New Food Industry 2020年 7月号

シリーズ 3回目 健康食品の有効性・安全性評価におけるヒト試験の現状と課題

—統計学的観点から見たランダム化比較試験—

鈴木 直子(SUZUKI Naoko),田中 瑞穂(TANAKA Mizuho),佐野 友紀(SANO Yuki),柿沼 俊光(KAKINUMA Toshihiro),馬場 亜沙美(BABA Asami),山本 和雄(YAMAMOTO Kazuo)
 
Current Status and Issues of Clinical Trials for Efficacy and Safety Evaluation of Health Foods
―Statistical analysis in randomized controlled trial―
 
1.統計学の必要性
統計学とは
統計学は,方法論であり,作物の収穫率の向上方法,薬剤効果や治療効果を正確に評価するために発展してきた。統計学の柱は,推論と予測であり,科学的根拠を得る際に,矛盾を生じさせないように進めるための論理基盤を付与するものである。加えて,ばらつきを考慮する学問でもある。様々な事象に対して,全ての結果が一致する事象は少ない。例えば,ある睡眠薬の薬効を評価する際に,被験者の生理状態が同じであったとしても,たまたま疲れていて睡眠時間が長くなった者や実験時に神経が高ぶって眠れなかった者など偶然により誤差が生じてしまうことがある。また,ある漢方薬に不定愁訴を改善する効果があるという医師もいれば,全く効果がないという医師もいる。このように,生物学や医学における真実の追及には,ばらつきが混入するため,比較する2群間の差が偶然のばらつきよりも大きいかどうか,統計学を用いて評価する。
 また統計学は,以下のようにデータの説明や記述に関する記述統計学と,標本から母集団の推測に関する推計統計学の2つの学問に大きく分けられる。
 
 

 解 説

地中海マルタ島産の天然海藻パディナ・パボニカの機能性

眞鍋 昇(MANABE Noboru),ジャン・アレクシス グリモー(Jean-Alexis GRIMAUD),ジル グティエレ(Gilles GUTIERREZ),固城 泰史(KOJYO Yasushi)
 
 古代から,多種多様な海藻が繁茂する豊穣の海として知られている地中海の沿岸地域や島嶼地域では,様々な海藻が食品,調味料,香辛料,生薬などとして活用されてきました。このことは約2,000年前の古代ローマ帝国時代最盛期に大プリニウス(ガイウス・プリニウス・セクンドゥス・Gaius PLINIUS Secundus・23年生〜79年没)が著した最古の百科事典「博物誌・Naturalis Historia」の植物・薬草篇に記述されていました1)。プリニウスの「博物誌」には,フェニキア人が交易拠点として紀元前8世紀ころに建国した古代都市国家カルタゴ(北アフリカのチュニジア共和国の首都チュニスの近郊にありましたが,紀元前146年にローマと争ったポエニ戦争に敗れて滅亡しました)の住民たちが近郊の地中海沿岸部で採れる団扇形の海藻を喫食したり海藻に含まれているオイルを抽出して服用すると,疲労が軽減されること,ストレスが解消されること,関節の痛みが和らいで柔軟性が回復することなどが記述されています。カルタゴのあったチュニジアの沖約250キロの地中海上に浮かぶマルタ島でも,古代から様々な海藻,特に団扇形の褐藻類が食品,香辛料,生薬などとして活用されてきました。マルタ島は,面積が約316平方キロ(東京23区の面積約623平方キロの半分ほど)の小島で,約40万人が暮らしています。島全体が世界遺産に登録されて毎年200万人以上の観光客が訪れる「地中海の真珠」として有名なリゾート地です。マルタ島は,イタリアともアフリカ大陸とも近いため,古代にはカルタゴやローマなどの地中海諸国との貿易で繁栄し,その後イスラム勢力が地中海を支配下におこうとした時代には,イスラム教勢力と鬩ぎ合うキリスト教勢力の拠点でした。12世紀には,キリスト教勢力が連携してマルタ騎士団(正式名称:ロドスおよびマルタにおけるエルサレムの聖ヨハネ病院独立騎士修道会)を設立し,現在まで継続されています。
 このマルタ島で古代から現在まで食品,調味料,香辛料,生薬などとして用いられてきたのが団扇形の海藻パディナ・パボニカ[Padina Pavonica (Linnaeus)]です2, 3)(図1A)。海藻は褐藻類,緑藻類,紅藻類に3分類されますが,パディナ・パボニカは多細胞で複雑な構造をもつ褐藻類で,細胞内には光合成をする葉緑体が含まれています。この葉緑体には陸上植物の葉緑体に含まれているのと同じ緑色の光合成色素クロロフィル(葉緑素)に加えて赤褐色の光合成色素フコキサンチン(褐藻素)が多量に含まれているので,褐色を呈しています。パディナ・パボニカは団扇を広げたような特徴的な形態をしていているので,日本ではこの仲間の褐藻類をウミウチワ属と呼び,西洋では細胞内に炭酸カルシウムの結晶体アラゴナイトを合成蓄積するために真珠色に輝いてみえるので「孔雀の尾羽・ピーコックテール」と呼んできました。日本でも古くから褐藻類は食用として利用されてきました。日本では,コンブ目のコンブやワカメ,ヒバマタ目のヒジキ,ナガマツモ目のモズクなどの多くの褐藻類が伝統食の食材として愛好されてきました。地中海沿岸地帯でも,大航海時代の1498年にヴァスコ・ダ・ガマ(Vasco da GAMA)によってインド航路が開かれてインド原産の胡椒がヨーロッパに安価に供給されるようになるまでは,褐藻類のパディナ・パボニカが食肉や魚介の調理のための香辛料やサラダのための調味料として広く用いられていました。加えて,プリニウスの「博物誌」に記載されているように「関節痛を和らげて柔軟性を改善する効果」が期待されて生薬としても服用されてきました4-6)。このように,地中海沿岸ではパディナ・パボニカには長い食経験があり,「関節痛を和らげて柔軟性を改善する」生薬や伝統食材として広範囲で食べられていましたが,大航海時代に安価な胡椒が大量に輸入されるようになってからは,マルタ島などの食料自給が難しい辺境の島嶼地域を除いて,香辛料や調味料として利用されなくなるだけでなく生薬としての喫食経験も失われてしまいました。
 
