New Food Industry 2008年1月号

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New Food Industry 2008年 1月号

新春巻頭言 21世紀は知的財産重視の時代

工藤 力

5年程前に内閣総理大臣の決済により知的財産戦略会議が設置され,この会議においてわが国の国際的な競争力を高め,経済・社会を活性化するためには,知的財産立国の実現が必須であるとした知的財産戦略大綱が決定された。知的財産立国とは,発明,創作を尊重するという国の方向を明確にし,物品の生産に加えて技術,デザイン,ブランド,音楽,映画等の価値ある情報づくり,即ち無形資産の創造を産業の基盤に据えることにより,わが国経済・社会の再活性化を図るというビジョンに裏打ちされた国家戦略である。この知的財産戦略大綱に基づき,第155回臨時国会において平成14年法律第122号として知的財産基本法が成立し,平成14年12月4日に公布され,平成15年3月1日から施行されて4年以上が経過した。

新春随想 メチニコフと長寿への夢

清澤 功

人にはいつまでも若く,長生きしたいという願望があり,この気持ちはいつの時代も変わることはない。このため,昔から不老長生の妙薬を求めた数多い夢物語があり,長寿者の多い地域の環境や食物などには高い関心がもたれてきた。たとえば,アンデス山脈の太平洋側に位置するエクアドルのビルカバンバ,パキスタン国境のカラコルム山脈を背にしたフンザ,黒海とカスピ海の間を挟むカフカス山脈南側に広がるコーカサス地方は,数十年前まで世界の三大不老長生の理想郷として注目されていた。しかし,これらの地方では戸籍の不備や住民による年齢のさば読みなどがあり,特にビルカバンバでは米国の調査団により百歳以上の長寿者はほとんどいなかったことが判明した。

新春随想 トマトの生産とその選果施設を見学して

筒井 知己

2006年6月農産物流通技術研究会主催の,トマト選果施設研修視察会に参加した。視察場所は,埼玉県北河辺町にあるJAほくさいの選果施設と,栃木県宇都宮市のJA宇都宮,東部選果施設である。前者では,「木甘坊(木で甘くなるまで熟したことを意味して名前を付けた)」という愛称でトマト(ハウストマト,品種,桃太郎)を出荷している。
 JAほくさいの職員によると,JAほくさい傘下の北川辺トマト研究会では,農林水産省ガイドラインによる特別栽培農産物(減農薬,減化学肥料,化学肥料と農薬の両方を50%以上減らして栽培したもの)を生産しているという。

農業廃棄物からの新規資源の開発 −フラボノイド配糖体と分枝稀少糖アピオース −

手林 慎一、金 哲史、柏木 丈拡、中村 有希、相原 央享、加藤 伸一郎

ピーマンはアマトウガラシ(甘唐辛子)とも呼ばれその名の示すとおり甘いトウガラシでありトウガラシの栽培品種の一つである。学名をCapsicum annuum,和名をトウガラシという。沖縄で栽培されているシマトウガラシ(島唐辛子)やタバスコの原料であるタバスコペッパーはC. frutescens L.(和名:キダチトウガラシ(木立唐辛子))でありよく似るが別種である。これらの他にも,ハバネロ(C. chinense Joge),アヒ(C. baccatum L.),ロコト(C. pubescens Ruiz. Et Pav.)などが近縁種として知られ,辛味香辛料として利用されている。栽培量が最も多いのはC. annuumであり熱帯から亜寒帯にかけて世界中で栽培されている。一方,C. frutescensC. chinenseなどは熱帯・亜熱帯を中心に限られた地域で栽培されている。トウガラシは中南米原産のナス科植物で1493年にコロンブスによって中米からヨーロッパに導入されたといわれ,その後コショウに並ぶ新たな香辛料として世界中にまたたくまに広まった。日本に導入された時期は定かでないが,1542年にポルトガル人により持ち込まれたとの記載が「草木六部耕種法」にある。

