New Food Industry 2020年 1月号
シリーズ 健康食品の有効性・安全性評価におけるヒト試験の現状と課題
—制度の変遷と安全性試験—
鈴木 直子(SUZUKI Naoko),田中 瑞穂 (TANAKA Mizuho),佐野 友紀 (SANO Yuki),柿沼 俊光 (KAKINUMA Toshihiro),馬場 亜沙美 (BABA Asami),山本 和雄 (YAMAMOTO Kazuo)
Current Status and Issues of Clinical Trials for Efficacy and Safety Evaluation of Health Foods
―Changes in the system of " Food with health claims"―
Keywords: clinical trials, health food, Foods for Specified Health Uses (FOSHU), Foods with Function Claims, safety evaluation
Authors:
Naoko Suzuki1)*, Mizuho Tanaka1), Yuki Sano1), Toshihiro Kakinuma1), Asami Baba1), Kazuo Yamamoto1)
*Correspondence author: Naoko Suzuki
Affiliated institution
1) ORTHOMEDICO Inc.
特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品の制度下において,ヒト試験の重要性は極めて高くなっている。また,健康食品の安全性や有効性に対して不安を感じる消費者も多く,ヒト試験でのエビデンスが求められている。しかし,食品を用いた臨床研究の実施は医薬品と異なり,詳細な試験デザイン・統計解析手法の規定が存在しないため,科学的な妥当性に欠ける試験も多く見受けられる。本稿では,弊社オルトメディコがこれまでに培ってきた経験を基に,健康食品に関する制度の変遷や食品のヒト試験と医薬品の臨床試験との違い,安全性試験を中心にヒト試験に用いられる試験デザインや統計手法を紹介するとともに,適正なヒト試験実施において留意すべき点を検討する。
研究解説
腸内細菌叢由来水素ガス産生乳飲料のドライアイ予防効果
角 沙樹 (TSUNO Saki),川島 素子 (KAWASHIMA Motoko),坪田 一男 (TSUBOTA Kazuo),松本 光晴 (MATSUMOTO Mitsuharu)
2007年にOhsawaら1)により,水素ガスが生体に悪影響を及ぼす活性酸素種のみを選択的に還元することで,虚血再灌流障害を軽減することが報告されて以降,水素医学分野は急速に発展してきた。水素ガスが酸化ストレス誘発性の病態を予防,軽減することが多くの研究により示され,現在では抗酸化作用にとどまらず抗炎症作用や抗アポトーシス作用,抗アレルギー作用,エネルギー代謝の活性化等,多様な作用が報告されている2−4)。本稿では,我々が実施した眼に対する水素ガスの効果を腸内細菌叢由来の水素ガスを用いて調べた臨床試験5)の概要を紹介する。
新春随想
知っておきたい日本の食文化 その十
昭和の豊食と平成の飽食,崩食を省みる
橋本 直樹 (HASHIMOTO Naoki)
昨年で平成の時代が終わった。第2次大戦後の昭和,平成と続いた74年間は日本の社会がかつてなかった規模で大きく変化した時代であったが,それと共に私たち日本人の食生活もこれまでになかった大きな変貌を遂げた。来るべきポスト現代,令和の時代には再び大きな社会変動が起きると予想されているが,その時,私たちはどのような食生活をすることになるのであろうか。
そのことを考えるためには,まず戦後の昭和,平成の時代がどのような社会であったかを省みることが必要である。第二次大戦後の昭和の時代は,あたり一面の焼け野原となった日本が経済復興して世界第二のGDPを誇る経済大国となるまでに高度経済成長した生産の時代であった。欧米に負けない豊かな民主社会を建設するという共通の目標を掲げて国家も民衆も共に努力,邁進した集団主義の時代でもあった。しかし,戦後日本の繁栄をもたらした高度経済成長が昭和48年と54年に起きた二度の石油ショックと60年のプラザ合意による円高政策によって勢いを失い,行き場を失った投資マネーがバブル経済を引き起こして破綻することによって昭和という成長と繁栄の時代は終わった。
日本の元号の変わり目が世界史の大転換と符合するなどということはめったに生じるものではないが,平成の幕開けは第二次大戦後から続いていた東西冷戦の終結と重なっている。そして,新自由主義のグローバルな市場経済が一挙に押し寄せてきたのである。しかし,日本では戦後の目覚ましい社会発展を牽引してきた経済成長が停滞し,不安定になり始めた。社会の成長を示す実質GDPの伸びは,高度経済成長の時代には年率11%であったが,平成に入ると2%弱に低迷するようになった。高度に成熟した資本主義社会の抱える矛盾と限界が日本でも顕在化してきたのである。そして,社会の高齢化と少子化が急速に進行して社会の成長力が失われていく不安の時代になった。人々の社会行動と価値観が多様化する個人主義の時代に変わり,経済も生産に代わって消費が主導する時代になった。
連載 解説