 

 研究解説

漢方座浴(YOSA-SHINY)に対する抗メタボリックシンドロームと抗酸化作用に関する臨床研究

具 然和(GU Yeunhwa),山下 剛範(YAMASHITA Takenori),井上 登太(INOUE Tota)
 
Clinical test related to bloodstream, anti-oxidant, anti-metabolic syndrome in human by oriental medicine lust (YOSA-SHINY)
 
Author: Yeunhwa Gu1, Takenori Yamashita2 and Tota Inoue3
Affiliated institutions:
1Graduate School of Health Science, Junshin Gakuen University
2 Graduate School of Health Science, Suzuka University of Medical Science
3Mie breathing swallowing rehabilitation clinic
 
Key Words: Orientai herbal medicine, Metabolic syndrome, Heat effect, Detoxification, Antioxidant effect
 
Abstract
  In this study, the effects of YOSA-SHINY on diet, antioxidant effects, skin beautiful effects, and basal metabolism were studied.Physiological tests, liver function (AST, ALT), lipid metabolism (total cholesterol, LDL cholesterol, HDL-cholesterol)The measurement of adipose fat, glucose metabolism (glucose, HbAlc), SOD-like activity and urine were collected from the subjects, and the detox effect was studied.The luminous intensity of AAPH-derived luminol was remarkably suppressed by Korean herbal medicine. Therefore, it was speculated that the OS in the living body was attenuated. The body weight, BMI, hip size and waist circumference tended to decrease over time, suggesting that visceral fat burning reduced body fat percentage. Urinary concentrations of heavy metals in urine after oriental medicine lust were significantly lower at week 4, week 8, and week 12 than at week 0, especially at week 12. The effect was recognized.The warming effect of Korean herbal medicine and herbs may be a chelating agent that inactivates heavy metals that exhibit a catalytic effect on the oxidation reaction as an antioxidant, and is also expected to be an antidote.