市販スナック菓子の酸化度

山口 直彦、中川 泰代

スナック菓子は,その製造工程で揚げる,スプレイするなどの油脂で処理することが多い。従って,その製品は含油量は高く,しかも組織はポーラスで水分量は少ない。それ故に流通過程及び保存中での劣化は殆どが油脂の酸化に基づくものである。
 この酸化的劣化が進行すると不快な臭いや味,色の変化,栄養価の低下,さらには有毒物質を生成するようになる。このような酸化油脂の有害性が明らかになるとともに,厚生省は昭和52年11月16日付で環境衛生局長名の通達1)を出し,油菓子の製造・取扱について指導に当ることになった。

腸炎ビブリオ食中毒はいつ発生するのか

高橋 正弘

本稿の執筆は9月からはじめている。この時期,報道で伝えられる食中毒事件は腸炎ビブリオやカンピロバクターによるものが今年も多いようだ。この小文が読者の皆様のお目に触れる頃はノロウイルスによる食中毒等の対策に日々追われているのではないだろうか。
 いうまでもないが,食品は生命を維持し,健康を向上するために作られているはずである。ところが,食中毒や食の安全にかかわる記事が大きく取り上げられると,作られている「食品」が,果たして人の健康を守り,安心して摂取できるものだろうかと,改めて考えさせられることが続いている。しかも,これらは多かれ少なかれ企業の人間がかかわりあって発生している。しかし,事故を起こそうと思って仕事をしている現場の食品従事者はいないのも事実である1)。

未 利 用 特 許

高橋 詔男、工藤 力

本稿において未利用特許とは,単に特許を取得したのみで産業に利用されていない特許,即ち放置されている特許,を意味する。詳細については後記するが,わが国の特許の約66%は未利用特許である。本稿では,特許出願・特許権等の現状,特許発明の評価及びライセンス契約締結の検討項目を説明し,少しでも未利用特許が産業に利用され,わが国の産業の発展に貢献することを期待している。

海藻アカモク成分の骨代謝調節機能:骨粗鬆症を予防する新規機能性素材ホルマックスの開発

山口 正義、松本 透、保苅 義則、橋詰 昌幸

骨量は加齢に伴って減少し,骨粗鬆症を引き起こす。この骨の病気は,易骨折性を示し,骨折による寝たきりの原因となる。本症は近年の高齢化人口の増大に伴って年々増加しており,医療費の高騰をもたらしている。そのために,本症の予防については多くの関心がもたれている。
 骨粗鬆症の予防は食生活が重要であることが認識されてきている1)。筆者の山口(前静岡県立大学大学院生活健康科学研究科教授)らは,食品由来生理活性因子の骨代謝調節機能の解明とその骨粗鬆症の予防への展開に関する研究を十数年前から国内外に先駆けて遂行してきた2,3)。その過程において,藻類の中では海藻のアカモク成分が骨量増進効果を特異的に発揮することを見出すことに成功した(特許第3749978号)。

クリームチーズ

岩附 慧二

クリームチーズは1872年米国,ニューヨークのチェスターで初めて商業的製造が行われたと言われ,クリーム単独またはクリームとミルクの混合液に乳酸菌スターターを添加し,生成した酸により凝乳した,柔らかくて熟成させないチーズである。チーズのカテゴリーを超硬質チーズ,硬質チーズ,半硬質チーズ,軟質チーズのように分けると軟質チーズに分類され,欧米では主にサラダに加えたり,サンドイッチ等のパン用スプレッドとして食されている。

キモシンによる凝乳機構

阿久澤 良造

キモシンによるミルクの凝固は,反芻動物の胃袋中に暖かいミルクが保存される際に生じる現象が最初の認知とされている。その後,数千年の間,この凝乳現象がチーズ製造に応用されている。従来,凝乳酵素は,生後数週間の授乳中の子ウシの第四胃から得られる主成分をキモシンとする粗酵素製剤レンネットが使用されてきた。1950年代以降,子ウシと畜数が牛乳,牛肉需要の増加によって減少し,一方,チーズ生産は増大し,レンネットの供給が不足気味になった。このことから国際酪農連盟(IDF)や国際食糧農業機関(FAO)の開発の推奨により代替えする酵素の探索が行われ,動物臓器,植物,微生物からの凝乳酵素が見いだされている1)。

