてきた。ガゴメ昆布は,函館近海に群生するコンブ目に属する海藻であり,昆布の中でも,最もフコイダンの含有率が高い昆布の一種である。

脳卒中・認知症等を予防する葉酸添加食品

香川 靖雄

葉酸の食品への添加は少子高齢時代に,脳卒中,認知症,胎児異常を予防する重要なビタミンとして,諸外国では大きな成果を挙げて,フードインダストリーの新しい潮流となっている1)。しかし,日本では2000年に厚生労働省の神経管閉鎖障害の予防に関する通達でサプリメントの使用が妊婦に奨励されただけで,予防成果はない。日本では成人での葉酸推奨量も240μgと国際的な400μgに較べて低く,日本人の15%を占める遺伝子多型や高齢者の利用障害に対応していない1)。また,利用効率の高いモノグルタミル葉酸と,天然食品の葉酸の大部分を占める利用効率が低いポリグルタミル葉酸の区別も食品成分表にない。

マタタビエキスの免疫賦活作用

岩橋 弘恭、寒林 里美

マタタビ(学名:Actinidia polygama)は,マタタビ科マタタビ属に属する落葉つる性の植物で,キウイフルーツやサルナシと同属であり,別名として夏梅・マタンプなどがある。日本国内や中国大陸の山沿いに分布し,雌雄異株で開花期の6月頃に葉の表面が白化するのが特徴で,結実期は9〜10月である1)。 マタタビといえば猫が非常に好む植物で猫の万能薬として有名だが,ヒトにとっても葉や実は古くから食用として利用されている,とても馴染みの深い植物である。
 現在もマタタビの採れる地域ではマタタビの実の焼酎漬け,ドリンク,漬物,葉を用いたお茶などに加工され,特産品として販売されている。マタタビの実のうち,未熟な実は辛味があるが,よく熟したものでは生でも食用とすることが可能である。

2型糖尿病に対するパロアッスルの臨床評価: 血糖の調節及び動脈硬化の改善

長谷川 秀夫

パロアッスルによる日本人2型糖尿病患者に対する有用性並びに安全性を群内比較試験によって検証した。試験は,Hb1Ac値が6.0%以上の2型糖尿病患者24名を対象に,パロアッスル(原生薬換算6g/日)を3ヶ月間摂取してもらい,空腹時血糖,Hb1Ac,相対動脈硬化指数を摂取前後で測定し,数値を比較した。その結果,空腹時血糖は,摂取前222.8±13.5 mg/dlから摂取後176.4±9.8 mg/dlに,平均58.4±16.6 mg/dl(最大181 mg/dl)と統計学的に有意(p < 0.002)な減少を認めた。また,Hb1Acは,摂取前8.9±0.20%から摂取後8.2±0.20%に,平均0.67±0.20%(最大3.9%)と有意(p < 0.005)な減少を認めた。さらに,相対動脈硬化指数は,摂取前46.1±7.0%から摂取後30.4±4.5%に,平均15.7±6.0%(最大49.5%)と有意(p < 0.05)な減少を認めた。被験者には,糖尿状態の改善にともない,自覚症状の改善が,倦怠感(改善率;75%),口渇・多飲(改善率;100%),しびれ(改善率;67%),動悸・息切れ(改善率;60%),下肢冷感(改善率;33%)の症状に認められた。なお,試験食摂取に関連すると考えられる有害事象は認められなかった。本試験によって,パロアッスルが血糖調節ならびに動脈硬化の改善に寄与する食素材であることが示唆された。

異物・異臭検査の実際

紀平 知子、吉田 篤志

昨今,日本の食生活を取り巻く環境は劇的な変化を遂げている。食生活の欧米化や社会機構の変化に伴い,食料の多くを輸入に頼るようになった。また,人間にとって必要最低限の目的である生命維持に加え,産地・銘柄のブランド化・特定栄養成分の強化・おいしさの追求など,何かしらの価値が付加されたものが好まれ,より高度な「食」を要求されるようになった。
 かつて自給自足型社会を構築していた頃は,自分自身あるいは共同生活体の管轄下にあった食料の入手法も,時代の流れと共に変遷してきたが,今や季節や産地を問わず,世界中から様々な食材が入手可能となった。しかし,四季・生産地を問わず,いつでも欲するものが食べられる自由と快適さを得た代わりに,流通経路が多段階かつ複雑となり,手元に届くまでの経緯が不明となるリスクを負うところとなった。

現代韓国女性の美意識(2)−美容整形手術がもたらす心理的変化とその功罪—

李 智英、三好 恵真子

「韓流」と称されるように,ブーム化を引き起こすほど,何かと注目されている韓国文化であるが,本稿では,現在世界的な美容整形大国に至る韓国の,特に女性たちの美意識について,2回の連載論文にて考察しており,今回はその後編である。
 ここ数年‘ウェルビン(=well-being)’という健康ブームにわく韓国であるが,そもそも古くから健康や美容を作り出すものは,「食べもの」であるという「医食同源」の思想が日常的に根付いていた。さらに特徴的なことは,現代の韓国女性は「健康にいい」,「お肌にいい」,「ダイエットに効く」, 「疲れがとれる」等に関連する食べものに目がないといわれるように1),特に美容に強い関心を寄せているところである。韓国の代表的な食べものといえば,「焼き肉」であるが,人々は毎日カルビやプルコギを食べているわけではなく,むしろ日常の食事は,穀物や野菜が中心で,メニューもバラエティーに富んでいる。そして肉の扱いも,焼くよりも長時間かけて骨や内臓を煮込んだスープにすることの方が多く,各種栄養成分を溶け込ませて美容に最大の効果を発揮できる食べ方を選択している1)。

築地市場の魚たち 築地市場魚貝辞典

山田 和彦

これまで,築地市場に入荷する魚貝類を様々な角度から見てきた。これらは,市場内外で多くの方から寄せられた問合せと筆者の乏しい知識を元に,表題ごとにまとめなおしたものである。よく聞きかれた質問の1つに,調べようとした名前が本に出ていない,というのがあった。以前もふれたように,魚貝類の名称は,多種雑多である。そこで,今回から築地市場に入荷する魚貝類を五十音順に並べて紹介しようと考えた。ここには図鑑に出ている名前を中心に,市場名や,若干の地方名も含めようと思う。また,標準和名で示した魚貝類には,簡単な解説も付けて調べるときの参考になるようにした。なお。片仮名表記は標準和名のもの,平仮名表記は市場での呼び名や地方名などとした。

連載 薬膳の知恵 (30)

荒 勝俊

人体は一つの有機的統一体であり,局所における変化は全身に影響を及ぼし,内臓の変化は五官,四肢,体表などに変化を及ぼす。こうした観点から,中医学における証の診断は,舌を観察し,脈を診断し,声を聞き,症状を尋ねる事で,体の各方面に現れた変化を情報として取り出す事で行われる。具体的には,視覚により全身および局所の状態を観察する「望診」,聴覚と嗅覚により声や分泌物の臭いの異常を知る「聞診」,本人や家族から自覚症状,愁訴を詳しくたずね,病気の経過,熱・汗・食欲など診断に必要な情報を収集する「問診」,直接触れて診察する「切診」の4種類の診断方法(四診)から構成されている。四診で得られた情報を整理・分析し,「証」を見極める事で各々の状態により適した治療方法を選択する根拠(弁証論治)ともなる。