要 旨
 本試験では,漢方座浴(YOSA-SHINY)の,ダイエット効果,抗酸化効果,美肌効果および基礎代謝への影響について検討した。健常成人を対象にして女性15名,男性5 名計20人とした。13種類のハーブ入りのパックを用いて全身欲1時間後,生理学的検査,肝機能(GOT,GPT),脂質代謝(総コレステロール,LDL-コレステロール,HDL-コレステロール,中性脂肪,糖代謝(グルコース,HbAlc),SOD 様活性の測定及び被験者から尿を採取し,detoxification効果を検討した。漢方座浴により,AAPH由来のルミノール発光強度が顕著に抑制されたことから,温熱効果とハーブに含まれるフラボノイド等がラジカルを補足あるいは細胞内情報伝達を活性化することにより,ペルオキシラジカルをスカベンジングし,生体内のOS を減弱させることが推察された。体重,BMI,ヒップサイズおよびウエスト囲に経時的な減少傾向が認められたことから,内臓脂肪の燃焼により体脂肪率が減少したとことが示唆された。尿による漢方座浴後の尿中重金属の濃度は,0週目に比べて4週目,8週目,12週目に有意な低下が認められた。特に12週目において最も低下が認められた。漢方座浴の温熱効果とハーブは,酸化防止剤として酸化反応に触媒作用を呈する重金属を不活性化するキレート剤の効果の可能性もあり,解毒剤としても期待される。
 
 

解 説

松かさエキス配合試作品による単純ヘルペスウイルス感染性の抑制
Inhibition of herpes simplex virus infectivity by the prototype that contains pine cone extract

島田 明(SHIMADA Akira),啓輔(MAKIURA Keisuke),山本 正次(YAMAMOTO Masaji),福地 邦彦(FUKUCHI Kunihiko),坂上 宏(SAKAGAMI Hiroshi)

Abstract
 We have established simple and sensitive method to quantitate the virus infectivity. Using this method, we demonstrated for the first time that pine cone extract-containing product inhibited the infectivity of herpes simplex virus.

 五葉松の松かさが消化器系の癌に有効であることに着目し,その活性成分を同定する着想を得た1)。マウス骨髄性白血病細胞をマクロファージに分化させる活性2),マウス移植癌に対する抗癌作用(延命率)3)は,いずれもDEAEセルロースに結合する酸性物質であった。活性物質の本体を,リグニン配糖体と同定した4)。松かさリグニンの安全性5),体内動態(生体利用率)6),幅広い抗ウイルススペクトルについて報告した7-12)。
 また,アミノ酸のリシンが,抗HSV活性を示すという報告があるので14, 15),リシン単独の抗HSV活性についても検討した。
 
 

紹興酒の熟成に伴うアミノ酸代謝物の組成変化
Changes in the concentrations of amino acid metabolites during the maturation period of Shaoxing sake

鈴木  龍一郎(SUZUKI Ryuichiro),佐野 愛子(SANO Aiko),粕谷 優貴(KASUYA Yuki),白瀧 義明(SHIRATAKI Yoshiaki),坂上 宏(SAKAGAMI Hiroshi),宮田 順次(MIYATA Junji)
 
Abstract
  During the maturation period of Shaoxing sake, concentrations of glycine, o-phosphoserine, γ-aminobutyric acid (GABA) and ornithine were increased, while those of o-phosphoethanolamine, monoethanolamine, tauline, glutamic acid and 2-aminobutyric acid declined and those of aromatic amino acids (phenylalanine, tyrosine) were nearly constant.  These conflicting action of GABA/glycine and glutamic acid may explain the relaxing effect of Shaoxing sake.
 
 

解 説

新解説 グルテンフリー製品へのsorghum(モロコシ)と maize(トウモロコシ)の利用(1)

瀬口 正晴 (SEGUCHI Masaharu),竹内 美貴 (TAKEUCHI Miki),中村 智英子 (NAKAMURA Chieko)
 