未来のキモシン酵素

高見 周平

今日,流通する凝乳酵素を大別するとすれば,製法に注目すべきである。伝統的手法である,“抽出”で主として動物由来原料を使用するものと,“醗酵”によって生成・分離されたものである。今日の経済的,環境的側面から観ると,抽出により生産されるものは,多量の抽出液を獲るために多量の原料を必要とすることから,原料の入手事情や生産で発生する生産副資材を含めた廃棄物など,製造会社における生産管理の上で,特に生産コスト負荷が高く,マイナス面が多いと謂わざるを得ない。特に動物性由来原料は,動物の様々な疾患流行によって,国際的または特定国において,様々な理由と不定期の流通制限の影響を受けることを忘れてはいけない。これは,原料高騰という形で,製品価格の上昇を招く。

連載 薬膳の知恵 (20)

荒 勝俊

気・血・津液はこれまでに述べてきた様に,ともに生命活動の基本的な物質であり,これらは水穀の精気から作られ,絶えず体内をめぐっている。こうした気・血・津液は互いに化成しあい,協調しあっているが,不足あるいは過剰になればその運行に障害が起こり,最終的に臓器に影響を与える事になる。今回紹介する気血津液弁証法は,中医学における気・血・津液の関係の理論から病変を分析し症候を弁証する方法として重要な位置を占めている。本弁証法は,大きく“気病弁証”,“血病弁証”,“津液弁証”の三つに大別され,今回はその中で“津液弁証”に関して述べる。

連載エッセイ 楊枝の歴史と文化(7) -白樺材の楊枝-

稲葉 修

白樺を使う製造工程としては,まず原木を約30cmに切断する。次にこの原木を煮沸する。その目的は木を柔らかくし,木の灰汁を取り去る。そして樹皮を剥いだ木をロータリーと呼ぶ機械で約2.5mmの厚みの帯状に剥く。大根のかつらむきと同じ要領である。次の工程は切断で巾約5センチの板にする。この状態で乾燥する。次にカッターと呼ぶ機械で丸軸を作る。この丸軸を「つまようじ」の寸法に切断し,最後に先を尖らすのである。
 以上が丸い「つまようじ」の作り方であるが,「平ようじ」の場合は薄い板状の段階で金型で打ち抜くのである。その後 乾燥し,摩擦をして仕上げる。白樺は柔らか過ぎるため他の用途が少なく,そのため価格的に安く,変な味や臭いもなく,色も白く,「つまようじ」には最適の材料でヨーロッパでもほとんど白樺製である。

築地市場の魚たち 魚の歳時記 −夏−(7)

山田 和彦

ビルとアスファルトに囲まれた都会では,暑さも強烈である。今年は「猛暑日」なる名称も現れた。市場の中にある食堂で昼食を取ろうと入場したサラリーマンも,日陰を選んで歩いている。昼時の築地市場は,その日の取引が終わり仲卸もあらかた片付けられている。片づけが進む中,散水車が走ってくる。ゆっくりと進むトラックの前方から扇状にまかれる水は,道に溜まった魚の体液や細かなゴミを,きれいに洗い流してくれる。外国の方が築地市場を訪れ,臭くないので驚いたという話を聞いたことがある。築地市場では,青果も扱っている。

中国食品通信(17)

馬 桂 華

9月20日,吉林省農産品品質安全専門修理無公害農産品緑色有機食品工作会議において吉林省農業委員会は,緑色,有機および無公害食品の開発発展目標を再調整し,緑色,有機および無公害食品の開発に力を注ぐとともに農産品の品質向上を着実に推進していくことを表明した。調整後の具体的な目標は本年度末までに全省における緑色,有機および無公害食品の総量を2225種類とし,新しく460種のものを認証することとしている。内訳は,無公害農産物310種,緑色食品120種,有機食品は30種に上っている。また,有効な監視測定面積は3100万畝(ムー:中国の面積の単位で,1畝=6.67a(アール))に達している。“十一五”期の末までには全省における緑色,有機,無公害食品の総量は3500種,面積は4600万畝で生産量は3000万トンに達する予定で,その結果,生産額は600億元に達する見込みである。