新解説 グルテンフリー食品へのハイドロコロイドの利用
瀬口 正晴 (SEGUCHI Masaharu),竹内 美貴 (TAKEUCHI Miki),中村 智英子 (NAKAMURA Chieko)
食品ガムとしても知られるハイドロコロイドに関するこの章は,ハイドロコロイドの性質を述べることにはなるが,グルテンおよびその成分タンパク質(グリアジン,グルテニン)の性質の試験や,ある種のハイドロコロイド,あるいはハイドロコロイド混合物のどんな性質がグルテンの機能に近いのかを説明するものではなく,また,グルテンフリー食品を調製するのにどのようにハイドロコロイドを用いればよいかを述べるものではない。
この章で述べるのは,あるハイドロコロイドのネットワーク形成,フィルム形成,肥厚,水分保持能の機能で,グルテンフリー食品形成に有用なものであることを述べる。
ハイドロコロイドを分類する 1 つの方法とは,その物質がゲルを作るか作らないか(すべてのハイドロコロイドはレベルは異なるが,水と結合し保持し,そして全て粘性のある水システムとなる)ということである。グリアジン,グルテニン,およびハイドロコロイドはすべて生体高分子である。グリアジン,グルテニンはタンパク質であり,一方,殆どのハイドロコロイドは多糖類である。タンパク質のゼラチンは,しばしばハイドロコロイドに分類されるが,この章では,主に多糖のハイドロコロイドを一般に言うゲル形成材,肥厚剤,水結合剤として討論する。
製品解説 三菱ガス化学
衣食住から医食住へ 働き方改革の折に
君塚 健一 (KIMIZUKA Ken-ichi),村井 克之 (MURAI Katsuyuki),田代 憲史 (TASHIRO Norifumi),杉本 和志 (SUGIMOTO Takashi),佐藤 守悟 (SATO Syugo)
10年前の「派遣切り問題」は既に忘れ去られ,今は慢性的な人手不足にある。この原因は取りも直さず少子高齢化による現役世代の減少にあり,政府は働き方改革を謳って1億総活躍社会の実現や,生産性の向上を目指して躍起になっている。それ自体は悪い事ではなく,どんどん進めて欲しいが,具体論・方法論に乏しいのが残念だ。
かつて日本人は家族の衣食住を満足させるべく懸命に働いてきた。それが高度成長を導き,物が溢れる世の中を産み出した。時が流れ,今は家族の医(介護を含む)食住を満足させようとしている。この医食住,働き方改革の時代に少しでもお役に立てればと思い,今回は食品添加物の過酢酸製剤(ダイヤパワー®FP)を提案する。
新素材解説
炎症性サイトカイン産生と破骨細胞分化に対する
Cynara scolymus L.由来シナロピクリンの抑制効果
渡辺 典久 (WATANABE Norihisa),佐藤 秀一 (SATO Shuichi),田中 清隆 (TANAKA Kiyotaka),今井 健一 (IMAI Kenichi)
口腔の2大疾患はう蝕と歯周病であるが,歯周病は罹患率が非常に高いこと,近年,歯周病の発症に関わる細菌が歯周病のみならず肺炎や糖尿病などの様々な全身疾患の発症にも関与していることが明らかとなったため,特に歯周病ケアの重要性が増している。歯周病ケアにおいて最も重要なのが毎日のブラッシングである。しかし,ブラッシングで得られる効果は個人の習慣や技量に依存するのみならず,ブラッシングだけでは不十分な場合が多い。また,有病高齢者や要介護高齢者においてはブラッシング自体が困難である。従って,ブラッシングを補助,補完するような歯周病予防策が求められている。
われわれは,天然植物由来の物質による歯周病ケア剤の開発を進めている。本稿では,アーティチョークとその有効成分の1つであるシナロピクリンに焦点を当て,歯周病の進行において重要な役割を担う炎症性サイトカインと破骨細胞に対する作用を紹介する。
連載 漢方の効能
口腔内外科処置に対する鶏血藤配合剤の利用について
Utilization of Jixueteng-Formulated Traditional Chinese Medicine for Oral Surgery
佐々木 悠(SASAKI Haruka),鈴木 光雄(SUZUKI Mitsuo),岡部 葉子(OKABE Yoko),渡辺 秀司 (WATANABE Shuji),遠山 歳三 (TOYAMA Toshizo),両角 旦 (MOROZUMI Akira),坂上 宏(SAKAGAMI Hiroshi),浜田 信城(HAMADA Nobushiro)
Abstract
Dental implant treatment recovers the structure, function and aesthetics of oral cavity by embedding the implants into the jawbone where loss of teeth occurs due to the caries, periodontal disease, trauma, tumor, congenital lack, and fixing the dentures on the supporting embedded implant. Many open treatments (such as tooth extraction and implant embedding surgery) should consider the oral bacterial infection. Jixueteng, a kind of crude drug, is well-known of its bactericidal and a blood flow improvement effects. We present here our case report of Jixueteng used for dental surgery and preliminary basic research that focuses on its antibacterial effect.