Sorghum(モロコシ)(Sorghum bicolor L. Moench)とmaize(メーズ)(Zea mays)はGramineae類(family)中の密接な関連あるPanicoideae亜科(subfamily)のメンバーである。Sorghumは中央アフリカが原産地であるが,その定着にはいろいろな仮説があり紀元前4500—紀元前1000の間といわれ,その後アジアやインドに広がっていった(Kimber, 2000)。Sorghumは世界中で栽培され,大部分(〜55%)はアジア,アフリカである。米国は世界生産の約30%であり,残りの主生産国は南アフリカである(Smith 2000; Rooney and Serna – Saldivar, 2000)。Sorghumはわずかだがヨーロッパでも作られる。Sorghum は世界中の多くの乾燥地帯の重要な主食食品であり,乾燥に耐えるものであり;しばしば他の穀物が生産できないところでも育つ。Maizeは世界中で育つ主力穀物種であり全生産域で小麦に次ぐ2番目にランクされるものでさらに全生産量では米に次いで2番目のものである(Farnham et al., 2003)。米国は世界最大のmaize生産国で,北米は全世界生産の〜50%にあたり,続いてブラジル, 中国である(Johnson, 2000)。Maizeは北アメリカ原産で紀元前5000の早い段階で今日のメキシコで栽培され,そこから次第にヨーロッパに広がった(Johnson, 2000; Farnham et al., 2003)。
 
 

製品解説

紫茶エキスによる血管内皮依存性NO産生促進およびトレーニング後の筋肉疲労改善作用
Endothelial nitric oxide production enhancement and muscle recovering effects of purple tea extract

竹田 翔伍 (TAKEDA Shogo)
 
紫茶は,ケニア茶業研究財団(TRFK; Tea Research Foundation of Kenya)が約25年の歳月をかけて作り出した新種のお茶(Camellia sinensis, TRFK306)であり1),その新芽や若葉はpeonidin 3-O-glucosideやpeonidin 3-O-(6"-malonyl)-glucosideのようなアントシアニンを含有するため赤紫色を呈する。産地はケニアの赤道直下,かつ標高1,500~2,500メートルのケニア山の山麓高地で栽培されている。このような栽培環境は紫外線が強いため,紫茶は自身を光障害から守るためにポリフェノールを多く蓄えている。紫茶に含まれる成分としては,緑茶に含まれるフラバノール(epigallocatechin gallate, epicatechin gallate),キサンチン類(caffeine, theobromine)の他に,紫茶に特有なポリフェノールとして1,2-di-galloyl-4,6-hexahydroxy-diphenoyl-β-D-glucose(GHG)を含有している2)。また,紫茶の生理活性としては,抗トリパノソーマ活性3) や脳内抗酸化活性4) が報告されている一方で,著者らも生理活性に関する研究の結果,紫茶エキスの抗肥満作用を見出している5)。一方,近年の筋肉トレーニングブームにより,ワークアウト後の筋肉メンテナンスの重要性が高まってきており,サプリメントも販売されている6)。このような筋肉メンテナンス作用としては,一酸化窒素(NO)を含むビートのジュースが,血管拡張作用を介した筋肉メンテナンス作用を示すことが報告されている7)。そこで,紫茶エキス(紫茶の含水エタノール抽出物)の血管内皮からのNO産生作用を評価するとともに,ヒトにおける筋肉メンテナンス作用を評価した。
 
 

伝える心・伝えられたもの

—焼酎と焼酎蒸留器の話—

宮尾 茂雄(MIYAO Shigeo)
 
江戸時代,天保7(1836)年に出版された「四季漬物塩嘉言」には64種類の漬物が載っている1, 2)。その多くが今日も賞味されていることから,漬物のルーツを物語る貴重な本の一つである。漬物は「塩辛い」というイメージが強いが,「四季漬物塩嘉言」には甘い漬物もある。古酒と砂糖を煮立てた「砂糖蜜」に青梅を漬けた「甘露梅」や「らっきょう三杯漬」,みりんに漬けたウリの「捨小舟」,ナス「鼈甲漬」,干しウリ・塩押しナス・干し大根などを甘酒麹とみりん酒に漬けた「麹漬」などだ。当時のみりんは焼酎に蒸したもち米と米麹を入れて仕込んだ。焼酎がなければみりんは出来なかった。前回のみりんに続き,今回は焼酎と焼酎蒸留器を巡る話をしたい思う。
 
 

学術交流

Studying abroad:perspectives of Japan’s daily life

 
David Bautista-Martinez, Satoshi Yokose, Rogelio J. Scougall-Vilchis, Hiroshi Sakagami
 
