New Food Industry 2006年 10月号
免疫調節機能性食品素材としての牛乳IgG
大谷 元
哺乳類の新生子は免疫系をはじめとした自己の感染防御機構が完成しない状態で出生する。そのため新生子は,種々の感染防御物質を母動物から胎盤や乳汁を介して獲得する。それら感染防御物質は,病原性微生物の細胞膜に損傷を与えたり,病原性微生物の増殖に必要な栄養素の利用を妨げたり,病原性微生物が新生子の細胞に結合することを防ぐことにより,新生子が感染するのを阻止する。
メカブ粘性物質の機能特性−調製温度に伴う性状変化と生理機能への影響−
山中なつみ,小川宣子
ワカメ(Undaria pinnatifida)の胞子葉であるメカブは,ワカメの葉状体や他の海藻にはみられない粘りを持つことが特徴である。この性質を利用して,細かく刻んだメカブを撹拌して粘りを出したものが和え物や汁物などの料理に用いられている。
著者らは,メカブの粘り(以下,メカブ粘性物質とする)の粘度や成分の特徴を明らかにするため,ワカメの葉状体や同じ褐藻類であるコンブからも粘性物質を調製して比較を行った。その結果,粘性物質の粘度と粘性物質中のアルギン酸量に相関があり,メカブの粘りが強い要因のひとつとして粘性物質中に溶出するアルギン酸の量が多いことを示した1)。
ニゲロオリゴ糖の免疫調節機能の統合医療への応用の可能性
山本 佳弘
免疫機能の低下・バランス異常を引き起こす要因として,加齢,ストレス,衛生環境,栄養不良,疾病あるいは疾病の治療等が挙げられる。高齢者は,加齢により免疫機能が低下しているが,加齢に伴う生理的要因,医原的要因,あるいは社会的要因などのさまざまな要因が複合的に作用して低栄養状態になった場合,さらに免疫機能を低下させ,肺炎や肺血症などの新たな疾病を誘発したり,褥創などの治療を遅延させるといわれている1)。それ故,高齢者の栄養状態の管理や免疫機能の維持増進は大切となる。
「栄養成分摂取の標準量」作成の試み
柳本 正勝
国民の食への関心は,食料資源問題,安全性そして健康との係わりであろう。食料資源問題は,特に日本の場合,現在も重要な課題であるが,国民の関心は薄れている。数年前は安全性あるいは安心の問題に関心が集中していた。そしてこの1〜2年でいちばん関心が持たれているのは健康との係わりである。食料は生命の糧であり,健康の礎である。ところが食品の安全性と同じように,食と健康との係わりにおいても,行政当局・専門家が啓蒙しようとしていることと,国民の関心には大きな隔たりがある。
農薬と食の安全
高村 斉治
全国的に水産練り製品の原料が海外で製造されたスケトウダラなどの冷凍すり身に依存している中,愛媛県は,近海で漁獲される生魚主原料にユニークな製品を生産している県である。
FDA食品行政の話 (3)食品添加物の評価
石居 昭夫
食品添加物の安全性は消費者の行政に対する不信感もあって,科学データ(主に動物試験データ)で安全性に対する根拠が示されても消費者はなかなかそれをすんなりと受け入れることが少ないようです。食品添加物の安全性は倫理的な問題もあってヒト試験で確認することは難しく,そのため動物の毒性試験データに基づいて評価されるのが一般的です。
薬膳の知恵 (5)
荒 勝俊
薬膳とは,これまでに述べてきたように,中医学の理論に基づき病気の予防や健康保持を目的として調理された料理である。薬膳料理は,生薬だけでなく日常食べている食材の中にも多く含まれており,特に食材と生薬の組合せを考える場合には,中医学の詳しい知識が必要になる。そこで,数回にわたり中医学の概念に関してもう少し詳しく述べたい。
中国食品通信・ラッキョウ,枸杞,菊芋,茶飲料のこれから
馬 桂 華
中国の新聞によると中国からアジアに向けた食品の輸出が順調に推移していることを報じている。なかでも、日本向けに輸出しているラッキョウが引き続き増大していることを報じている。その背景には、ラッキョウの栽培過程における種子の選択から肥料・農薬の使用や製造工程にいたるまで、国際基準にしたがって行われていることが挙げられる。中国のラッキョウの主な産地は湖南省である。年生産量は約2.2万tで、全中国ラッキョウ総生産量の約80%を占めている。