要旨
歯科インプラント治療とは,う蝕,歯周病,外傷,腫瘍,先天性欠如などによって失われた歯に対して,歯科インプラントを顎骨に埋入し,これを支台として義歯等を固定することで,口腔領域の構造的,機能的ならびに審美的回復を図る治療法である。抜歯やインプラント体埋入手術など多くの観血的処置を伴う歯科治療は,口腔内細菌の感染に対する配慮が必要である。生薬である鶏血藤は,殺菌効果と血流改善効果が確認されていることから,歯科治療の外科処置に利用した症例と基礎的研究結果について報告する。
新春特別企画 ダイバーシティ・マネジメント
いま求められている多様性を考える ~3大学連携シンポジウムより
坂上 宏(SAKAGAMI Hiroshi)
Abstract
Diversity is important to survive the current competitive era. In every field, talented people are busy, and have to handle many tasks at the same time. To manage with that, you have to first establish yourself and have your friends do what you can't do. Such teams can help with each other and work efficiently. When multiple technologies are required, it is efficient to perform division of labor. Each member of the team should always be motivated and teaches new ideas and skills. An organization that can make use of diverse ideas and experiences of diverse human resources is likely to generate innovation. This special issue is a collection of three articles written by the authors who gave lectures about their views on the concept of diversity, in the first three university joint symposium on November 2, 2019.
ラグビーワールドカップ2019を見て,日本はまだまだやれることと,多様性の重要性を再認識した。ラグビー日本代表は,メンバー31名中,15人が外国出身者である。国籍がどこかは関係なく,代表に選ばれることが誇りである。レベルの高い選手とポジションを競い合い,チームのレベルを高め,とうとう8強にまで進出した。人間としての価値を認め合い,仲間意識を高め,現地の人との交流を深め,そして,競い合った。ベクトルが一つになり,最大のチーム力が発揮された1)。ラグビー憲章に掲げた5つの言葉:「品位,情熱,結束,規律,尊重」をそっくり体現したものである2)。オープンな心とオープンな耳を持っていた頃のアメリカにおけるモダンジャズへの変遷3)や,最近の日英ハイブリッドドラマの誕生4)も,多種多様な文化,言語,価値観が自然に融合した結果である。世界において異なった価値観と共生することが求めれており,多様性を認め合うダイバーシティーの概念を社会は取りいれるべきである。現在の分断の時代を賢く乗り切るには,多様性が重要である5)。
注目を集めるダイバーシティ ~帰属を意識した包括的な環境づくりと目指す「共生」社会
Diversity to attract attention
Creating a comprehensive environment with a sense of belonging and aiming for a “KYOUSEI” society
真殿 仁美 (MADONO Hitomi)
Abstract
There are two aims of this paper. First, it is necessary to clarify how the diversity that attracts attention has continued to evolve by changing its shape. The second is to ascertain the relationship between diversity and a “KYOUSEI” society with a sense of belonging.