 Over the years, Mexico and Japan have built a strong and friendly relationship that has been reflected in several fields. Commercial trade is perhaps the most important of these, with a great Japanese flow of investment that promotes the creation of new jobs, training, and infrastructure, standing out the automotive industry and the electronic sector, and other areas, as the Nikkei community that has been part of Mexico for more than 100 years, representing a cultural bridge for both nations. Nowadays, a mutual interest in approaching to each other’s identity is evidenced through different events like the “Haru Matsuri” and the “Lights of Japan” held in Mexico City, and expressions like gastronomy, with presence in both countries, and the teaching of the languages, offered in numerous centers. 
 Academic exchange has become a major element during the education and instruction of any professional, given the multiple benefits and outcomes gained. The experience of a different approach to education at a foreign country leads to a more global view of learning and the acquisition of skills to solve problems. On this matter, I was very interested in coming to Japan for educational and personal reasons, and it represented an opportunity to deepen into academic sources and research conducting, and at the same time to explore the domestic and social features of the daily life, some of which I share next to provide an overall perspective.
 
 

 — 身近な山野草の食効・薬効 —

ハスNelumbo nucifera Gaertn.
(スイレン科:Nymphaeaceae  APG体系:ハス科:Nelumbonaceae)

白瀧 義明(SHIRATAKI Yoshiaki)
 
梅雨も末期に差し掛かるとハス(蓮)の見頃を迎えます。ハスは,インド原産で東アジアからオーストラリア北部に分布する多年生水生植物で,7〜8月,紅色〜白色の花を咲かせ,花は早朝に咲きはじめ昼には閉じます。日本での古名は,「はちす」で花托の形状を蜂の巣に見立てたそうです。水芙蓉,不語仙,池見草などともよばれます。ハスの花(蓮華)は,日本では仏花として葬儀などに用いられますが,インド,スリランカ,ベトナムなどでは国花で,めでたい花として結婚式で飾られます。葉柄は地中の地下茎から伸び水面に葉(葉身)を出し(浮葉),草高は約1m,葉柄には通気のための穴が通っていて水面よりも高く出る葉(空中葉,水上葉)もあります。葉身は円形で葉柄が中央につき,撥水性がありサトイモの葉と同様に水玉ができます。ハスの果実の皮はとても厚く,長期間,土の中で発芽能力を保持することができ,1951年(昭和26年)3月,千葉市にある東京大学検見川厚生農場の落合遺跡で発掘され,大賀一郎博士が発芽させることに成功したハスの実は,放射性炭素年代測定により今から2000年前の弥生時代後期のものと推定され「大賀ハス」とよばれています。その他にも中尊寺金色堂須弥壇から発見され,800年ぶりに発芽に成功した「中尊寺ハス」や埼玉県行田市のゴミ焼却場建設予定地から出土した1400〜3000年前のものとされる「行田蓮」もあります。
 
 

デンマーク通信

デンマークのライ麦

Naoko Ryde Nishioka
 
 デンマークといえばおいしいパンを想像する人が多いと思います。以前にもパンについて,いくつかの記事で紹介しましたが,今回はライ麦を中心に紹介したいと思います。
 ライ麦パン,デンマーク語ではRugbrødと綴りますが,喉の奥に何かが詰まったようなRの発音で始まるこの言葉は,デンマーク人の食生活には欠かせないパンです。日本の食パンやフランスパンなど,小麦粉で作られたパンももちろんありますが,デンマーク人の家庭に日常的にあるのは,白いパンではなく,黒いライ麦パンではないでしょうか。ライ麦パンは,黒くて重くて硬く(普通のパンに比べると硬く,フワッという感じではない),ライ麦粉を使って通常は,サワードウと呼ばれる酸味の強いパンの膨張剤を使って作られるパンで,シアの実や,ひまわりの種などを混ぜて作る四角いパンです。糖分や脂肪分がほとんどないため,ヘルシーな主食として親しまれています。通常はお昼ご飯によく食べるもので,お弁当には定番の食材です。また,お昼でなくても,簡単に食事を済ませる時や,小腹がすいた時などにはとても便利な食材です。一人暮らしや若者の生活にも最適な食材で,電子レンジなどがなくても常温で食べられ,腹持ちもよく,費用対効果も高い食材です。もちろんヘルシーであることが,この食材のキーポイントで多くの家庭に常備されています。