Focusing on diversity that attracts attention, I tried to unravel the etymology from previous research and explore what diversity originally mean. To realize true diversity based on the origin of diversity, we recognize differences with each other, including those what are clearly and intangibly excluded from those what affect society and organizations, and it became clear that it was important to build a culture of trust.
In addition, as a result of examining the transition of diversity and examining how it has continued to evolve by changing its shape, diversity has spread to today's society while expanding its interpretation, and it was made clear that it is now being used as a term for creating a comprehensive environment that is conscious of belonging.
Furthermore, regarding how diversity is related to the “KYOUSEI” society that is conscious of belonging, diversity and inclusive diversity have a common thought with "coexistence" and "KYOUSEI" society, diversity, inclusive diversity, and "coexistence" are indispensable elements for realizing a "KYOUSEI" society, I pointed out in this paper.
Key Words:Diversity, Inclusive diversity, Coexistence, “KYOUSEI” society, Creating a comprehensive environment with a sense of belonging
要旨
本稿のねらいは二つある。まず、注目を集めるダイバーシティが、どのように形を変えて進化し続けてきたのかを明らかにすることである。次に、現在展開されている帰属を意識した包括的な環境づくりとダイバーシティとの関係を見極めることである。
注目を集めるダイバーシティに焦点をあて、先行研究から語源をひも解き、ダイバーシティが本来意味するところを探ってみた。ダイバーシティの語源を踏まえ、真なる多様性を実現するには、社会や組織で勢力を及ぼしている側から有形無形に排除・疎外されている人たちも含め、違いを認めあい、社会で包摂して信頼の文化を構築していくことが鍵になるであろう、ことが見えてきた。
また、ダイバーシティの変遷を跡づけ、どのようにかたちを変えて進化し続けてきたのかについて検証した結果、ダイバーシティが解釈を広げながら現代社会に普及し、いまではインクルーシブダイバーシティとして、公平性と敬意を促進し、帰属を意識した包括的な環境づくりを表す語として用いられるようになっていることを明らかにすることができた。
さらに、現在展開されている帰属を意識した「共生」社会とダイバーシティがどのように関係しているのかについては、ダイバーシティやインクルーシブダイバーシティが「共生」社会やその一歩手間の「共存」にも共通する考えであることから、ダイバーシティやインクルーシブダイバーシティ、「共存」が、「共生」社会の実現に欠かすことができない要素になっていることを本稿において指摘した。
国際情勢を客観的に捉える方法
天野 修司 (AMANO Shuji)
Abstract
The relations between Japan and South Korea have progressively deteriorated these days. This might cause crucial damages to the economy and security of the two countries. To make matters worse, expressions which might arouse hostility and anger have been used on the mass media in both countries.
In order to improve this situation, it is important for each individual to have a perspective to analyze the international relations more objectively. The knowledge of Political Science might help you to have such a perspective. This paper firstly introduces the basic ideas of Political Science and then analyzes the current situation concerning Japan and South Korea based on the knowledge.
最近,日本でも多くの外国人を見かけるようになった。統計上でも,日本を訪れる外国人観光客の数は2018年に3000万人を超えて,過去最高を記録した。日本政府は,引き続き,訪日外国人観光客の数を,2020年に4000万人,2030年に6000万人にまで増やすことを目標としている1)。一方で,日本政府は,外国人労働者の受け入れを拡大する方針も打ち出している2)。今後,日本における国籍や人種という意味での多様性はますます広がるであろう。
多様性のある社会において,日本人と外国人とのあいだで「争いの種」となりうるのは,文化や習慣の違いだけではない。国際情勢の変化が,個人の関係にも重大な影響を及ぼす可能性がある。例えば,現在,日韓関係が,かつてないほど悪化しているといわれているが,両国のメディアにおいても,憎しみをあおるような表現が用いられるようになっている。そのような状況のなかで,個人のレベルでも感情的なぶつかり合いが起きることが懸念される。
感情的なぶつかり合いを防ぐためには,各人が,それぞれの国が置かれている状況を客観的に分析する視点を持つことが重要となる。感情的な部分をうまく排除することができれば,国家レベルでの合理的な対応,あるいは個人レベルでの良好な関係の築き方が見えてくるはずである。国際政治学の知識は,まさに,そのような客観的な分析を可能にするものである。
本稿では,まず,国際政治学の基本的な知識について解説する。さらに,その知識を使って,現在の日韓関係の悪化の原因を客観的に分析する。
An economic analysis of a diversifying society:
The employment of females and foreigners in Japan
Ryusuke Oishi
Abstract
As globalization progresses, attention increasingly focuses on the concept of diversity, especially with regard to gender, nationality, employment, life, and culture. This study analyses the concept of diversity from the perspective of economics. Specifically, this paper presents an analysis of the employment situation in Japan regarding employee gender and nationality and argues that, although the gender gap seems to have disappeared in Japan, due to changes to the law, the working environment for women continue to be disadvantageous. In addition, due to declining birth-rates and an aging population, the acceptance of foreign workers has become inevitable in order for Japan to maintain its national economic strength. However, many issues relating to the acceptance of foreign workers in Japan remain to be resolved. These include foreign workers’ language acquisition, living environments, and acceptance into Japanese society.
てるこ先生のこころの栄養学
蚕からの贈り物4 令和の絹物語
中村 照子 (NAKAMURA Teruko)
新年を迎えると,その年の新しい神様(年神様)が幸福をもたらすために家々に訪れます。人々の暮らしが農耕中心だった時代に,家々は年神様に宿っていただくために,しめ飾りや門松,鏡餅を飾りました。年神様をお迎えして新しい年も豊穣となるようにたくさんの料理でおもてなしをし,新年を祝ったのです。これがお正月の由来と言われています。所謂,農業(農耕・牧畜)や,もちろん本稿のテーマとなる養蚕農家もありました。養蚕を営む農家では神棚や大黒柱に繭玉を飾り祈願をしたと言われています。こうしてお正月の様々な風習が各地に伝えられるようになったというわけです。
昨年,平成から令和に元号が変わり新天皇が御即位され,新しい時代の幕開けとなりました。令和になって最初のお正月となった今年,年神様に幸せを願い,「令和の絹物語」というテーマで筆者が携わってきた蚕の成分,食用としての蚕の話を織り交ぜて解説したいと思います。
連載 デンマーク通信
デンマークの宅食サービス
Naoko Ryde Nishioka
今回はデンマークの宅食に関する事情を紹介したいと思います。
日本でも近年の高齢化や共働き家族の増加などの背景から,宅食サービスが広がってきましたが,ここデンマークでも宅食は,日常の食事をサポートしてくれるサービスとして多くの家庭が導入し始めているサービスです。デンマークで宅食が広がってきている背景としては,健康志向の高まりや,多忙な日常をサポートするサービスへの需要の高まりなどがあげられます。
連載 野山の花 — 身近な山野草の食効・薬効 —
ウメPrunus mume Siebold et Zucc.
(Armeniaca mume (Siebold et Zucc.) de Vriese)(バラ科Rosaceae)
白瀧 義明(SHIRATAKI Yoshiaki)
2020年,新しい年がスタートしました。ウメは,中国原産の落葉小高木で観賞用に,また果実を食用とするため日本各地で栽培され,早春,葉に先立って芳香のある白色,淡紅色,紅色の5弁花をつけます。一重,八重咲きなど,多くの園芸品種があり,小枝は細長く,当年枝は緑色,葉は互生し楕円形または卵形で細かい鋸歯があります。「ウメ」の語源には諸説ありますが,中国語の「梅」(マイあるいはメイ)が/mume/ となり /ume/ へと転訛したという説が有力です。果実は球形の核果で表面に浅い溝と細毛があり,梅雨の頃,黄色に熟した果実をシソの葉と混ぜて塩漬けとし,梅干しをつくり食用とします。その他,梅酒,ジュース,ジャム,ゼリー,菓子などの加工食品としての用途が広く,未熟果実を燻蒸して干したものは,ウバイ(烏梅,Mume Fructus)といい,収斂,止瀉,解熱,鎮嘔,去痰,駆虫作用があるとして健胃整腸薬に用いられ,漢方では,烏梅丸,玉泉丸,固腸丸,一服散などに配剤されます。